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J1月間MVP キャスパー・ユンカーが力説「Jはハイレベル」「僕は浦和から代表に」

飯尾篤史

リーグ戦5試合に出場し、10本のシュートを放って5得点と高い決定力を誇る。シュートまで持ち込む流れが実にスムーズだ 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 5月度「2021明治安田生命Jリーグ KONAMI 月間MVP(J1)」に選出されたのは、浦和レッズのFWキャスパー・ユンカーだ。リーグ戦デビューとなった5月9日のベガルタ仙台戦でいきなりゴールを決めると、5試合5得点の活躍でチームの上位浮上に貢献した。

 昨シーズンのノルウェーリーグMVP&得点王の実力をいかんなく発揮している。日本語の習得にも努力を惜しまず、チームメートと積極的にコミュニケーションを取るデンマークの貴公子は、満員の埼玉スタジアムでのプレーを夢見ながら、ゴールを奪い続ける。

小泉佳穂は前線のパートナー

――5月度の明治安田生命JリーグKONAMI月間MVP受賞、おめでとうございます。5月9日のベガルタ仙台戦でのリーグ戦初スタメン初ゴールを皮切りに、5試合5得点の活躍でした。

 このような賞をいただけるのは、とてもうれしいし、誇りに思います。最初の月にこの賞を取れたのは僕にとって大きな出来事です。自分がチームに貢献したことの証しですし、チームのみんなで取った賞だと思います。5月はチームの状態も非常に良かったですからね。

――加入してすぐ、このような活躍ができると想像していましたか?

 想像していなかったです。ヨーロッパから日本に来るというのは特別な経験です。新しい環境に身を置く上で順応期間が必要だと思っていましたが、最高の形でスタートを切ることができました。ただ、これからもっと良くなると思います。

――チームにすぐにフィットし、結果を残せた最大の要因はなんでしょう?

 チームの全員が僕を温かく受け入れてくれました。初日から仲間が助けてくれたからこそ、溶け込むことができたのかな、と。ただ、まだ100%慣れているとは思っていません。もっともっとできると感じています。

――練習中、チームメートに話しかけている姿が見られます。過去、ノルウェーリーグに移籍した経験があるから、新しい環境になじむコツをつかんでいるのですか? それともアジアという未知の地域での挑戦だから、積極的にトライしている?

 ノルウェーはデンマークとほぼ同じ言語を話すのでコミュニケーションの問題はありませんでしたが、デンマーク国外で家族と離れて生活する経験はためになりました。サッカーはディテールが勝敗を分けるスポーツだと思いますので、考えをすり合わせるため、リーダーシップを見せるため、そして、日本語を学ぶために話しかけています。

――なかでも小泉佳穂選手には、かなり注文を出すそうですね。「俺のそばにいろ」とか。

 よくご存知ですね(笑)。ヨシは前線のパートナーです。僕は去年、ノルウェーリーグで優勝を経験したので、勝者のメンタリティーのようなものを伝えたいと思っています。どのようにすれば、2人の関係性が良くなり、互いにチャンスを与え合えるか。そのためにたくさん声を掛けています。彼は非常に能力が高く、この先もずっと浦和で活躍する選手だと思いますね。

――そういえば、ピッチ外で岩波拓也選手、杉本健勇選手と一緒にカットサロンに行ったそうですね。チームに溶け込んでいる様子がうかがえました。

 いい経験になりました。チームの勝利のために命を懸けて戦う集団になるには、ピッチ外での関係性も重要になってくると思います。髪の毛を切りに行ったとき、彼らは日本語や日本の文化などを教えてくれたんです。非常にいい関係を築くことができています。

グラウンダーのクロスに合わせる形が得意

日本語の習得にも熱心で、最近覚えた日本語は「さむい」だという。「エアコンをかけすぎてしまって……」 【スポーツナビ】

――練習に初めて合流したとき、日本語で自己紹介をされていましたが、いつ頃から日本語を勉強していたのですか?

 日本に来てから、バブルでの隔離期間が14日間あったんですけど、そのときに日本語のレッスンを受けました。自己紹介でいい印象を残すため、日本の文化に対するリスペクトを見せるためでもありました。今もチームメートの助けを得ながら毎日、新しいことを覚えていますが、日本語は難しいですね(苦笑)。

――ピッチ内の話に戻りますが、5月に奪った5ゴールの中で最も印象に残っているのはどれですか?

 どのゴールも好きですが、ガンバ大阪戦(5月16日/○3-0)のヘディングでのゴールですね。足でのゴールが多い自分にとって、また違った次元のプレーを見せることができました」

――身長が186センチもあるので、空中戦が最も得意なのかと思っていましたが、プレーを見ていると、スピードや足元の技術によってシュートに持ち込むことが多いですよね。

(ノルウェーリーグで得点王に輝いた)昨シーズンも、ヘディングからのゴールは少なかったですね。僕が好きなのは、グラウンダーのクロスに合わせるシュート。DFにとって守りにくく、ゴールになりやすい形だと思います。ただ、確かに僕は背が高いので、浦和ではヘディングシュートももっと磨いていきたいと思います。

――個人的には仙台戦でのゴールが好きです。小泉選手、武藤雄樹選手との流れるようなコンビネーションで、ユンカー選手が右足で仕留めたものです。

 あれはレベルの高いコンビネーションでしたね。武藤選手が前を向いたら動くことを心掛けていて、彼は経験のある選手だから、僕の動きを見逃さなかった。誰かがターンをして前を向いたとき、僕が動いてパスを引き出そうと考えています。チームメートも僕の特長を理解してくれているので、もっとゴールを決められると思います。

――そうした動き出しは、どうやって身につけたのですか?

 経験から来るものだと思います。もちろん、これまで在籍していたクラブでFWの動きを徹底的に訓練したこともありましたが、実戦でいろいろと試していく中で何が自分に合うのか、自分が何をすればうまくいくのかが分かってきました。もしかしたら、他の人は別の動きをするかもしれませんが、僕は自分でしっくりきている動きを浦和でも行っています。

――ボールの受け方や体の向きで大事にしていることは?

 走ること、ですね。DFと僕との間に50センチでもスペースを作れれば、シュートに持ち込める自信があります。Jリーグでも僕に対するマークが厳しくなってきましたので、動くことでスペースを作るように心掛けています。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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