連載:知られざるスポーツアナウンサー&キャスターの世界

NHK『サンデースポーツ』の長寿の秘訣 番組スタッフが語るキャスターの重要性

吉田治良
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 移り変わりの激しいテレビの世界で、NHKのスポーツニュース番組『サンデースポーツ』(総合:毎週日曜よる9時50分〜)は、1985年の放送開始から今年で37年目を迎える。はたして、その長寿の秘訣はどこにあるのだろうか。そして、番組内において歴代のスポーツキャスターたちは、どのような役割を担ってきたのか。今回はNHK報道局スポーツ情報番組部から、元プロデューサーで番組の歴史を知る浜田豊秀部長、そして現在、制作のトップに立つ川西研チーフ・プロデューサーのお二人に登場を願い、話を聞いた。

テレビだからこそできる深い解説

昨年10月に全面リニューアルされた『サンデースポーツ』。豊原アナ(右)と副島アナ(左)のキャスターコンビを中心に、ファミリー感を大切にしている 【提供:NHK】

 昨年10月、『サンデースポーツ』は全面リニューアルに踏み切った。新たなキャッチコピーは「いまこそ、スポーツにワクワクしませんか」。コロナ禍でのこのトライについて、川西研チーフ・プロデューサーはこう説明する。

「スポーツが世の中から消えてしまうなんて、番組の長い歴史の中でも初めてのことでした。ただそこで、改めてスポーツが持つ力、価値を見つめ直すことができたんです。キャッチコピーに込めたのは、スポーツが社会に対して、なんらかの力を与えられないかという想い。リニューアルに際しては、少しでも臨場感を味わってもらうためにバーチャルセットを使用したり、また音楽もみんなで一緒に応援している気分になれるものを意識的に作ってみたりと、そんな工夫をしましたね」

 メインキャスターは豊原謙二郎アナと副島萌生アナのコンビ。そしてレギュラー解説者として、元プロ野球選手の上原浩治さんと元プロサッカー選手の中澤佑二さんを迎えている。これまでは、テーマに沿った解説者を随時呼ぶ形が多く、こうして固定したのは番組史上初めての試みだ。さらに今年4月からは嵐の相葉雅紀さんが不定期で新コーナーを担っている。

「ワクワクを届けるためにも、深い部分をしっかり伝えたい。出演者を固定したのは、番組にファミリー感を出すとともに、継続性を生み、より深い解説を実現する狙いがあったからです。レギュラー解説のお二人は、プロとしての実績が十分で、発信力やコミュニケーション力も備えた方たち。リニューアルから半年が経ちましたが、回を重ねるごとに出演者同士の距離も縮まり、スタジオが活性化してきました。また2年前まで『グッと!スポーツ』を担当された相葉さんは、アスリートの素をとても上手に引き出してくれます。相葉さんの取材力を通して、競技の面だけでなく、選手たちの思いにも深く迫れていると感じています」

 そう言って手ごたえを口にする川西チーフ・プロデューサーだが、「若者のテレビ離れ」という現実も直視し、テレビにしかできないモノづくりを強く意識する。

「今の時代、ネットの速報サイトはいくらでもありますからね。『サンデースポーツ』は日曜の夜9時50分スタートで、民放各局さん(のスポーツ番組)よりも放送開始が早く、一番手の強みはありますが、当日のニュースに、いかに付加価値を付けられるかということは、かなり意識しています。深い解説で勝負の綾(あや)を伝えていくのは、テレビだからこそできること。現在はコロナ禍で以前のように取材も思うようにできませんが、そこは変わらず大切にしている部分です」

副島アナの素人目線の鋭い指摘

有働由美子アナ(現フリー)など、歴代の女性キャスターにもそれぞれカラーがあった。現在の副島アナは感性の人。素人目線の指摘が番組作りに役立っている 【写真は共同】

 では、昨年のリニューアル時からコンビを組むキャスター2人の役割について、制作の現場を預かる川西チーフ・プロデューサーはどのように考えているのだろう。ちなみに豊原アナは、2015年のラグビーワールドカップで、「史上最大の番狂わせ」と言われたあの日本対南アフリカ戦の実況を担当した、局内屈指のスポーツアナウンサーだ。
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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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