夏のインターハイで思い知らされたのは、圧倒的な力の差だった。青森山田に0-4の完敗。そのショックはしばらく尾を引いたという。しかし、彼らはその敗戦から多くを学び、再び力強く立ち上がる。選手権の決勝で青森山田を倒して真の日本一に──。2年ぶりに戻ってきた大舞台でリベンジを誓う静岡学園の攻撃のキーマン、川谷凪と古川陽介が、最後の冬に懸ける想いを語ってくれた。

――川谷選手は大阪、古川選手は滋賀の出身ですね。静岡学園に入学する前から面識はあったんですか？

川谷凪（以下、川谷）　面識はないですけど、存在は知っていました。

古川陽介（以下、古川）　僕も知っていて、出場はしていませんが、対戦した経験もあります。凪は足が速くて、ボール扱いも上手く、相手にしたら怖いなっていう印象がありましたね。

──入学後は寮でも同部屋だったんですよね？　お互いにどんな印象を受けましたか？

川谷　古川に初めて会ったのは受験の時なんですけど、第一印象はめちゃくちゃ静か。すごく人見知りで、まったく話さなかったんですよ。だから、掴みにくい奴でしたね（笑）。

古川　逆に凪は最初から飛ばしていたので、僕はノリについていくのに必死でしたね（笑）。

――同じ関西でも、滋賀と大阪ではノリが違った？

古川　たぶん、その差です（笑）。徐々に慣れていったんですけどね。

川谷　寮に入る頃にはもう打ち解けていたよね。ヤバかったのは受験の時くらいかな。

古川　あの時は、みんなめちゃくちゃ怖かったんだよ（笑）。中学時代から名前を知られた選手ばかりで、自分は下の立場というか、しょぼい奴って見られていると思ってた。京都U-15にいたけど、まったく試合に出られてなかったし。それにJクラブの育成組織は県のトレセンではなく関西トレセンからスタートするので、全然他のチームの選手とも絡みがなかったんだ。

――2年生になってから、本格的に一緒にプレーするようになりましたね。

川谷　陽介は2年生の最初の振り分けでAチームに入ったんですけど、僕は入学直後に左膝の前十字靭帯を断裂したこともあって、Cチームからのスタートでした。新型コロナウイルスによる活動休止期間とも重なって大変だったんですが、そこからカテゴリーを上げていって、ようやく一緒にプレーできるようになりました。

──実際にプレーしてみて、どうでしたか？

川谷　とにかくドリブルが上手かった。僕は陽介みたいな細かいタッチが得意ではないので、純粋に「すごいな」って思いました。

古川　逆に、凪の推進力やゴール前でのパンチ力は、僕にはないもの。相手にしたら怖い存在だと、改めて感じましたね。

――今年に入ってからは、ともにAチームのレギュラーとしてプレーしていますが、もうお互いの特徴は完全に理解しているのでは？

川谷　クロスや切り返すタイミングは見ていれば分かるので、それに合わせてゴール前に走り込んだりしていますね。すごくやりやすいし、実際に今年は陽介のアシストから僕が決める形が増えたと思います。

古川　僕もクロスを入れるタイミングは常に意識していますね。普通の感覚で入れると、凪のプレーが速すぎるので間に合わないんですよ（笑）。