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「成長したい」宇野昌磨のまっすぐな意志
今が凝縮された『ボレロ』を磨き抜く

2日に披露した「攻めのプログラム」

宇野は今季初戦となるジャパンオープンで、4回転を5本入れた攻めのプログラムを披露した
宇野は今季初戦となるジャパンオープンで、4回転を5本入れた攻めのプログラムを披露した【写真:坂本清】

 2日のジャパンオープンで男子の最終滑走者として登場した宇野昌磨(トヨタ自動車)は、『ボレロ』の冒頭で果敢に4回転ループに挑み、転倒した。かつて試合で跳んでいた難しいジャンプをもう一度取り戻そうとする宇野の挑戦には、成長したいというまっすぐな意志が感じられる。


 北京五輪シーズンを前にした8月のアイスショーで、宇野は4回転を4種類5本入れた高難度のフリーに挑むことを宣言している。そしてその言葉通り、今季初戦の舞台で、宇野は攻めのプログラムを披露した。


 2018年の平昌五輪シーズン以降「諦めた期間もあった」という4回転ループについて、何をきっかけにまた跳ぼうと思ったのか問われた宇野は、鍵山優真(オリエンタルバイオ、星槎)から受けた刺激を口にしている。


「優真くんと一緒に練習するようになって、彼が(4回転)ループと(4回転)ルッツを降りていたのを見て、僕も(4回転がトウループ・サルコウ・フリップの)3種類だと、時代が流れるにつれて、置いていかれてしまうんじゃないかなと思いました。また、彼に僕が尊敬されているからこそ、期待に応えられる選手でいたいという思いも込めて『真剣にループを跳びたいな』という気持ちを込めて練習し始めたら、1週間ぐらいで(跳べるようになった)。本当に、気持ちというのは大きいなって思いましたね」


 ジャパンオープンでは、4回転ループの次に予定していた4回転サルコウも2回転になってしまった。立て続けに高難度のジャンプに失敗した宇野は、次の4回転トウループでやや前傾しながらも着氷し、予定していたコンビネーションジャンプにすることはできなかったものの、なんとか踏みとどまる。


 この4回転トウループには、夏の間の鍛錬が詰まっていた。「僕は今までずっと、試合で4回転トウループを失敗することが多かった」と語る宇野は、シーズンオフのアイスショーでも重点的に4回転トウループを練習していたという。


「(4回転トウループは)一番失敗するからこそ、練習してきたものが試合でもちゃんと生かせたのかな、というのはありましたね」


 そして次のジャンプとなるトリプルアクセルは、2.4の加点がつく出来栄えで成功。後半に入り、4回転フリップ、4回転トウループ―2回転トウループ、トリプルアクセル―シングルオイラー―3回転フリップと、3つのジャンプを全て加点のつく出来栄えで決めていく。前半の失敗をひきずらず後半に立て直せるのは、宇野の強さだろう。

宇野が分析する、高難度な構成への対策は?

高難度のプログラムに挑むにあたり、「自信のあるジャンプを増やして、どこで失敗を止めるのか」をポイントに挙げた
高難度のプログラムに挑むにあたり、「自信のあるジャンプを増やして、どこで失敗を止めるのか」をポイントに挙げた【写真:坂本清】

 宇野は試合後、「どのジャンプも1つ1つやった時の成功率は上がっていても、どうしてもプログラムを通した時に、(4回転)ループと(4回転)サルコウ、この2つの高難度ジャンプがなかなか安定しない」と話し、現状の課題を次のように分析した。


「これを次の試合に向けてどれだけ重点的に練習できるか、どのようにして改善できるような練習をしていくかというのが、僕の今後の課題になるのかなと思う。また今回は後半に(なるに)つれていいジャンプを跳び始めていましたが、ちゃんとこの後の試合でも、こういう高難度構成の前半で失敗したとしても、崩れない基盤となるプログラム、自分を作っていければいいなと思っています」。さらに、具体的な対策についてこう続けた。


「ドミノのように、失敗すると連鎖が続いてしまう構成だと思うので、自信のあるジャンプを増やして、どこでその失敗を止めるのか。もちろん、成功した時はリズムに乗ってやることはできるかもしれませんが、失敗した時が重要になってくるのかなと。やはり、どの試合もノーミスというのはなかなか難しいことであるからこそ、自分が安心して跳べるジャンプをこの高難度の構成でも見つけられること。そして、(4回転)トウループ・(4回転)フリップ・(トリプル)アクセルというジャンプを、自分にとって自信があるものにしていくのが一番の今後の課題なのかな」


 そして、その鍵となるのが体力だ。


「この構成をやる以上、今まで以上の体力が必要になるということで、毎日その日の限界、これ以上やっても跳べないというところまで練習を積み重ねることによって、どんどん調子は落ちるものの、少なからず体力はちゃんとついてきて。今日も(トリプル)アクセル・(4回転)フリップは間違いなく斜めになっていたんですが、ちゃんとそれを修正する体力が残っていました。後半の(4回転)トウループ、(4回転)フリップは、体力が十分にあったからこそできたものなのかなと思う。体力トレーニングというのはすごく基礎的なもので、簡単なように僕は思っていましたし、そう聞こえると思うんですけど、フィギュアスケート、そしてスポーツ全般において重要で、簡単そうに見えて一番過酷な練習なんだなって痛感しました」


 宇野が毎日積み重ねている、充実した練習がうかがえる言葉だった。

沢田聡子

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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