J1月間MVP 鹿島・上田綺世のゴール哲学「得点の伏線は自分で張ることができる」
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選択肢のレパートリーはたくさんあった方がいい
率直にうれしいですね。こうした賞はもらったことがないですから。
――2・3月のリーグ戦で最も印象に残っているゲームはどれですか?
開幕戦ですね(G大阪戦/○3-1)。チームとしても、開幕戦はここ最近勝てないことが多かったので。新しい監督、スタッフになって最初の試合でもありましたから、すごく印象に残っています。
――その開幕戦では裏に抜け出してやや遠目から逆サイドに叩き込んだ1点目のシュートが話題になりましたが、個人的には2点目の方が「このタイミングで打つのか」と驚きました。上田選手の過去のゴールにも、あのテンポでのシュートはなかったと思いますが、最近トライしている形なのでしょうか?
あの場面は、タロウ(荒木遼太郎)からパスをもらったんですけど、スペースがない中で、よりハイテンポでシュートを打つイメージで動き出しました。だから、イメージ通りのパスとトラップ、シュートがうまく合わさったゴールでしたね。最近ということで言えば、僕がプルアウェイしてタロウから足元にパスをもらう一連の流れは、2年くらい前から合わせているもの。それがたまたま、あの形でゴールになっただけという感覚です。
あのシーンでシュートに持ち込むまでにはいろんな選択肢があって、あれを選ばず縦にグッと運ぶイメージもありました。自分の選択肢としてレパートリーはたくさんあった方がいいと思うし、あのゴールは、またひとつの引き出しを見せるきっかけになったんじゃないかなって思います。
ワンタッチなのか、ハイテンポなのか……
僕は後ろの選手を信頼し切っていて、僕ら前の選手が点を取れなければ0-0で終わると思っているので、自分たちが決めるかどうかで勝負が決まるというメンタリティでプレーしています。前の選手がまとまって点を取りに行くことを意識していて、例えば、(鈴木)優磨くんがボールを持ったときの動き出しとか、一瞬一瞬ですけど、僕たちがゴールを取りに行くことと、チームを勝たせるということはイコールだと常に意識していますね。
――選択肢のレパートリーはたくさんあった方がいい、ということについて。2年半前にインタビューをしたときは、シュートチャンスが訪れたタイミングで選択肢が5枚くらいバババッと浮かび、そこから瞬時に切り捨てて1枚を選ぶ、と話していました。あれから引き出しの中身も増え、経験も積んだことで、選択肢の数自体が増えたのか、5枚の中身が変わったのか、選ぶスピードが早くなったのか、選んだプレーの精度が上がったのか、どういう感覚ですか?
FWなので点が取れる時期と取れない時期、取れる試合と取れない試合は必ずあるんですけど、取れるとき、うまくいくときは、少ない枚数からより早く選んでいるんですよね。だから、アビスパ戦のゴールシーンも(和泉)竜司くんからパスを受けて前を向いたときに、「ワンツー」なのか、「切り返す」のか、「シュート」なのかという選択肢があって、相手の間合いが離れた瞬間にシュートを選べた。そのテンポの速さがゴールにつながったと思います。
ガンバ戦の2点目も、タロウがパスを受けた瞬間には僕はすでにプルアウェイしていて、パスが入ってくるタイミングで「ワンタッチで打つ」のか、「トラップを大きくする」のか、「足元」か、「ハイテンポ」かで、ほぼ迷うことなく反射的に選べた。それが、簡単に言えばうまくいっている状態。今、その状態を作れているのが大きいです。
選択肢には、成功体験や自信も関わってくるし、その幅は確実に増えてきています。そのレパートリーの多さがFWの価値に直結すると僕は思っていて。僕がアビスパ戦で決めたゴールシーンも、シュートの選択肢自体がないFWもいるでしょうし、別のFWにはそれ以外のシュートへの持って行き方があると思います。それがゴールに結びつくかどうか。ゴールに結びつく確率の高い選択肢を持っている方がFWとしての価値が高いんじゃないかと僕は思っています。