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J1月間MVP キャスパー・ユンカーが力説「Jはハイレベル」「僕は浦和から代表に」

飯尾篤史

兄の影響でマンチェスター・Uファンに

子どもの頃に憧れたのはロビン・ファン・ペルシをはじめとするマンチェスター・ユナイテッドのストライカーたちだという 【Photo by Jamie McDonald/Getty Images】

――今も昨シーズンのノルウェーリーグでも、決定力が非常に高いですが、若い頃にプレーしていたデンマーク時代にはあまり点が取れていません。ストライカーとして目覚めるきっかけがあったのでしょうか?

 先ほど経験が重要だという話をしましたが、サッカー選手というのは、自分を見つけないといけません。つまり、自分のことをよく知る必要があります。デンマークにいた頃は、自分がどのようなタイプ、どのような選手なのか、自分でも分かっていませんでした。成長段階だったと思います。その後、国外に出て一人で生活する中で、自分がどのような選手なのかがだんだん分かってきて、次のステップにつながったと思います。

――若い頃はスピードを生かしてサイドでもプレーしていましたが、経験を積み、自分の仕事場がペナルティーエリアの中だと分かったと。

 おっしゃる通り、若い頃はスピードにモノを言わせて、今とは異なるピッチエリアでプレーしていました。今もスピードを生かしたプレーをしますが、どこでスピードを発揮すれば、相手によりダメージを与えられるのか、いつ、どこで、どんな動きをすれば、チームに貢献できるのか、ゴールにつなげられるのかを考えています。先ほど、走ることを大事にしている、と話しましたが、走るために走るのではなく、考えながら走っています。

――以前、子どもの頃に憧れていたり、参考にしていたFWとして、ロビン・ファン・ペルシ、ルート・ファン・ニステルローイ、ウェイン・ルーニーの名前を挙げていて、マンチェスター・ユナイテッドのファンだということを公言されていましたが、そのきっかけは?

 僕の兄がマンチェスター・ユナイテッドの熱狂的なファンだったんですよ。そうした兄の様子を子どもの頃から見ていたので、僕も自然とファンになりました。だから、うちは家族ぐるみでマンチェスター・ユナイテッドのファンなんです。

――浦和レッズはマンチェスター・ユナイテッドと過去3回、親善試合を行っているんですよ。

 僕がレッズに在籍しているうちに4回目が実現するといいですね。そうしたら、こんなに幸せなことはありません(笑)。

――浦和に加入する際、「新しい冒険をしたいと思っていた」とおっしゃっていました。ただ、ビッグクラブでのプレーやデンマーク代表を目指すなら、欧州にいた方が有利だと思います。それでも新しい冒険がしたかったのでしょうか?

 ヨーロッパでも「代表でプレーしたいなら、ヨーロッパに留まるべきだ」という意見がありましたけど、僕はそれには同意しません。Jリーグはハイレベルなリーグだと思っています。例えば、ヴィッセル神戸のトーマス・フェルマーレン選手もベルギー代表に選ばれています。必ずしもヨーロッパでプレーしなければならないということはないし、日本でプレーしていても、可能性はあると思います。Jリーグはヨーロッパで過小評価されていると思います。

早く満員の埼スタでプレーしたい

浦和のファン・サポーターの情熱に早くも感激している模様。満員の埼スタでプレーする自身を想像してモチベーションを高めているという 【Photo by Zhizhao Wu/Getty Images】

――実際、デンマークリーグやノルウェーリーグと比べてJリーグのレベルはどうなんでしょう?

 フィジカル面で言うと、デンマークの方が大柄な選手が多い分、レベルが高いかもしれないですが、技術レベルでは日本の方が上だと思います。サッカーのスタイルで言うと、デンマークの方がより形を整えて、ゆっくりプレーする傾向があります。Jリーグの方がテンポやスピードが速く、アップダウンも多く、レベルが高いと思いますね。

――同胞のアレクサンダー・ショルツ選手の浦和加入が決まりました。彼はどのような選手ですか? 彼にアドバイスをする機会はありましたか?

 彼が加入する前に連絡をもらったわけではないので、アドバイスをする機会はありませんでした。彼自身が自分のフィーリングを大事にして今回の決断を下したんだと思います。彼はデンマークリーグでMVPに輝いた選手です。その選手がJリーグに来るということは、彼にとってステップアップだと感じているからだと思います。デンマークのベストプレーヤーがさらに上を目指してJリーグに来るわけですから、それだけでもJリーグのレベルが高いということが分かると思います。

――では最後に、コロナ禍のため、なかなか交流できない浦和レッズのファン、サポータへのメッセージをお願いします。

 今はスタジアムに入場制限がありますが、みなさんの存在をしっかり感じています。クラブハウスにはACL(AFC チャンピオンズリーグ)決勝の満員の埼玉スタジアムの写真が飾ってあって、あの写真を見るたびに、早く満員の埼玉スタジアムでプレーしたいと願っています。実際にその日が来れば、自分のキャリアの中でも間違いなくハイライトになると思います。日本でのプレーは自分にとって冒険だと言いましたが、単なる冒険で終わらせるのではなく、ビッグな結果を浦和レッズにもたらしたいという目標を持っています。

――埼玉スタジアムのスタンドで掲げられるデンマーク国旗の数も、試合を重ねるごとに増えていますね。

 本当に信じられない光景を毎試合、目の当たりにしています。昨日の試合(6月9日に行われた天皇杯2回戦、カターレ富山戦)でも、たくさんのデンマーク国旗が振られていて、驚きました。誇りを感じますし、幸せも感じています。ファン・サポーターの皆さんの応援、愛情に対して毎試合、お返しができればと思っています。

(企画・構成:YOJI-GEN)

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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