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Jリーグ月間表彰
J1月間MVP 名古屋・稲垣祥はブレない男
3試合で決勝点も「自分の判断に忠実に」
J1月間MVP初受賞の名古屋MF稲垣祥。3試合で決勝点を挙げて開幕6連勝に貢献、神戸戦では弾丸ミドルを突き刺した
J1月間MVP初受賞の名古屋MF稲垣祥。3試合で決勝点を挙げて開幕6連勝に貢献、神戸戦では弾丸ミドルを突き刺した【(c)J.LEAGUE】

 2・3月度「2021明治安田生命Jリーグ KONAMI 月間MVP(J1)」に選出されたのは、名古屋グランパスのMF稲垣祥。ボランチながら3試合で決勝点を挙げ、チームの開幕6連勝に大きく貢献した。得意のミドルシュートで2ゴールをマーク。特にヴィッセル神戸戦で放った弾丸ミドルは圧巻の一言に尽きる。その活躍が認められ、3月には日本代表に初招集されると、デビュー戦で2ゴールと結果を残した。29歳にして名実ともにJリーグを代表するボランチへと上り詰めた稲垣に、自身の評価、日本代表での経験、そして今季のチームへの手応えなどを聞いた。初のJ1月間MVP受賞を記念して、8000字以上におよぶロングインタビューをお届けする。高まる評価、認知度にも、この男がブレることはない――。

チームは開幕6連勝、3つの決勝点を記録

――まずは2月・3月度のKONAMIJリーグ月間MVP受賞、おめでとうございます。チームは開幕6連勝など好成績を挙げる中で、ご自身のパフォーマンスについてはどのように振り返りますか?


 ありがとうございます。自分のプレーに関してはゴールがうまく決まってくれたな、というところですね(笑)。それ以外のところでは全然、まだまだ自分自身には満足できる部分はないので、もっともっと積み上げたいなと思います。だけどチームとしては6連勝もありましたし、調子良く来ていますし、そういった意味での個人としてはチームを勝たせる要因のひとつになれていたので、良かったと思います。


――フィッカデンティ監督もおっしゃっていましたが、昨季積み上げたベースに上積みしたことがここまでの勝因です。その“ベース”の一部分である稲垣選手は、ここまでの勝因をどう分析しているのでしょうか?


 いま言われたことで間違いないと思います。去年やってきたことがベースとなって、より色濃く今季は試合に出ていると思いますし、それを実際にピッチ上でみんなが共有しながらやれているというのがひとつ大きいです。そして今年から入ってくれた選手たちが、そうしたグランパスのサッカーを体現するために相当な努力をしながらやってくれています。そういった覚悟を持って入ってきてくれた選手たちばかりだったので、すごく助かっています。


――確かに新加入選手に合わせて何かを変えるのではなく、名古屋のベースに彼らが合わせることをしています。練習や試合での新加入選手たちのプレーをどのように見ているのでしょうか?


 もう、それはもちろん練習中は、公式戦とかで皆さんが見ている以上に“うまい”ですよ。うまいですし、やっぱりトップレベルの選手だよなあ、と感じる部分は多いです。でも彼らをうまく組み込めているという部分に関して言えば、そこには間違いなく監督の手腕がすごく大きく感じています。それぞれの実績を持っている新加入選手たちをしっかりチームの一員としてプレーさせられるというのは、監督のおかげです。


――昨季終了後に、積み上げたベースへの上乗せとして稲垣選手は攻撃面を挙げていました。現状は無失点ベースで決勝点を奪っていくような流れがあるわけですが、その部分への自信は深まってきていますか?


 そうですね、去年からの積み上げてきたものがより色濃くなってきているところではそう思いますし、もっともっと自分たちも高めなければいけない、改善しないといけない部分は去年に引き続きあります。そこからもしっかり目を逸らさずに、調子が良いときだからこそ、しっかり目を向けていきたいですね。


――決勝点という部分では、この3月に稲垣選手は3つの決勝点を記録しています。貢献度としてとても大きかったわけですが、この得点を奪ってきた3月の自身についてはどのような感想をお持ちですか?


 チームの勝利に貢献できていたという面では、すごくうれしいし、すごく大きい良い仕事をできているなという実感はあります。それでもやっぱり自分への評価をしたときには、そこだけではなく、もっと違う全面的な部分を見て僕は考えます。その点では満足していない部分は大きいですね。


――特別に得点への意識はないとのことですが、積極性自体は上がっていると思います。チャンスは逃さないというか。そうした傾向の強まりは現状やはりあるのでしょうか?


 でも、それも何というか点を取ったことで余計に狙っていこうというような、良い循環になっているという意味で、狙っている意識は高まっているかもしれないです。ですから、シーズンが始まる前から『今年はシュートを打っていこう』とか『積極的にゴールを狙っていこう』ということは考えていませんでした。


――そういう意味でも今年は早い段階で、柏レイソル戦やヴィッセル神戸戦で点が取れたことで拍車がかかったところはあったわけですね。例えば神戸戦のゴールはボールが奪われたところへの判断から始まった良い得点でした。


 そういうことです。ああいったところは自分のベースとなる仕事というか、それを僕はけっこう大事にしていて。もちろんゴールを決めた、決勝点を3点決められているということも重要ですけど、ああいうところで切り替えをしっかりできていて、ポジションを修正できている。そこの仕事がしっかりできているかどうかを自分は一番大事にしているかもしれないですね。

シュートか、パスか、判断はブレさせない

鹿島戦のゴールはこぼれ球をボレーで捉えた得意な形。「スリッピーなグラウンド、ピッチ状況も利用しながら打てたシュート」
鹿島戦のゴールはこぼれ球をボレーで捉えた得意な形。「スリッピーなグラウンド、ピッチ状況も利用しながら打てたシュート」【(c)J.LEAGUE】

――鹿島アントラーズ戦のゴールも思いきりという判断も含めて素晴らしいゴールでした。


 もちろん良いシュートでしたし、スリッピーなグラウンド、そうしたピッチ状況も利用しながら打てたシュートでした。神戸戦のシュートにしても、他のセットプレーの場面にしても、それぞれのチームの守り方はありますが、こぼれ球に対する僕へのマークを置いていないんですね。それは僕がまだまだ実力不足なんだなと逆に感じる部分でもあって、警戒されていない。神戸戦にしても僕が本当に怖い存在だと思われていたら、あのレンジからでももっと寄せてくると思うし。たぶん打たせていいと、相手にそう思われていたんだと思います。まだまだ自分は怖い存在になれていないんだなと思うシーンでもありました。


――ただ、鹿島戦のシュートは難易度としては高いシュートでした。


 自分としては一番好きなボールというか。ああいったこぼれ球で自分に向かってくる、それをボレー気味で打てるボールというのは一番得意で、それは味方も分かっていると思います。一番、オレが打ちやすい球だなって。


――シュートをふかしがちなシチュエーションでもありますよね。低く抑える技術が必要です。


 そこもプロでキャリア積んできたことがあって、これがプロ1年目、2年目の僕だったら間違いなくふかしていたか、ミートできていないんですよ。でも、技術的なところで言えば待つことを覚えられたというか。けっこうああいうシーンは速めに振りに行きがちで、焦りもある、点を決めたい気持ちもある、チャンスが来た、という気持ちもある。そういうことがあって、自分の足元にボールが来る前に足を振りがちなんですけど、しっかり自分のミートポイントまでボールを待つことができるようになっているというのは、成長しているところだと思いますし、良いシュートが飛んでいっている要因かなと思うんです。


――判断を待てるというのは、シュートに限らず稲垣選手の長所です。


 そのあたりはいろいろな経験をしながら成長できてきたところかなと思います。


――FC東京戦では15000人の観客が入ったこともありましたが、稲垣選手がバイタルエリア付近でボールを持つと、スタンドから「来るか…?」という空気が漂いました。ピッチにも伝わっていましたか?


 もちろん。もちろん伝わっていましたよ。『あ、これは…打たないといけないのか?』みたいな心境になりそうでした(笑)。でも、ありがたいことですし、そうやって注目度が上がるというのはグランパスにとっても僕にとっても良いことじゃないかなと思います。


――その中で2回ほどパスを選んで、それからやっとミドルシュートを打ちました。


 そこに関しては、自分の判断はブレさせないぞ、というある意味での頑固さというか(笑)。そういうところが出たかもしれないです。


――少し我慢したところがありましたか?


 いや、自分の判断のままに。これはパスを出した方がいいから出す、シュートの方がいいなら打つ、その判断に忠実に。この歓声には流されないぞ、という(笑)。


――ただ、完全にミドルシュートという選択肢ができたというか、得意としているプレーの柱が太くなった感覚もありますか?


 まあ、そうですね。そこに関しては結果が出ているからこそあるとは思います。でもミドルシュート自体は前から得意なところではあったので。その自信は変わらず前から持っていますけどね。

今井雄一朗

1979年生まれ。雑誌社勤務ののち、2015年よりフリーランスに。以来、有料ウェブマガジン『赤鯱新報』はじめ、名古屋グランパスの取材と愛知を中心とした東海地方のサッカー取材をライフワークとする日々。

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