連載:数々の伝説に彩られたPL学園の「凄み」

マエケンを育てた藤原弘介監督が語る あの不祥事も乗り越えたPLの強さの秘密

西尾典文
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半年間の謹慎処分後、27歳という若さでPL学園野球部の監督に就任した藤原氏。難しい時期を乗り越え、母校を春夏合わせて3度の甲子園出場へと導いた 【本人提供】

 1980年代に黄金時代を築いたPL学園野球部。90年代に入ってからも松坂大輔を擁する横浜高校と歴史に残る激闘を繰り広げるなど、高校球界を代表する存在だったが、2001年に部内で暴力事件が起こり、半年間の対外試合禁止処分を下されてしまう。その事件後、監督に就任したのが、当時27歳という若さの藤原弘介氏(現・佐久長聖監督)だった。就任後は03年夏を皮切りに、春夏合わせて3度の甲子園に出場。前田健太(ツインズ)を擁した06年春には準決勝進出も果たしている。自身もPL学園野球部OBで、選手としても指導者としても甲子園の土を踏んだ藤原監督に、「PLの強さの裏側」には何があったのかを聞いた。

「戦争が始まったら家に帰れるぞ」

──まず、藤原監督ご自身がPL学園に進まれた経緯を教えてください。

 小学校まではソフトボールをやっていて、中学で河内長野ボーイズというチームに入ったんですが、そのOBの多くがPLに進学していたことが大きかったですね。立浪(和義)さんがキャプテンで春夏連覇を達成した年(87年)の代には、河内長野ボーイズ出身の先輩が5人もいらっしゃいました。桑田(真澄)さん、清原(和博)さんの代も子どもの頃に当然見ていますし、憧れもありましたから、自分で希望してセレクションを受けさせてもらったんです。

──入部前から厳しい環境だというのはご存じでしたか?

 いえ。当時はそれほど情報があるわけでもないですから、詳しいことは知りませんでした。寮生活だから、きっと厳しいんだろうなという程度ですね。実はPLも87年の春夏連覇の後は少し甲子園から遠ざかっていて、当時は近大付属や上宮が強かったんです。自分が中学3年の時は元木(大介)さんがいた上宮が特にすごかった。だから、PLだけが特別に強くて厳しいという印象もありませんでした。

──実際に入られて、大変だったことは何ですか?

 まずは寮生活ですよね。中学までは親に洗濯をしてもらっていたのに、高校では自分でやらなければいけないし、さらに先輩の分もある。そういった生活に慣れるのが大変でした。野球のレベルもとにかく高かった。自分が入った時は入来(祐作)さんがエースで、それまで見たことのないようなボールを投げられていましたから。それに、PLは1年生から3年生まで基本的に同じ練習メニューなんですけど、3年生はまずエラーをしない。ノックのボール回しでも送球の速さ、正確さがまるで違う。すごいところに来てしまったなと思いましたね。

──そこでプレーしていれば、自然と自分のレベルも上がっていくような手応えはありましたか?

 正直、手応えなど感じている余裕はなかったですね。下級生の頃はテレビを見る時間もなく、完全に社会と隔離されていた感じで、(比較対象となる)他の高校の情報も伝わってきませんでしたから。私が1年生の時の1月に湾岸戦争が始まったんですけど、同級生の誰かが「戦争が始まったら家に帰れるぞ」みたいなことを言っていたのをよく覚えています(笑)。

 我々の代は歴代でも最弱と言われていて、その中で自分はレギュラーでもありませんでしたから、レベルどうこうは本当に分からなかったんです。ただ同期には今岡(誠)がいて、エースはひとつ下の松井稼頭央(当時は和夫)。卒業後に大学や社会人で活躍した選手も多かったので、あとから考えるとやっぱりレベルは高かったんでしょうね。

「謙虚な気持ちを持ち続ける」という教え

藤原監督自身も92年のセンバツに控え選手として出場。当時の中村順司監督(写真右)からは、決して驕らず、謙虚な気持ちを持ち続けることの大切さを学んだという 【写真:岡沢克郎/アフロ】

──今思い返して、PL学園の強さの秘密はどのようなところにあったと思われますか?
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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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