連載:高校サッカー選手権 記念すべき100回大会の「注目校」&「注目選手」は?

神村学園のコンビ以外にも逸材が目白押し 選手権でチェックすべき「4人の2年生」

松尾祐希
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 高卒でのプロ入りを目指すのなら、下級生のうちからスカウトの関心をひくようなパフォーマンスを全国の舞台で示しておく必要がある。今回の選手権では、福田師王と大迫塁という神村学園のアタッカーコンビが注目を集めているが、彼らの他にも優秀な2年生タレントが少なくない。ここでは、大会の主役になっても不思議ではない、高いポテンシャルを秘めた4人を紹介する。

相手DFの頭一つ上を行くヘディング

ブレイクの予感を漂わせる大津の小林。高さを生かした空中戦の強さが一番の武器だが、大型ストライカーにありがちな“動けないタイプ”ではない 【松尾祐希】

 苦楽をともにしてきた仲間たちと一緒に戦えるのも、残りあとわずか。3年生にとって、最後の高校サッカー選手権はやはり特別だろう。しかし、たとえ1月10日に行われる決勝のピッチに立てたとしても、最後に笑えるのは1校だけだ。多くの敗れし者たちは思いを後輩に託して卒業し、新チームが再び選手権の舞台を目指してスタートを切る。

 ただもちろん、下級生たちも「まだ来年がある」などと思いながら戦ってはいないし、先輩やチームのために全力を尽くすことだけを考えている。そして、そうした気持ちが大舞台で普段以上のパフォーマンスを引き出すのだ。一戦ごとに成長し、2年時の選手権がきっかけでプロ入りが決まるケースも少なくない。

 特に今年度の2年生はタレント揃い。その代表格が神村学園のU-18日本代表FW福田師王とU-17日本代表MF大迫塁だ。すでに彼らはJ1クラブの練習に何度も参加しており、来年の早い段階でプロ入りが決まったとして不思議ではない。

 では、この2人以外で注目すべき2年生プレーヤーを挙げるなら?

 今大会で最もブレイクの予感を漂わせているのが、大津のFW小林俊瑛だ。神奈川県の鵠沼中から熊本にやってきたストライカーの武器は、なんと言っても身長191センチの高さを生かした空中戦の強さ。競り合いで無類の強さを発揮し、相手DFの頭一つ上を行くジャンプから強烈なヘディングシュートをたたき込む。

 また、速さも持ち合わせる小林は、大型ストライカーにありがちな“動けないタイプ”ではない。大きなスライドで最終ラインの裏に抜ける動きは迫力満点で、ステップをきちんと踏めるため、横の動きにも強い。今予選は全4試合で複数得点を記録し、計9ゴールと大暴れ。ハットトリックを決めた準決勝では、GKの上から強烈なヘッドを決めるなど、県レベルでは他を寄せ付けない存在感を放った。

 ただ、今でこそ大津に欠かせないFWに成長を遂げた小林だが、1年生の頃はひと言で表現すれば「荒削りな選手」だった。当時はまだ身体が出来上がっておらず、ステップが上手く踏めない影響で思い通りに動けなかったのだ。それでも平岡和徳総監督はトップチームで起用。根気強く指導を続け、朝練習では課題のステップや体幹トレーニングをやり込ませた。

 そうした地道な積み重ねの甲斐あって、昨年11月には世代別代表に初招集。U-16日本代表候補を経験すると、その成長曲線は一気に右肩上がりとなる。2年生になった今季は春先からレギュラーとしてプレー。明らかにボディバランスが良くなり、自分の身体を思い通りに操れるようになってきた。

 春に負傷したこともプラスに働いた。「あの時期に身体を作れたのは大きかった」とは平岡総監督の言葉だが、まさにケガの功名と言うべきか、リハビリ期間中に徹底して筋力アップを図り、上のステージで戦える身体を手に入れたのだ。夏のインターハイでは全国レベルのDFに対しても競り負けず、チームのベスト8進出に貢献。さらに選手権予選でもその勢いは止まらず、プレーヤーとしてワンランク上のレベルに到達した印象がある。

 小林はこう話す。

「今年の選手権が一番大事。高卒でプロに行くのであれば、2年生から注目してもらわないといけない」

 高さ、スピード、決定力。三拍子が揃(そろ)った点取り屋は高卒でのプロ入りを目指し、2年生で迎える選手権でブレイクを誓う。
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著者プロフィール

1987年、福岡県生まれ。幼稚園から中学までサッカー部に所属。その後、高校サッカーの名門東福岡高校へ進学するも、高校時代は書道部に在籍する。大学時代はADとしてラジオ局のアルバイトに勤しむ。卒業後はサッカー専門誌『エルゴラッソ』のジェフ千葉担当や『サッカーダイジェスト』の編集部に籍を置き、2019年6月からフリーランスに。現在は育成年代や世代別代表を中心に取材を続けている。

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