盟友2人ともに勝ち抜いた200個メ準決勝 瀬戸の意地・萩野の涙を岩崎恭子が解説

久下真以子

萩野公介の流した涙は「彼を強くさせる」

レース後のインタビューで涙を流す萩野公介。「(瀬戸)大也と明日もまた一緒に泳げるなんて幸せ」と語った 【写真は共同】

 萩野選手は、レース後に涙を流していましたね。「東京五輪に出られなかったらどうしよう」という思いもあったでしょうし、出場が決まってからも「決勝に進めないかもしれない」という不安と戦っていたのでしょう。彼はあまりそういった感情を出す選手ではありませんが、安堵の気持ちがあふれ出たのでしょうね。彼の「人間らしさ」を感じた瞬間でもありましたし、それがまた彼を強くさせていくと思います。

 レース後のインタビューでは、決勝進出は「神様からの贈り物」と言っていましたね。でも私は、彼が努力した結果だと思っているので、自信を持って決勝に臨んでほしいです。本来ならば自由形が強い選手なので、明日も残り50メートルでさらにペースを上げられれば、メダル争いに絡めるはずです。ただ、ペース配分は本当に難しいので、1種目1種目大切に泳いでほしいなと願っています。

 30日の決勝がどうなるかは“神のみぞ知る”ですが、2人とも少し光が射したように思える準決勝でした。決勝ではきっとすがすがしい表情でレースをしてくれるのではないかと思いますし、メダル獲得を心から期待しています。

 世界ランキング1位のマイケル・アンドルー(米国)をはじめとして、決勝では海外選手が前半から速いレース展開を仕掛けてくるはずです。瀬戸・萩野両選手は後半が持ち味なので、いかにスタミナを切らさずに後半で巻き返せるか。そして、ラスト5メートルで勝負する体力を温存できるかが、カギになると思いますね。みんな最後のレースは本当に動けなくなるくらい、限界まで手を回してキックするので、彼らの「自分のすべてを出し切るレース」に注目してください。

入江陵介はベテランならではの「美しい泳ぎ」に注目

日本選手団最年長、31歳の入江陵介。30日の決勝にメダルの望みをつなげる 【写真は共同】

 29日には男子200メートル平泳ぎの決勝が行われましたが、武良竜也選手(ミキハウス)は7位でした。前半では落ち着いているように見えましたが、100メートルから150メートルにかけての周りのペースが速かったので、それについていけなかった印象ですね。特に平泳ぎはちょっとした力みで泳ぎがまったく変わるので、難しい種目だなというのを改めて感じました。自己ベストを出せばメダルに絡めたはずなので、本人も言っていた通り、決勝の経験は間違いなく競技人生の糧になると思います。

 入江陵介(イトマン東進)選手は200メートル背泳ぎで、全体8位で決勝進出を決めました。キャプテンとして、最年長として頑張る中で、世界の強い選手が新しく出てきているのも事実です。でもどんなにギリギリでも「決勝に残る」のはすごく大事なこと。

 200メートルバタフライで銀メダルを獲った本多選手も、ギリギリで決勝に残れたからこその表彰台でしたよね。入江選手はいつ見てもブレない背泳ぎが、本当に美しいですよね。他の選手と比べて体の線は細いですが、それでも世界で戦えることを証明してきました。決勝ではベテランの経験を生かしたレースに期待したいです。

岩崎恭子(いわさききょうこ)

【株式会社スポーツビズ】

1992年バルセロナ五輪200メートル平泳ぎ、競泳史上最年少14歳で金メダル獲得。名言として残るインタビューも相まって、一躍時の人となった。引退後は児童の指導法を学ぶために米国へ留学し、水泳・着衣泳のレッスンやイベント出演を通して水泳の楽しさを伝える活動をしている。

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著者プロフィール

大阪府出身。フリーアナウンサー、スポーツライター。四国放送アナウンサー、NHK高知・札幌キャスターを経て、フリーへ。2011年に番組でパラスポーツを取材したことがきっかけで、パラの道を志すように。キャッチコピーは「日本一パラを語れるアナウンサー」。現在はパラスポーツのほか、野球やサッカーなどスポーツを中心に活動中。

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