無良崇人が展望する羽生不在のNHK杯 「攻めないと勝てない」群雄割拠の男子

野口美恵
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NHK杯の男子シングルには、日本勢からは宇野昌磨(写真)、三浦佳生、山本草太が出場する 【Getty Images】

 北京五輪シーズンが本格的にスタートし、フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦のNHK杯が12日から代々木競技場第一体育館で開催される。昨季は新型コロナウイルスの影響もあって海外のトップ選手が不参加だっただけに、久々に世界のトップスケーターたちが東京に集結する。

 日本男子は、羽生結弦(ANA)が右足首じん帯損傷で欠場となったが、宇野昌磨(トヨタ自動車)、三浦佳生(目黒日大高)、山本草太(中京大)が出場。伸び盛りの若手にとっては、世界の強豪と対峙するまたとないチャンスとなる。さらに日本勢は躍進するアイスダンス、ペアにも注目だ。2014年四大陸選手権王者の無良崇人さんに、NHK杯の見どころを聞いた。(取材日:11月4日)

「どの選手も仕上がりが早く、ジャンプ構成も攻めている」

2014年の四大陸選手権王者である無良崇人さんに、NHK杯の見どころを語ってもらった 【写真:本人提供】

――いよいよ北京五輪まで3カ月を切り、GPシリーズも中盤戦に入りました。

 今季のGPシリーズは、五輪に向けてプログラムやジャンプ構成などのプランを練るための重要な試合となります。五輪などの国際大会でジャッジする方々が審判席に入るので、ステップのレベルやGOE、演技構成点(PCS)の評価など、国際レベルでの自分の立ち位置が分かります。点数の出方を重要視する大会になりますね。

――ここまでのGPシリーズの3戦を見て感じることはありますか?

 どの選手にも共通しているのは、今季はシーズンスタートから良い演技をできるよう、早く仕上がるように準備をしている点。またジャンプ構成も「今季は攻めているな」という選手が多い印象ですね。ヴィンセント・ジョウ選手(米国)はスケートアメリカで、4回転ジャンプ4種類5本を決めて優勝するなど安定感がすごかったですね。ただシーズンは長いですし、NHK杯にも出場するので、あの好調を維持できるかどうかは見どころの1つです。

――ネイサン・チェン選手(米国)は、スケートアメリカでまさかの3位。第2戦のスケートカナダでは調子を取り戻して優勝しました。

 スケートアメリカでは、フリーの6分間練習で4回転ループにかなり時間を割いていましたが、本番は決めてきたのでその才能に驚かされました。ただミスが多く、4回転6本というリスクの高い構成や調子が万全ではない点が気になりました。それでも2戦目のスケートカナダでは、4回転を3本にすることで安定感がありましたね。スケートアメリカで試合勘を思い出し、カナダですぐに修正してきたと考えられます。

――GPシリーズ第4戦として、NHK杯が開催されます。

 世界的に見ても日本のフィギュアファンの方々は目が肥えているので、その中でどんな評価を得るかは、選手のモチベーションに大きく影響をおよぼすはずです。自分の現役時代は「NHK杯で下手な演技はできない」という思いが強く、良い意味でグランプリ6戦の中でもっともプレッシャーのかかる試合でした。
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著者プロフィール

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

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