連載:「知られざる審判の世界」野球とサッカーを支える“フィールドの番人”

元プロ審判の家本政明と坂井遼太郎が語る 「テクノロジー導入の是非とお金の話」【特別対談】

吉田治良
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ともにルールブックを手にして写真に納まる家本氏(左)と坂井氏(右)。引退からまだ間もない2人が、プロ審判の知られざる実態を明かしてくれた 【スポーツナビ】

 サッカーの元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏と、元プロ野球審判員の坂井遼太郎氏による「異競技審判対談」。第2回目の今回は、VARやリプレイ検証といったテクノロジーの導入がジャッジに与えた影響と、将来的な改善点について語り合ってもらった。さらにはサッカーと野球の審判員、それぞれのマネー事情まで、かなり踏み込んだトークも展開された。

知りたいのは「その時、何を見たのか」

──家本さんに伺いますが、VARの導入でレフェリーの仕事に変化はありましたか?

家本政明(以下、家本) テクノロジーの導入をプラスかマイナスかで言えば、基本的にはプラスの側面が大きいと思っています。ただ、ゴールかどうか、PKかどうかなど明白な4つのシーンにしか介入できないなど、現状その役割は制限されていますよね。最終決定権は主審にあるというのを大前提にしていて、人間だから間違いもする、だから主審が下した判定には文句を言うなよと。
 しかし映像で見ても、人によってその見え方、捉え方は違うわけじゃないですか。Aさんから見ると退場でも、Bさんは違うよっていうシーンが必ず出てくる。そうなった時に、誰が主審かによってゲームが全然変わってきちゃうんです。テクノロジーが入った今もなお、トラブルが絶えない理由はそこにあります。

──たしかに、ジャッジに関するトラブルがなくなったわけではありません。

家本 出たか出ていないか、入ったか入っていないかという0か1かで話が成立するシンプルな局面と、これは反則なのか、退場になるのかといった1から10までグラデーションがかかっているような局面では、当然判断の難易度も変わってくる。そのあたりを整理できていないままVARを運用しているから、逆にレフェリーが困るケースが出てくるんです。

──改善すべき点は多いと?
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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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