進化を止めない二人のメダリスト 水谷隼と石川佳純が描く、卓球界の未来

照井雄太

多くの中国勢と戦ってきた水谷。中国を倒すために、日本が必要なことは? 【Getty Images】

 東京五輪で金メダルを獲得し、現役引退をした水谷隼。一方、東京五輪団体銀メダリストで、1月の全日本選手権で6回目の優勝を目指す石川佳純。前編に続き、日本卓球界について語り合ってもらった。

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中国には負けて反省して挑戦しての繰り返し

――今まで何度も中国と対戦してきて、中国に勝って世界No.1になるには、何が必要でしょうか?

石川 これ、水谷さんしか答えられないじゃないですか!

水谷 20年くらい日本代表として戦ってきて、中国選手に勝ったこともありましたが、負けることが圧倒的に多い。負けて反省して、また挑戦というのを繰り返して、反省と挑戦を諦めずに続けてきたからこそ、今回の東京五輪での金メダルがあると思います。

 僕や石川は今の若い選手、張本智和選手や伊藤美誠選手と比べられて、彼らは中国に勝てて、なぜ僕らは勝てないのかと言われます。どうしても負けてきた歴史、10年以上中国にずっとやられっぱなしになっていて、「勝てないんじゃないか」「いい試合してもまた負けるんじゃないか」と、トラウマ的な部分はすごくあると思います。今でも馬龍(東京五輪金メダリスト)とはやりたくない、というのはあります。

石川 対戦をたくさんやってきて、圧倒的に負けた回数が多いんですが、トライ&エラーを繰り返して、少しずつ少しずつやっていくことで、手応えがある部分を次につなげて、何回でもぶつかっていくという気持ちでやっています。

 そこで少しでも風穴が空いた時に「勝ちたい!すごく勝ちたい!」という強い気持ちでやっています、それを最初から「あぁ、無理だ」と思わないことが、自分ではすごく大事だと思っています。そういう風に何回も何回でも挑戦していくという気持ちでやるようにしています。

水谷 (うんうんと頷きながら、拍手)

――中国と最も差を感じる部分は何でしょうか?

水谷 技術的な部分で言えば、攻撃が注目されるのですが、ミスをしない守備力の高さがすごいなと思いますし、あとは戦術です。例えば、すごくいい試合をして勝ったり負けたりした時に、次の対戦では作戦をガラッと変えてきて、自分の弱点を突いてきて、完膚なきまでにやられることは多くあります。

 試合の中でも、1・2ゲーム目は結構取れたりしますが、3・4ゲーム目くらいから、急に作戦を変更してきたりとか、サーブを変えてきたりとか。パターンがすごく多いので、なんでもできる対応力や技術の幅とか、全てが上回っています。『心・技・体・知』、全てがトップにあると思います。

石川 私もそう思います。すごく高い技術力を持っていますが、それに頼らない緻密な戦術があると思います。一見、『横綱卓球』に見えるかもしれないですが、嫌なところ嫌なところをすごく突いてきます。絶対的な技術の上に、さらに緻密な戦術や幅の広い戦術があって、いろいろな作戦を考えて練習をしているのをすごく感じます。水谷さんが言ったように、『心・技・体・知』、それが全て揃った人が中国代表で出てくると思います。

卓球をする子どもが増えるような活動をしたい(石川)

卓球人口を増やしたいと話す石川(写真右)。石川の他、平野美宇(写真左)や伊藤美誠の近年の活躍で卓球を始めた人も少なくないはずだ 【Getty Images】

――水谷さんは石川さんとセカンドキャリアについてもお話ししたいと言われていましたので、水谷さんから具体的に質問をしてもらってもいいですか?

水谷 石川も30歳近くになって来て…。

石川 いや、まだ28ですよ!(笑)。

水谷 ごめんね(笑)。もうすぐ29歳だもんね(2月23日生まれ)。パリ五輪まではやると思うし、やって欲しい。それでパリが終わった後にどうするのかな、指導者なのか、イメージとしてはキャスターとかすごく似合うなと思っています。

石川(大きく目を見開いて)いやいや。まだはっきり、何がやりたいかは自分自身でもわかってないです。ただ、子どもが好きなので子どもに「卓球をやりたい」と思ってもらえるような活動をしたいと思っています。

 小さい頃は野球したり、サッカーしたりいろいろな選択肢があるじゃないですか。その中で卓球を選んでもらえるようなことが出来たらと思います。卓球人口が増えたら、絶対に日本のレベルも上がる。小さい子どもに「卓球をやりたい!」と思ってもらえたら、すごくうれしい。卓球を長い間やらせてもらって、私を知っている方が多くなったので、その一歩目になるようなことが出来たらと、昔から思っています。

水谷 それはテレビで言うのが、一番近道だと思うけど。卓球の普及活動がしたいのかな?

石川 はい、それはやりたい中の1つにはありますね。

水谷 ルクセンブルクの選手(ニー・シャーリエン選手:ルクセンブルク代表として、58歳で東京五輪に出場)みたいに、Tリーグで40歳とか50歳までやったりとか。

石川 いや!それはちょっと待って(笑)。んー、分からないですが、ずっと試合に出たい気持ちはあります。卓球がすごく好きで、プレーすることは好きなので、やりたいという気持ちもあります。

 でも、負けたら悔しいという気持ちもあります。これまで100とか120%でやってきているので、そんなプレーが出来なくなったり、練習が思うように出来なくて負けたら悔しいし、申し訳ないという気持ちもあります。そのあたりはどうなんだろうと、自分の中でも答えが出ていないです。

――水谷さんは引退されていますが、今の石川さんの話を聞いていかがですか?

水谷 石川もそうですけど、やはり五輪メダリストという目で見られますし、本当に小さな試合に出ただけでも世間は注目するし、メディアにも取り上げられる。自分は趣味で、遊びで出ているつもりでも、負けた時にいろいろと言われる。

 言われるのがわかっているから、言われるのであれば出ない方がいいと思って、僕はこの先も出ないと思います。でも、卓球をしたい気持ちはありますし、試合をして真剣勝負をしたい気持ちもどこかにはあるんです。

石川 (うんうんと深く頷く。)

水谷 純粋に応援してくれて、喜んでくれたり、悲しんでくれたりするのはいいんですが、それがメディアに取り上げられて、自分が興味ない所から、いろいろ言われるのは許せなくて…。

石川 いや、もういいじゃないですか、気にしないで(笑)。水谷さんが試合に出るのを楽しみにしている人はいっぱいいるので、引退を撤回して、気にせず出た方がいと思います。待っている人いっぱいいますから。本当に見たいですよ。

水谷 でも、勝てないのは怖い。勝てないと分かっていて試合に出るのは怖い。

石川 ただ、勝ち負けを越えて、出てくれるだけでいいと思っている人はたくさんいると思うので、出てくれたら私も本当にうれしいです。

水谷 多分、10年後ぐらいになったらそうなる。年齢を重ねて、40歳を過ぎたら、負けて普通になればいんだけど、今はタイミングがね。東京五輪が終わったばっかりだから(笑)。

石川 結構、気にしい!(笑)。

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著者プロフィール

照井雄太

1986年神奈川県生まれ。滝川第二高校、筑波大学で卓球に打ち込む。卒業後は、一般企業就職後、卓球の仕事がしたいと思い、2018年10月開幕直前から卓球の「Tリーグ」に転職。Tリーグでは試合運営の他、メルマガのコラム担当し、また不定期でスポーツメディアの卓球コラムを執筆している。

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