大谷翔平、ホームラン量産の秘密に迫る 「覚醒」を導いたのは何か?

丹羽政善
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今季、本塁打を量産する大谷。一体、どこが変わったのだろうか 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 12日(日本時間13日、日付は以下同)のホームランダービーに出場予定で、13日のオールスターゲームでは、史上初めて投打で選出され、二刀流を披露するエンゼルスの大谷翔平。投手として“復活”し、打者として“覚醒”した前半を象徴するようなイベントになりそうだが、打者編、投手編に分け、前半を総括する。

大谷のバレル率はリーグトップ

 大谷は塁に出ると、必ず一球ごとに相手の守備位置を目視する。単打で二塁から生還する、あるいは、右前ヒットで一塁から三塁を陥れる――。

 例えば、そんな状況を見据えてだが、もちろん、野手の肩も計算に入れる。2日の試合では、同点の9回、二盗を決めたあと本塁へ激走するシーンがあり、大谷はその日放った2本塁打より、「最後の盗塁とセカンドからの走塁の方が、価値がある」と話したが、本来、走塁がクローズアップされることはまれ。しかし、普段の習慣の積み重ねが、ここぞでモノを言う。

 大谷は打席でも同様の仕草を見せ、相手が大胆なシフトを敷いてくるので、むろんそれは嫌でも目に入るが、実際はあまり関係はないのかもしれない。前に飛ぶ打球のおよそ4分の1は、野手の頭を越えていくのだから。

 それを示すバレル率というデータがある。ざっくり、「いい角度で上がった強い打球」の比率と解釈してもらっても構わないが、以下、簡単にその定義をまとめる。

 バレルは、打球速度と打球角度によって決まり、最低でも打球初速は98マイル(約158キロ)以上。このときの打球角度が26〜30度でバレルの打球となる。打球初速が1マイル(約1.6キロ)上がるごとに角度が扇のように広がり、99マイル(約159キロ)の場合、打球角度が25〜31度でバレル。100マイル(約161キロ)の場合、24〜33度。100〜116マイル(約187キロ)までは、打球速度が1マイル上がるごとに3度ずつ打球角度が広がっていく。

 では、なぜこのバレルの理解が大切なのか。

 今シーズンの場合(7日現在)、MLB全体で見ると、バレルゾーンに入った打球の打率は.760。長打率は2.544。そして今季2982本塁打のうち2564本(約86%)がバレルの打球。つまり、この比率の高いほど、長打が期待できる打者ということになる。以下にランキングをまとめたが、顔ぶれを見れば納得だろう。そして、大谷のバレル率は、打席数に対する確率、全打球に対する確率とも、並み居るパワーヒッターを抑えて、リーグトップ。7日現在、リーグトップの32本塁打を放ち、OPS(出塁率+長打率)が1.064でリーグ2位なのも当然の結果と言える。

■バレル/打席数
1. 大谷翔平(エンゼルス) 15.2%
2. フェルナンド・タティースJr.(パドレス) 13.2%
3. アーロン・ジャッジ(ヤンキース) 12.1%
4. ロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)  12.0%
5. ブラディミール・ゲレーロJr.(ブルージェイズ) 11.3%

■バレル/全打球
1. 大谷翔平(エンゼルス) 25.4%
2. フェルナンド・タティースJr.(パドレス) 22.2%
3. ロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス) 19.9%
3. アーロン・ジャッジ(ヤンキース) 19.9%
5. ジェイ・ギャロ(レンジャーズ) 18.6%
参照:「Baseball Savant」
 ただ、これはあくまでも結果の話だ。キャリアベストの2018年は全打球に対するバレル率が16.4%で、これもリーグトップ2%の数字だが、なぜさらに数字を積み上げることができたのか。そこをたどっていくと、以外な人物との接点が浮かび上がってくる。
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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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