連載:知られざるスポーツアナウンサー&キャスターの世界

“スポーツキャスター内田篤人”の哲学 「良くないものは良くない」と本音で──

ミムラユウスケ
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昨年8月の引退後は、幅広いフィールドで活躍中の内田さん。今回の「東京五輪でキャスターをやってほしい元アスリートランキング」では6位に推された 【写真提供:SARCLE】

 スポナビが実施したアンケート企画、「東京五輪でキャスターをやってほしい元アスリートランキング・男性編」で、6位にランクインした内田篤人さん。野球界出身の元アスリートが上位を占める中、元サッカー選手として唯一トップ10に食い込んだ。

 これはサッカー選手としての輝かしいキャリアだけではなく、その人柄も評価された結果だろう。

 昨年8月の引退後は、スポーツ配信サービス『DAZN』で冠番組を持ち、今年に入ってからはテレビ朝日系列『報道ステーション』のスポーツコーナーでキャスターを務めるなど、幅広いフィールドで活躍中の内田さんだが、果たして今、どんな想いを抱いて第二の人生を過ごしているのだろうか。

 現役時代のメディアに対する印象、報道する側の人間となった現在のスタンスなど、余すところなく語ってもらった。

現役時代に言えなかったことも今なら

――引退の際には、これで娘さんの幼稚園の送り迎えができると喜んでいましたが、それは今も変わりませんか?

 今も、ほぼ毎日、朝は送っていますよ。

――その一方で、最近はキャスターとしても活躍中ですね。4月に『報道ステーション』の取材で、Bリーグの試合会場に来ていた内田さんとお会いしましたが、その時にバスケットボールのウォーミングアップに感銘を受けたと話していたのが印象的でした。

 取材をする人間として、試合だけしか見ずに何かを語るよりは、アップの段階からしっかりと見ておいたほうが失礼はないですからね。あとは、「バスケってどういうアップをするのかな?」と、純粋に気になっていて。『報道ステーション』の仕事をやらせてもらうことにしたのも、いろんな人の考えを聞いたり、さまざまな競技を見ることで、気づいたり、学べることがあると思ったからだったので。

――『報道ステーション』での内田さんは、誰にとっても分かりやすい言葉や表現を心がけているように感じます。

 野球が好きでスポーツコーナーを見ている人もいるし、サッカーは数あるスポーツの中の1つでしかないので、広く浅くというか、そういうことは心がけています。逆に『DAZN』(の冠番組『Atsuto Uchida's Football Time』)では浅くてはダメで、より専門的に話さなければいけないと意識していますね。

――かつては報道される側だった人間として、意識していることは?

 どうしても、選手について評価をしないといけない場合がありますよね。わざわざ辛口なコメントをするつもりはありませんが、良くないものは良くないと言うべきかな、とは思っています。みんな内心では「良くない」と分かっているのに、それをオブラートに包むのはどうかなって。

――『DAZN』の番組内では、日本人レフェリーのレベルアップを願って、「ドイツのように選手と試合中にしっかりコミュニケーションを取ることの意義」を語っていましたね。

 もちろん、審判の仕事は難しいと思います。ただ、自分がドイツでプレーしていた時に、審判に対してストレスを感じたことはなかったので、環境も違うとは思いますが、あのくらいになってくれたらいいな、という想いで話しました。

――単なる批判とは一線を画した、前向きな提言だったと思います。現役の選手が言いづらいことを、元選手の立場で代弁しようという考えはありますか?

 それはあるかもしれない。現役の時に言えなかったことも、今なら言える部分もありますからね。引退直後に、「日本のサッカーと世界の差は広がっている」と言ったのもそうです。現役時代にそういった発言をして、プレーが少しでも上手くいかなかったりすると、すぐに批判されてしまう。サッカー界が良くなるためにも、現役選手が言いづらいことは、自分のような現役を終えた人間が言ってしまえばいいのかなって。

自分に嘘をついてまでやらせてほしいとは…

自身もシャルケ時代は実力でポジションを勝ち取った。だからこそ、海外クラブで出番を得られない選手に対して、言葉の問題を挙げて庇うようなことはしたくない 【Photo by VI Images via Getty Images】

――現役時代から、自分の意見をはっきりと口にするタイプでしたよね?
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著者プロフィール

金子達仁氏のホームページで募集されていた、ドイツW杯の開幕前と大会期間中にヨーロッパをキャンピングカーで周る旅の運転手に応募し、合格。帰国後に金子氏・戸塚啓氏・木崎伸也氏が取り組んだ「敗因と」(光文社刊)の制作の手伝いのかたわら、2006年ライターとして活動をスタートした。そして2009年より再びドイツへ。Twitter ID:yusukeMimura

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