連載:知られざるスポーツアナウンサー&キャスターの世界

キャスター寺川綾は“ザ・自然体” 選手への取材で大切にしていることとは?

吉田治良
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 現役時代はアテネ、ロンドンと五輪2大会に出場し、2012年のロンドン五輪では競泳の100メートル背泳ぎと4×100メドレーリレーの2種目で銅メダルを獲得した寺川綾さん。第一線を退いた現在は、テレビ朝日の『報道ステーション』でスポーツキャスターを務めるなど、多方面で活躍中だ。取材される側から、取材する側へと立場を変えた彼女が今、自身の経験をもとに大切にしている姿勢とは――。屈託のない笑顔が印象的な寺川さんが、メディアにまつわるさまざまなエピソードを語ってくれた。

選手の気持ちが分かるからこそ、難しい線引き

『報道ステーション』でスポーツキャスターを務めて6年目。「今も失敗だらけですよ」と言う寺川さんだが、その明るい笑顔に癒されているファンは多いはずだ 【写真:本人提供】

――現役時代、将来スポーツキャスターになる自分を想像していましたか?

 いえ、まったく(笑)。

――それはまた、なぜ?

 初めて日本代表になった時に密着取材をしてくださったテレビ局の方が、(13年に)私が引退を決めてから連絡をくださったんです。「これからも水泳に携わっていくと思うけど、いろんな形で一緒にお仕事をやっていきましょう」って。そこからあれよあれよと話が進んで、報ステ(報道ステーション)のお話もいただけたんです。最初は少し迷いもあったんですが、いろんな人に「やりたいからってできる仕事じゃない」と背中を押されて……、というか「やってみろー!」って押し倒された感じですね。

――現役時代、メディアにはどんなイメージを抱いていましたか?

 良くはなかったです(笑)。メディアはいろんな話題を作らなきゃいけないお仕事だと思いますが、「そこまで言わなくても」とか、「そんなこと聞かなくても」っていうことがたくさんあったので。私たち選手とは真逆の立場にいる人たちなんだなっていう認識でしたね。

――それが今では、反対側の立場になった。

 なので、報ステを始めたばかりの頃はすごくバリアを張っていましたね。でもチームの中に入って、実際に番組作りのプロの方たちの働く姿を見ていたら、率直に「すごいな」って。それにスポーツ局で何かの競技の中継が始まると、みんな映像に見入って声を上げて応援するんですね。本当にスポーツが好きな人たちの集まりなんです。だから、「誤解していてごめんなさい」って(笑)。この人たちと一緒にスポーツの魅力を伝えていけるのは素晴らしいことなんだって、最初のうちに気付けたのは良かったですね。

――悪いイメージは消えましたか?

 そうですね。みんなスポーツが大好きですし、良いチームに入れてもらえました。

――取材される側からする側へ立場が変わって、難しさは感じていますか?

 難しさは常に感じています。たとえばインタビューで、選手の心を傷つけないように聞くにはどうしたらいいか。踏み込んでいいところと、そうじゃないところの線引きが、(アスリートの気持ちが)分かるからこそ難しい部分はありますね。
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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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