盟友2人ともに勝ち抜いた200個メ準決勝 瀬戸の意地・萩野の涙を岩崎恭子が解説
男子200メートル個人メドレーで、今大会初の決勝進出を果たした瀬戸大也と萩野公介。決勝ではライバル対決が実現する 【写真は共同】
しかし、瀬戸大也(TEAM DAIYA)がメイン種目の男子400メートル個人メドレーで、松元克央(セントラルスポーツ)が200メートル自由形でまさかの予選敗退。佐藤翔馬(東京SC)も200メートル平泳ぎの準決勝で姿を消すなど、金メダル候補が相次いで決勝進出を逃す波乱の展開となった。
7月29日に行われた男子200メートル個人メドレーの準決勝には、今大会1度も決勝に進出していない瀬戸と、個人ではこの種目に絞った萩野公介(ブリヂストン)が登場。瀬戸は全体の3位、萩野は6位でともに決勝進出を果たした。近年、競泳界の「顔」として活躍してきた2人の盟友が、不振にあえぐ中でどう準決勝を戦い抜いたのか。1992年バルセロナ五輪の金メダリストで、現在は競泳指導者・解説者の岩崎恭子さんに決勝の展望とともに話を聞いた。
瀬戸大也は最後の種目で「吹っ切れた」
全体3位で決勝進出を決めた瀬戸大也。海外選手と笑顔で話すなど、吹っ切れた表情を見せていた 【写真は共同】
瀬戸選手は準決勝のレース後のインタビューで「前半は抑え気味に行った」と言っていましたが、実際の泳ぎを見ると抑えているようには感じられませんでした。つまり、本人は抑えているつもりでもスピードが出ていたということで、それは状態が良いことの裏返しでもあります。その証拠に、今回は平泳ぎでかなり伸びてきましたよね。前半100メートルでしっかりスタミナの「タメ」を作れていたからこその、後半の勢いだったのではないでしょうか。
結果が出なかった400メートル個人メドレーも、200メートルバタフライも、レース後半で勢いが落ちているように映りました。きっと「このままではいけない」と感じて、レースプランを変えて準決勝に臨んだのだと思います。予選から準決勝までの約半日で、ここまで修正できたことはお見事としか言いようがありません。一般的な大会だと予選・準決勝・決勝を2日間で戦うところを、東京五輪では3日間かけるので、コンディションの調整はすごく大変でしょう。泣いても笑っても30日がラストなので、思いっきり泳いでほしいですね。
瀬戸選手はここまで2つの種目で決勝に進めなかったことで、プレッシャーは相当なものだったでしょう。それでも最後にしっかりギアを上げてきたのは彼の「意地」にも見えますし、周囲のサポートのおかげもあったと思います。瀬戸選手は明るくて、話かけやすい空気を作れる人柄です。「ここまで来たら楽しんで、本来の自分で」というニュアンスの励ましを、チームメイトやコーチからかけられたのではないでしょうか。競泳は個人種目ですが、「チーム」で戦う競技でもあります。「きっと周りが手を差し伸べてくれる環境があったんだな」と思いながら、瀬戸選手のインタビューを見ていましたね。