スペインで驚いたこと、難しさは? 岡崎慎司が考える、欧州で生き残る選手

工藤拓

海外でプレーし続けて10年以上。岡崎慎司が考える、スペインで活躍するため、ヨーロッパで生き残るために必要なことは? 【Getty Images】

 ドイツで5年、イングランドで4年、そしてスペインで2年。岡崎慎司は海外でプレーし続けてもう10年以上となる。これほど長くヨーロッパの最前線で活躍してきた日本人ストライカーは岡崎をおいて他にいない。現在34歳、ベテランの域に達しても、新たな領域に足を踏み入れ、走り続けている。

 ブンデスリーガ、プレミアリーグと渡り歩いた岡崎は、ラ・リーガでプレーして何を感じたのか。日本人選手がスペインで活躍するために必要なこと、またヨーロッパで戦い続ける選手とは……。自身の体験をもとに語ってくれた。厳しい世界を生き抜いてきた男の言葉には、説得力がある。(後編/全2回)(取材日:2月4日)

無名選手たちの技術の高さにビックリ

――体格差もある中で、ヨーロッパ3大リーグでの戦いをどう乗り越えてきたのですか?

 最初ドイツに行ったときは、もちろん体格の部分で心配することもあったんですけど、行ってみて思ったのは、やれないことはないなということ。そのあとイングランドに行って、スペインに来ましたけど、体格やフィジカルが全然違う相手に対して、日本人の良さというか、予測や反応、考えるプレー、チームにフィットする力を駆使すれば、やれないことはないという自信がついてきました。

 Jリーグで自分の土台が作れて、さらに日本代表でもプレーすることでさらに自信を得て、そこからの海外移籍でした。ステップアップしながらプレーできたので、ヨーロッパでのプレーも問題なくやれたのかなと思います。

――スペインのサッカーはブンデスリーガやプレミアリーグと比べてどう違いますか?

 スペイン代表もそうですし、ラ・リーガのクラブの選手たちもそうですけど、自分たちのサッカーがすごく根付いているなと感じます。それは昨シーズン、プレーした2部でも感じていました。激しさ、インテンシティが高いことはもちろん、それ以上にボールを扱う技術だったり、ドリブルの技術だったり、本来サッカーに必要な部分を、無名の選手たちが持っていることにすごいビックリしました。

 そういう意味では、サッカーがすごくうまい選手が多いですね。ドイツやイングランドでもそうなんですが、スペインはよりそれを感じます。スペイン人選手が多いこともそうだし、この国のサッカーがリーグにすごく根付いていて、外国人選手が活躍するのは難しいなと。スペイン語を話さなければいけないことも含めて、スペインサッカーが根付いていることを、プレーしていて感じますね。

――プレミアリーグ優勝とラ・リーガ2部優勝、どちらの優勝により貢献できたと思いますか?

 比べるのはすごく難しいですね。得点数とかストライカーとしての仕事でいえば、もちろん昨シーズンのラ・リーガ2部での優勝が大きかったと思います。でもレスターでの優勝というのは、目に見えない部分で僕自身もチームにフィットしたと思いますし、貢献していた部分もたくさんあった。より価値があるのはプレミアリーグですかね。日本人としても大きな価値があったかなと思います。それでも両方を比べるというのは、僕にはできないですね。自分にとっては両方素晴らしい経験だったと思います。

今はウエスカのため、いずれJリーグで…

今はウエスカを残留させること、トップリーグで戦い続けることが優先。その上で、いつかJリーグに復帰することも…… 【Getty Images】

――今シーズン苦労しているのは、プレースタイルの違いが関係していると思いますか?

 苦労している部分というのは、そこまで……。正直、僕はドイツでも苦労したときもありましたし、イングランドでも苦労した時期がありました。でも時間が経てば慣れてくる。もっと若いころにスペインに来ていれば、もっと可能性があることも考えられたと思いますが、今の自分の状況だと、1年1年が勝負だと思っています。今はこの1年がダメだったら終わりという気持ちでやっているので、難しい部分はあります。

 初めて日本から海外に出たり、例えばドイツでプレーしていた選手がいきなりスペインに来たりとかだと、すぐに活躍するのはやっぱり難しいのかなと。自分の特徴をスペインサッカーに合わせていかないといけないので。そういう部分はみんなすごく苦労しているんじゃないですかね。

 僕もラ・リーガ2部でプレーしたときも最初は苦労しました。今自分が抱えている問題は大したことじゃなくて、僕自身の実力であったり、結果を残すところで苦労していますけど、それ以外では溶け込むことも含めて苦労だとは思っていません。ただ、スペインですぐに結果を出すのは、なかなか難しいものがあるのではないかと思っています。

――今までの実績を振り返ってどう感じますか? また今後は何を目指していくのですか? キャリアの最後にJリーグに復帰する可能性は?

 これまでのサッカー人生、キャリアを振り返ることはあまりないです。プレミアリーグで優勝したり、ウエスカでラ・リーガ2部優勝したり、たくさんの経験をさせてもらいました。ドイツでも2ケタ得点をしたり、個人的にも活躍できたというシーズンがあったりしました。

 すごく光栄な実績というか、結果がついてきました。ただ、海外でプレーするということに対しては、それ以上にたくさん苦労もしてきました。環境も違うし、文化も違うし、そういうのも含めて、何が起きてもブレない考えが身についてきたのかなと思います。そういう過去を、これはできたな、あれができたな、とあまり振り返らないタイプなので。

 正直、今もウエスカのため絶対に残留するという気持ちで常にプレーしています。この先どうなるかとか、昔はこうだったのになとかはあまり考えないタイプですね。それよりもトップリーグで、ヨーロッパでやり続ける。それが今の自分の夢ですね。その後、Jリーグで育った選手で、Jリーグを誇りに思っているので、いずれは帰りたいなとも思っています。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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