連載:2022年ドラフト先取り展望

近江・山田陽翔、ラストサマーにかける「本番は夏。目標は日本一です」

沢井史
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春季大会では県準決勝で初登板し、センバツの疲労の影響を感じさせない投球を披露。近畿大会の2試合でも先発を務めた 【沢井史】

 今春の選抜大会で、近江高校の準優勝の原動力となったのが山田陽翔だ。開幕直前に急きょ決まった代替出場、しかも自身は故障明けという状況だったにも関わらず、全5試合に先発したエースはチームを力強くけん引し、同校にとっては2001年の夏以来、2度目となる甲子園決勝に導いた。打っては4番に座る投打の大黒柱は、春季大会でも近畿ベスト4に大きく貢献。「目標は日本一」と語るセンバツのヒーローに、最後の夏にかける思いなどを聞いた。

投げる喜びを心底から感じている満面の笑み

 今でもふと思い出す山田の表情がある。

 急きょ出場が決まったセンバツ初戦の3月20日からさかのぼること8日。3月12日に近江高校は今季初の対外試合で智弁学園との練習試合に臨んでいた。皇子山球場(滋賀)の電光掲示板がリニューアルしたため、そのこけら落としとして智弁学園が招待された試合だった。

 スタンドが無料解放された球場には多くの高校野球ファンが訪れ、公式戦さながらの雰囲気の試合で近江の先発のマウンドに立ったのはエースの山田陽翔だった。昨夏の甲子園・準決勝の智弁和歌山戦以来、実に196日ぶりのマウンドだった。右ヒジを負傷し、昨秋の県大会、近畿大会では登板することがなく、念願のマウンドに立った山田は、4回まで、昨夏の甲子園準優勝校を相手に1人も走者を許さない完璧なピッチングを披露した。

 5回の先頭打者、三塁ベースに当たるアンラッキーなヒットで初めて出塁を許し、その後、内野の失策で1点を失ったが、6回を60球、1安打無四球で投げ切った。

 試合後、囲み取材に現れた山田は、心の底からこの日のマウンドを喜んでいるような満面の笑みだった。半年以上を経て久々のマウンドだったとはいえ、ここまで“投げる喜び”を表情に出すピッチャーはなかなかいない。

「本当に投げられたことがうれしかったんです。あの時はまだセンバツに出られることは決まっていなかったので、自分が投げられる場所で力をしっかりアピールしなくてはと思いました。(三塁ベースに当たった)ヒットは少し悔しかったですけれど(苦笑)、その時の持っている力は出せたのかなと」

 昨秋は県大会準決勝までは試合にすら出られず、三塁のランナーコーチャーとして仲間をバックアップした。準決勝では代打で初出場し、3位決定戦では4番・右翼でスタメン出場。だが、2試合を戦った近畿大会でもマウンドに立つことはなく、右翼のポジションで右肩をグルグル回すシーンを何度も見かけた。
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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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