可視化して振り返る2021年ドラフト会議 戦力の「穴」を埋められた球団は?

ベースボール・タイムズ

巨人:下位で好素材を指名するも“球界スター候補”の指名は…

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 外れ1位で最速157キロ右腕の翁田大勢(関西国際大)を選択。さらに2位で社会人左腕の山田龍聖(JR東日本)、3位で大学生右腕の赤星優志(日本大)を指名。4位以下では高校生投手を3人指名し、支配下指名7人中6人という投手という指名となった。

 上位3人は現チームの課題を解決する指名であると言えるが、将来的に“球界のスター”になれるような世代トップの逸材の指名は今年も叶わず。年齢分布的な「穴」であった外野手には5位で岡田悠希(法政大)を指名したが、全体的には物足りない印象も受ける。高校No. 1左腕との呼び声高い石田隼都(東海大相模)を4位で指名できたことは大きく、育成指名も含めて高校生たちの将来は非常に楽しみではあるが、人気、知名度の点では今年も物足りないものとなった。

楽天:独自路線を突き進んだ“サプライズ指名”の評価は!?

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 1位で甲子園未出場の高校生外野手・吉野創士(昌平高)を指名したことに始まり、2位で愛知大学リーグ2部の安田悠馬(愛知大)、3位では21世紀枠で今春のセンバツ大会に出場した前田銀治(三島南高)という高校生外野手を再び指名。4位以下も、知名度、即戦力に囚われることなく独自路線を突き進んだ。

 この指名に関して現時点で評価するのは難しいが、チーム編成上では19歳から21歳の外野手は「穴」であり、高校生の左投手も必要な箇所。サプライズ指名と言えた今年のドラフトだが、中長期的な視点では納得できるものだったと言える。これが単なる“数合わせ”にならないよう、球団がしっかりと育成し、選手もそれに応える必要がある。そして高校生右腕と内野手の指名がなかったことは残念。もう少し高校生を中心とした指名でも良かったかもしれない。

阪神:的確な“穴埋め”に成功!長期的にも納得&成功の指名!

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 第一希望の小園健太は外したが、同じ高校ビッグ3の一角を担った速球派の本格派右腕・森木大智(高知高)の指名に成功。2位、3位で即戦力左腕の鈴木勇斗(創価大)、桐敷拓馬(新潟医療福祉大)と課題だった左腕、チーム編成上の「穴」だった22歳から25歳の左投手をしっかりと埋めた。

 さらに4位で前川右京(智弁学園高)も将来の主軸として期待大。その前川も含めて外野手を2人指名し、さらに捕手も1人指名。22歳から25歳の捕手をのぞき、ドラフト前に「穴」として挙げていた5部門中4部門で選手を指名したことは、長期的なチーム作りの観点からも非常に好感が持てるもの。育成でも5人を指名し、大成功だった昨年の指名も含めて、ひと昔前の「ドラフト下手」はすっかり過去のものになったのではないか。

ロッテ:課題だった正捕手&二遊間候補を指名!

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 真っ先に高校通算43本塁打の高校No. 1捕手の松川虎生(市和歌山高)を指名して将来の正捕手候補の課題を解決すると、2位で攻守ともに即戦力の二塁手・池田来翔(国士舘大)、3位で社会人No. 1投手として1位候補にも挙げられていた廣畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ)の指名に成功。周囲を驚かせながらも、終わってみれば大成功と言える指名だったのではないか。

 さらに4位で高校年代屈指のサウスポー・秋山正雲(二松学舎大付高)を指名。高校生捕手と高校生左腕の2箇所は、チーム編成上の明らかな「穴」であり、松川と秋山の指名は将来的にも非常に大きい。年齢的には高校生内野手が欲しかったところだが、大学生の池田に期待するというところで納得。支配下指名が5人のみというやや消極的な面を除けば、合格だと言えるだろう。

ヤクルト:上位で大学生左腕&外野手指名で課題解消も、物足りなさも…

【ベースボール・タイムズ】

 1度目のクジは外したが、2度目で東京六大学の大型左腕・山下輝(法政大)の交渉権を獲得。「ポスト・石川雅規」を指名すると、2位では青木宣親の後継者と言える丸山和郁(明治大)を指名。3位以下では社会人右腕、高校生内野手、高校生右腕と指名を続けた。早い段階から1軍での出場が期待できる選手を上位に並べた形となった。

 チームに必要な戦力を埋めたと言えるが、チームの年齢分布を見ると、19歳から21歳の「穴」は残ったまま。特に高校生左腕と将来の正捕手の主軸候補となる高校生の指名がなかったのは残念。捕手が支配下が5人で育成も1人のみの指名ということを考えると、物足りなさが残った。

オリックス:即戦力をズラリと並べる“本気度”も、バランス的には…

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 1位指名での世代屈指のパワーピッチャー・椋木蓮(東北福祉大)を単独指名した後も、野口智哉(関西大)、福永奨(国学院大)、渡部遼人(慶応義塾大)と、近年の高校生重視から打って変わり、大学生の即戦力候補を次々と指名。支配下7人中、高校生は1人のみというドラフトとなった。

 この指名に来季への“本気度”が見て取れ、チームの選手層は間違いなくアップする。だが、年齢分布的に見ると、将来の正捕手候補として福永の指名は非常に納得だが、高校生左腕の指名がなかったのが残念。投手を3人指名したが、全員が右投手だったこともチームバランス的には疑問符が付くものになった。
(文・三和直樹、グラフィックデザイン・山崎理美)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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