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J1月間MVP 川崎Fレアンドロ・ダミアンの変わらぬ信念、自分で決めて仲間も生かす

飯尾篤史

4月度J1月間MVPに輝いた川崎Fレアンドロ・ダミアン。3ゴール5アシストの活躍でチームをけん引した 【Photo by Etsuo Hara/Getty Images】

 4月度「2021明治安田生命Jリーグ KONAMI 月間MVP(J1)」に選出されたのは、川崎フロンターレのFWレアンドロ・ダミアン。3ゴール5アシストの活躍で首位を独走するチームをけん引した。ストライカーらしく自らゴールをこじ開けることはもちろん、周囲を生かすポストプレー、アシストも光った。攻撃陣に豊富なタレントがそろう川崎Fにあって、レアンドロ・ダミアンのチームプレーを優先するスタイルが見事にハマっている。Jリーグ参戦3年目、王者の最前線に君臨し、その実力をいかんなく発揮するエースストライカーに迫る。

どんな形であってもチームの力になりたい

――4月度の明治安田生命J1リーグKONAMI月間MVPに輝きました。3ゴール5アシストと大活躍でしたね。

 先月、月間ベストゴールに選んでもらったばかりなのにKONAMI月間MVPに選考していただき、本当にうれしく思います。日頃のトレーニングの成果だと思いますし、昨年以上に日本のサッカーにフィットできているという感覚があります。もちろん、私の特徴を生かしてくれるチームメートにも感謝しています。

――4月29日と5月4日に行われた名古屋グランパスとの首位攻防戦で2連勝を飾りました。勝ち点6をつかみ取った今の率直な気持ちを聞かせてください。

 この2試合は高い集中力を持って試合に臨むことができました。名古屋は失点数が極めて少ないチームなので、難しいゲームになると思っていました。その中でもいくつかのチャンスを作れ、それをしっかり得点に結びつけることができた。自分たちが思い描いていた結果をつかみ取れて、ホッとしています。

――2連勝を飾れた大きな要因が初戦におけるダミアン選手の2ゴール1アシストの活躍で、そのインパクトも4月のKONAMI月間MVPにつながったと思います。あの試合では3分にまず旗手怜央選手にポストプレーからアシストを決めました。実に落ち着いていましたね。

 日頃の練習から自信を持ってプレーできていて、それがあの場面に出ました。左サイドにいた(三笘)薫からのパスでしたが、彼には、縦に仕掛けたり、センタリングを上げたり、カットインしてシュートを打ったりと、いろんな選択肢があったと思います。

 その中で彼はグラウンダーのクロスを入れてきた。ああいう場面でDFを背負ってゴールに背を向けていたら、シンプルにポストプレーをするのが私の役目。怜央もスペースにうまく入り込み、思い切り良くシュートを打ってくれた。3人の特徴がうまく合わさったゴールだったと思います。

――このシーンに限らず、4月11日のFC東京戦でも家長昭博選手の2ゴールをいずれもアシストしていて、ゴール数だけでなく、アシスト数も多いのが特徴です。ダミアン選手は典型的なストライカーですが、自分で決めることと、チームメートを生かすプレーのバランスは、どう考えていますか?

 個人的な数字はまったく重視していないんです。私がいつも意識しているのは、どのようにプレーすればチームを勝利に導けるか、そのことだけ。ゴール、アシスト、スライディングなどの守備も含めて、どんな形であってもチームの力になりたいので、その時々で最善のプレーを選択するように心がけています。

――ブラジルのように素晴らしいストライカーがたくさんいる国では、「俺が、俺が」とエゴイストでなければ生き残っていけないと思うのですが、ダミアン選手はブラジル時代から、そのような考え方でプレーしてきたんですか?

 もちろんFWにとってゴールは重要で、おっしゃる通り「ストライカーはエゴイストであれ」という考え方も理解できます。ただ、私の考えとしては、そこにフォーカスするのではなく、どんな形であってもチームの力になりたいし、チームの結果につながるプレーをしていきたい。ブラジル時代もそうやってキャリアを築き上げてきたので、今後もその考え方を変えずにやっていきたいと思います。

「ブラジルのイブラヒモビッチ」と呼ばれて

アクロバティックなプレー、ゴールパフォーマンスについても教えてくれた 【スポーツナビ】

――名古屋戦での2ゴールもそうでしたが、ダミアン選手を見ていると、いとも簡単にマークを外してフリーになっているように見えます。その秘訣(ひけつ)はなんでしょう?

 監督からもよく言われるんですけど、相手を見ながらプレーすることを常に意識しています。相手DFがどこを見ているのか、どちらに体を向けているのか。少しでも隙があれば、うまくスペースに潜り込もうとしています。フロンターレの場合、そこに正確なボールが出てきますから、ゴールにつなげやすいのも事実です。

――フロンターレの攻撃陣には、三笘選手、家長選手、小林悠選手……と、強烈な選手がそろっているから、マークが分散されるという感覚もありますか?

 おっしゃる通り、フロンターレと対戦する場合、相手チームはいろんな選手を警戒しないといけないので大変だと思います。先日の名古屋戦(5月4日)では私に対して非常に厳しくマークしてきましたが、その分、他の選手にスペースを与えられたんじゃないかと思います。例えば、2点目。自分がマークを引きつけてファーに流れたことでニアにスペースが生まれ、(山根)視来がゴールを決めてくれた。

 1点目も、セットプレーでしたが、自分がマークを引きつけたことでジェジエウのゴールにつながったと思います。フロンターレは誰かひとりをマークすれば抑えられるチームではない。それがフロンターレの強さだと思います。

――ダミアン選手はボレーシュートやバイシクルシュートなど、アクロバティックなシュートもうまいですよね。どんなトレーニングをして身につけたのでしょうか?

 アクロバティックなプレーはFWの醍醐味で、自分でもカッコいいなと思っています(笑)。ああいうプレーは小さい頃からずっとやってきたんです。だから、大人になっても体が自然と反応してしまうんです。自分の得意なプレーなので、これからもたくさん披露していきたいと思っています。

――そうしたプレーが多いことから、ブラジル時代には「ブラジルのイブラヒモビッチ」と呼ばれていたそうですね。イブラヒモビッチのアクロバティックなシュートも参考にしたことがありますか?

 彼は世界的なプレーヤーですよ。私とは比べ物にならないくらい素晴らしい選手だから、参考なんて、とてもとても。ただ、イブラヒモビッチに似ていると言ってもらえるのは、気持ちのいいことですけれど(笑)。

――ダミアン選手と言えば、髭(ひげ)をモチーフにしたゴールセレブレーションが有名ですが、4月29日の名古屋戦では鼻の下ではなく、ほおに人差し指を当てていました。あれは何を意味するのでしょうか?

 チームスタッフの清水(泰博)マネージャーの娘さんが、いつも私の真似をしてくれるらしいんですけど、彼女が髭ではなく、ほっぺたに指をやっていて。名古屋戦の前、清水マネージャーからその写真を見せてもらったので、「ゴールをしたら同じポーズをするよ」と約束したんです。だから、あのポーズになったんですよ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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