連載小説:I’m BLUE -蒼きクレド-

[連載小説]I’m BLUE -蒼きクレド- 第16話「丈一、動く」

木崎伸也 協力:F
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舞台は2038年。11月開催のインド・ワールドカップに向けて、日本代表は監督と選手たちの間に溝が生じていた。
日本代表の最大の弱点とは何か?
新世代と旧世代が力を合わせ、衝突の中から真の「ジパングウェイ」を見いだす。
木崎伸也によるサッカー日本代表のフィクション小説。イラストは人気サッカー漫画『GIANT KILLING』のツジトモが描き下ろし。
 アメリカ合衆国・サンノゼ――。
 上原丈一はソファから起き上がると、スマートフォンのアラームを止めた。
 午前3時。いつもならほぼ間違いなく寝ている時間である。
 だが昨日、突然フランク・ノイマンから「日本対チリを見て、何か発見があったら教えてほしい」というメッセージが届いたのだ。時差があるため深夜のキックオフとなるが、ワールドカップ(W杯)をともに戦った恩師からのリクエストならば聞かないわけにはいかない。

 寝室にいる生後10カ月の娘と妻を起こさないように、丈一はあらかじめリビングのソファで寝ていた。忍び足でリビングを横断して電気をつける。窓の外には、新月のわずかな光に照らされたサンノゼの山並みが広がっていた。

【(C)ツジトモ】

 入れ立てのエスプレッソ、ナッツ、そしてノートパソコンをダイニングテーブルの上に並べた。観戦の準備は万端だ。
「ノイマンさんの謎かけ。つきあってやっか」

 4年前、丈一はW杯で日本初のベスト8を成し遂げたあと、松森虎や秋山大と同じく現役引退を発表した。半月板の手術を受けた左膝が限界だったのである。
 「第二の人生」として選んだのは指導者の道だった。今度は指導者としてW杯の頂点を狙う。日本代表のキャプテンを務めてきた丈一にとって自然な流れだった。
 ただし、選手時代のプレースタイルからしても戦術家というタイプではない。選手のときにそうだったように、監督としても型にはまりたくない。目指すは世界のどこにもいない新しいタイプの指揮官だ。
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著者プロフィール

1975年、東京都生まれ。金子達仁のスポーツライター塾を経て、2002年夏にオランダへ移住。03年から6年間、ドイツを拠点に欧州サッカーを取材した。現在は東京都在住。著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『革命前夜』(風間八宏監督との共著、カンゼン)、『直撃 本田圭佑』(文藝春秋)など。17年4月に日本と海外をつなぐ新メディア「REALQ」(www.real-q.net)をスタートさせた。18年5月、「木崎f伸也」名義でサッカーW杯小説『アイム・ブルー』を連載。

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