来季35歳、元大型左腕がトライアウトを受けた理由 独立Lで野手転向し手応え、若手への還元も
17年のトライアウトには投手として参加。トミー・ジョン手術からまだ日が短かったこともあり満足のいく結果は残せなかった 【写真は共同】
4年ぶり2度目のトライアウト受験
「何とか1本打ちたいなと思っていたので良かったです。この1年やってきたことが出せましたし、トライアウトに挑戦するのは今回が最後(2019年の規定変更によって参加回数が最大2回までとなった)という中で、自分の力は出せたかなと思います」
4年ぶり2度目のトライアウトだった。1度目は楽天を戦力外となった2017年。この時は「投手」としてマウンドに立った。その年の3月にトミー・ジョン手術を受けてから8カ月後の挑戦。一般的に1年から1年半の回復期間が必要な中での強行出場だった。結果は、打者4人に対して1安打1四球2奪三振で、ストレートの最速は134キロ。NPB球団からのオファーは来なかった。
「4年前は、トライアウトを受けなかったら、野球をする場所がなくなってしまうという危機感があった。手術のことを考えれば、1年間はどこかで治療とリハビリに専念すれば良かったのかもしれませんけど、あの時はその“どこか”というのもトライアウトを受けなければ見つからないんじゃないかと思った。それだったら、万全ではなくても『8カ月で、ここまで投げられますよ』という姿を見せた方がいいと思った」
打者「本格転向」2年半で打率.361
「NPBでも1年だけ野手としてやらしてもらいましたけど、野手として1年間しっかりと練習できたというのは実質、去年が初めてだった。そして今年はある程度、自分の思っているような形のバッティングができたと思いますし、結果も残せた」
2018年に24試合で打率.280、3本塁打、13打点の成績を残すと、野手として腰を据えて挑んだ翌2020年は52試合に出場して打率.282、8本塁打、25打点。そして迎えた2021年シーズンは、60試合に出場して、打率.361、7本塁打、35打点の好成績を残し、首位打者のタイトルも獲得した。
「今年はチームが地区優勝を果たすことができて、充実したシーズンになりました。個人としては、打順が7番ということもあって、イニングの頭でまずは塁に出るという役割、次に繋ぐという部分を意識して打席に入っていた。投手の経験も活かして、相手が今、何をされたら嫌なのか考えて、野手のポジショニングも見る余裕も出たのが良かった」
報徳学園高時代は1年秋から「4番・エース」として活躍し、2年時に甲子園に春夏連続出場。当時から投手としてだけでなく、高校通算36本塁打を放った打者としての評価も高く、もし時代が違えば「二刀流」として球界を騒がしていたかもしれない。その打撃センスを34歳にして開花させ、トライアウトの舞台でもレフト前へ会心のクリーンヒットを放って見せた。