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城彰二×金子達仁から東京五輪代表へ
均質化、OA、そして久保建英について

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 元日本代表FWの城彰二氏とスポーツライター金子達仁氏によるスペシャル対談。1996年のアトランタ五輪を振り返った前編に続いて、この後編では「日本サッカーへの提言」がメインテーマだ。自分だけの武器を持たない選手が増えた「均質化の時代」に物足りなさを覚える両氏は、東京五輪に臨むU-24日本代表にも鋭くメスを入れる。オーバーエイジ(OA)の人選、三笘薫や久保建英といったタレントの可能性について、独自の見解を示してくれた。

語りたいことはこの中に全部書いてある

金子氏(左)の著書『28年目のハーフタイム』について、「すっごく衝撃的だった」と感想を語った城氏(右)。では、作中に城氏の章がなかった理由とは──(新型コロナウイルスの感染防止に努め、撮影時のみマスクを外しました)
金子氏(左)の著書『28年目のハーフタイム』について、「すっごく衝撃的だった」と感想を語った城氏(右)。では、作中に城氏の章がなかった理由とは──(新型コロナウイルスの感染防止に努め、撮影時のみマスクを外しました)【YOJI-GEN】

金子達仁(以下、金子) アトランタ・オリンピックのブラジル戦では体験できたけれど、Jリーグでは味わえないものってなんでしたか?


城彰二(以下、城) 頭の回転の速さ、かな。とにかく考えるスピード、判断力がまるで違いましたから。


金子 それをフィールドの中で、あの若さで体験できたのは、めちゃくちゃ大きかったでしょ。


 はい。海外の選手との真剣勝負、そしてその中でこそ発揮されるクオリティーって、なかなか体験できるものではないですからね。


金子 結果は銅メダルでしたけど、あの大会の最強チームって間違いなくブラジルだったわけじゃないですか。


 そうですね。確かに力の差は痛感させられましたけど、だからこそ、あの最強レベルに少しでも近づきたいっていう欲が生まれたんです。そういった意味で、アトランタ・オリンピックの経験はその後のキャリアに生きたし、俺たちの世代が中心になってA代表で戦いたいって、より強く思うきっかけにもなりましたね。


金子 ジョホールバルの時とか、「俺を出せ、俺を出せ」って言いまくってましたもんね。大丈夫かよっていうくらい。


 確かに(笑)。まあ、自信もありましたからね。「カズを使うより、俺たちを使え」って、堂々と言ってましたもん。


──ここに、アトランタ・オリンピックの舞台裏を描いた金子さんの著書『28年目のハーフタイム』がありますが、城さんは読まれましたか?


 もちろん。


──作中に中田さんの章、川口さんの章、前園さんの章はありますが、城さんの章がありませんね。


金子 理由は簡単ですよ。城さんにも何度も取材を打診したけれど、忙しくて当時の事務所からオーケーをもらえなかったんです。


──城さん、語りたいことがあったのでは?


 語りたいことは、この中に全部書いてありますから。完結された作品だと思いますよ。すべて洗いざらい書いてあって、すっごく衝撃的だった。


金子 あの時、(メキシコ・オリンピックに出場した)28年前というのは僕にとっては江戸時代と一緒だった。ところが、もうあれから25年が経ってしまったという。


──作中で金子さんは、当時の協会のバックアップ不足やマスコミの姿勢など、日本サッカーを取り巻く環境について問題点を指摘されていましたが、25年が経って、変化を感じていますか?


金子 まだまだ物足りないところはいっぱいあるけれど、この本を書いた時の予想をはるかに超えるスピードで、環境は良くなっていると思います。だって、川崎フロンターレのホームスタジアム(等々力陸上競技場)が、ついにサッカー専用になる時代なんですから。


 環境は激変しましたよね。野球社会だった日本で、ここまでサッカーが認知されるようになった。ただ、競技レベル自体はまだまだだと思いますね。もちろん、昔に比べたら強くはなりましたけど、たとえば世界大会でトップに立てるかって言えば、全然足りない。

武器を自覚していたジョホールバル

98年フランスW杯出場を懸けたイランとのアジア第3代表決定戦。城氏は武器である高さを生かしたヘディングシュートで同点弾を決め、「ジョホールバルの歓喜」を呼び込んだ
98年フランスW杯出場を懸けたイランとのアジア第3代表決定戦。城氏は武器である高さを生かしたヘディングシュートで同点弾を決め、「ジョホールバルの歓喜」を呼び込んだ【写真:岡沢克郎/アフロ】

──何が一番、足りないですか?


金子 僕はファンの意識だと思う。城さんもバジャドリー時代、シュートを外したら凄まじい罵声を浴びたでしょうけど、ところがいまだにJリーグでは、とんでもない外し方をしたあとに、その選手の名前をチャントで叫ぶファンが大勢いる。これではストライカーが育ちませんよ。それから、木を見て森を見ずじゃないですけど、フォーメーションオタクが多くなりすぎて、そこに振られ過ぎている気がするし、あとは選手自体も全体的に小粒になりましたよね。これもファン気質に関係するんですが、彼らはミスをしても叩きはしないけれど、嫌がる。だからミスをしないサッカー、挑戦しないサッカー、取りにいかないサッカーっていうのが、今はJリーグから高校まで、全部がそうなっている気がしますね。


 うーん、なるほど。


金子 城さんがいた頃の鹿実もそうでしたが、粗削りだけれども相手を刺しに行くような気迫があったじゃないですか。そんな蛮刀でぶった切るようなサッカーが、すっかり消えてしまいましたよね。個人的にはきれいにつなぐサッカーが好きだけど、蛮刀と戦った経験を持たずして世界に出れば、きっとボコボコにされる。バルサだけじゃなく、もちろんアイルランドみたいなサッカーがあってもいいわけです。だけど最近は、みんながみんな小さくまとまって、均質化している気がするんですよね。


──それは城さんの時代と比べても全然違いますか?

吉田治良

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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