羽生結弦が乗り越えた“どん底の日々” 26歳の王者が、後輩たちに残したもの

沢田聡子

「羽生選手のジャンプは教科書」15歳の憧れ

後輩たちの憧れの視線を受けながら完全優勝を成し遂げた羽生結弦 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 全日本選手権男子シングルのショートプログラムで13位になり、フリーは前半グループ最終の滑走者として演技した15歳の三浦佳生は、初の大舞台で4回転を3本決め、総合7位まで順位を上げた。ミックスゾーンで「この舞台で4回転を3つそろえられたことはすごくうれしいですし、存在をちょっとでも残せたんじゃないかな」と話した三浦は、羽生結弦への憧れを熱く語っている。

「昨日(のショートで)羽生選手の演技を見て、常に集中している。あれを見習おうと思いました。いやあ、もう本当に『すごいなあ』って。改めて(羽生の)ファンです、僕は」

「羽生選手のジャンプは高さ・幅・流れ全部、ピカイチで、本当にナンバー1だと思っている。ザ・教科書、お手本のようなジャンプです」(三浦)

 三浦がフリーで爆発的な演技をすることができたのは、羽生がいる全日本だったからかもしれない。

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 また、ショートで2位につけ総合3位になった17歳の鍵山優真は、記者会見で追う存在としての宇野と羽生について触れている。

「僕はこの全日本選手権を通して、『やっぱり羽生選手や宇野選手の存在はまだまだ遠いな』というのをすごく実感して」

「羽生選手、宇野選手は、最終目標。『来年、次に戦う時までにどれぐらい近づけていけるか』ということを、またもっと練習して、確認できればいいかなと思っています。この全日本選手権でいろいろな人たちと一緒に滑ることができてすごく楽しかったし、自分にとってもすごくいい刺激になったので、この試合を練習でも生かしていきたい」(鍵山)

宇野が確認した原点「僕の本当の目標はゆづ君」

宇野昌磨「改めて『僕の本当の目標はゆづ君なんだな』って思いました」 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 ディフェンディングチャンピオンとして今大会に臨んだ23歳の宇野昌磨は、2位に終わったにもかかわらず、終始屈託のない笑顔をみせていた。

「久々にゆづ君と同じ試合に出て、『僕の目標がここにあったんだな』ということを感じられた」

「自分の目標となる選手がすごく偉大な選手だということを、久々の大会に出て改めて痛感して。『うれしかった』というのは失礼かもしれませんけれども、『また頑張ろう』と思いました」(宇野)

 銀メダリストとして臨んだ記者会見でも、宇野はこの全日本で得られた充実感について語っている。

「本当に、この大会に出られてよかったなと思っています。単純にうれしかったですし、そして楽しかったですし、また目標が改めて見つかり、今までで一番『大会に出てよかったな』って実感できる試合でした」

「もちろん、スケートは楽しみたいです。ただ、やっぱり僕は負けず嫌いですし、目標を持って練習することにすごく充実感を得ながら毎日練習していました。それがなかなかない日々が続いていた中で、羽生選手という存在を今回、目の当たりにした。『僕と羽生選手の差は、自分が思っていたより離れているんだな』ということを改めて自覚できたことに、すごく失礼かもしれませんけれども、目標というものを再確認できました」(宇野)

 宇野は自分のフリーを滑り終えた後、羽生のフリーを見ている。

「改めて『僕の本当の目標はゆづ君なんだな』って思いましたし、『マジですげえな』って思いながら今日(の羽生のフリーを)見させていただいていましたし、本当にうれしかったです」(宇野)

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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