なでしこジャパンのキャプテン熊谷紗希は楽しみながら東京五輪で金メダルを獲る!

早草紀子

高倉体制でキャプテンの重責を担う熊谷。引っ張ってもらう立場から引っ張っていく立場となって当初は戸惑いもあったが、いまやリーダーの風格が漂う 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 東京五輪の開幕まで、およそ1カ月半となった。なでしこジャパンは6月10日にウクライナ、13日にメキシコとの国際親善試合に臨むが、この2連戦は本番に向けた強化の場であると同時に、18人の代表枠を懸けた最終選考の場でもある。

 4月の国際親善試合(パラグアイ戦とパナマ戦/いずれも7-0で勝利)に続き、残念ながら今回もチームの現在地を把握しづらい格下が相手だ。とはいえ、なんと言っても大きな意味があるのは、昨年11月以来、ようやくなでしこジャパンの全戦力がそろうことだろう。重要視すべきは対戦相手ではなく、ここでいかに方向性を整理し、チームとしての底上げを図れるかだ。

 そのカギを握るのが、今回、約半年ぶりに合流する熊谷紗希だ。経験豊富なキャプテンに、東京五輪に向けての決意を聞いた。

代表モードへの切り替えが合宿の目標

──オリンピックは2012年のロンドン大会を経験し、銀メダルを獲得しました。一方で、16年のリオデジャネイロ大会はまさかのアジア予選敗退。厳しい現実にも直面しましたが、熊谷選手にとって、オリンピックとはどのような位置付けですか?

 サッカーにはワールドカップというビッグイベントがありますが、それと同様に重要な世界大会の1つと捉えています。でも、ワールドカップとの大きな違いは、サッカーが好きな人だけでなく、より多くの人の目に触れるということですね。特に日本では、オリンピックの方が一般的な注目度は高いように感じています。

──女子サッカーの場合は、男子サッカーと違ってオリンピックがそのチームの集大成の場となります。東京オリンピックに向けて高倉ジャパンが始動し、キャプテンに任命された熊谷選手は、初めて先頭に立って代表チームを引っ張っていく立場になりましたが、ここまで難しさは感じていますか?

 ずっと引っ張ってもらう立場でしたからね。高倉(麻子)監督になって、“中堅”を経験することなく、いきなり一番上になったので、最初はもうすべてが手探りでした。もちろん、年齢的にも自分の経験を若手に伝えていかなきゃいけないと、分かってはいるんですが……。『こんなに難しかったのか!』って思いますし、これまで先輩たちにすごく苦労をかけていたんだなって痛感しましたね(笑)。

──自身が最後に参加した昨年11月のキャンプでは、新しいメンバーがたくさん呼ばれていましたね。それ以来の代表合宿ということで、いろいろと試したいこともあると思います。今回、熊谷選手が取り組むべき課題とは?

 私が代表に参加できなかった間にも、大きく方向性は変わらないとはいえ、新たに積み上げられたもの、修正された部分はあるはずなので、真っ先にそこは確認したいです。まずはそこを理解した上で、アジャストしていく作業は間違いなく必要でしょう。それに昨シーズンまでのリヨン(すでに退団が決定し、新シーズンからはドイツのバイエルン・ミュンヘンでプレーする)での役割と、代表で求められている役割は確実に違うので、早く代表モードに切り替えることが、私個人としての一番の目標ですね。

W杯のオランダ戦くらいの完成度には…

チームが十分に仕上がらないまま臨んだ19年の女子W杯は、ラウンド16でオランダに敗れた。東京五輪で同じ轍を踏まないためにも、ここからの1カ月半で完成度を高めたい 【写真:ロイター/アフロ】

──19年の女子ワールドカップではケガ人も多く、いろいろと苦労があったと思います。当時はトライ&エラーを重ねながらチームを固めていくというやり方でしたが、今回もそうなりそうですか?

 前回のワールドカップは、準備万端で臨めたかと言えば、決してそうではなかったと個人的には思っています。でも、大会の中でできることは本当にすべてやりました。ああいったチームの作り方は経験しているので、それを応用できるところもあると思います。ただ、東京オリンピックに、『準備不足だな』って感覚を抱いたまま臨みたくはないんです。自分が参加する6月の合宿から開幕までの1カ月半で、ワールドカップのオランダ戦(ラウンド16/1-2で惜敗)くらいの完成度に持っていけるようにしたいですね。

──あのオランダ戦では、なでしこらしいテンポの良い攻撃や粘り強い守備が見られましたし、「ようやくチームらしくなってきたな」と感じられた試合でした。確かに、開幕の時点であのレベルまで持っていければ、かなり面白くなりそうですね。グループステージではカナダ、イギリス、チリと同組(グループE)ですが、楽しみにしている対戦はありますか?

 いやいや、楽しんでいる余裕はないですよ(笑)。まあ、やっぱり重要なのは初戦でしょう。このカナダ戦の入り方で、大会全体の流れが決まる部分も大きいですからね。相手にとって不足はない……というか、むしろお釣りがきちゃうくらい。カナダ戦にうまくピークを持っていきたいです。

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著者プロフィール

東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりJリーグ撮影を開始。1996年から日本女子サッカーリーグのオフィシャルカメラマンとなる。以降、サッカー専門誌で培った経験を武器に、サッカー撮影にどっぷり浸かる。現在はJリーグ・大宮アルディージャのオフィシャルフォトブラファーであり、日本サッカー協会オフィシャルウェブサイトでは女子サッカー連載コラムを担当している

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