俳優・和田正人が選ぶ箱根ベストオーダー 「エース区間は渡辺康幸さんに託したい」

田中葵

【写真提供:ワタナベエンターテインメント】

 古豪・日本大の選手として、第76回大会(2000年)、第78回大会(02年)と2度にわたって箱根駅伝に出場。現役を引退した今もなお、箱根駅伝に熱視線を送り続ける俳優の和田正人さんに、第72回(1996年)大会以降に出場した名選手からドリームチームを作ってもらった。また、「今、思い出しても涙が出そうになる」という、和田さんの選手生活に大きな影響を与えた箱根駅伝の名勝負も堪能してほしい。

1区・佐藤悠基(東海大)

東海大・佐藤悠基が打ち立てた1区の区間記録は、今でも破られていない 【写真:アフロスポーツ】

同区間での実績
第83回(2007年)1時間1分06秒(区間新記録)


 誰もが認める超実力派選手です。彼ほど1区で独走(区間2位に4分1秒差)した選手はおらず、類を見ないレベルの走りでした。あまりにもハイスピード過ぎて、終盤脚がつりそうになって、何度も足をたたきながら走っていたんですが、そのときのペースが2分50秒くらいなんですよ。ものすごい選手が出てきたなと、強烈な印象を受けました。しかも、箱根駅伝が高速化している今でも、まだ区間記録を保持している。彼にかなう選手はいないと思います。

2区・渡辺康幸(早稲田大)

「昔活躍した選手が最新のシューズを履いたらどうなるか」を考えるという和田さん。早稲田大・渡辺康幸は最もイメージが膨らむ選手だという 【写真:築田純/アフロスポーツ】

同区間での実績
第71回(1995年)1時間6分48秒(区間新記録、当時)
第72回(1996年)1時間6分54秒(区間賞)


 もはや選んだ理由の説明はいらないでしょう(笑)。日本人で初めて1時間6分台をマークしたのが渡辺さんです。僕が現役時代の1999年に三代直樹さん(順天堂大)がこの記録を抜き、2019年に塩尻和也選手(順天堂大)、そして2020年、相澤晃選手(東洋大)がさらに記録を更新しましたが、やはり渡辺さんの偉大さは別格だと思います。

 最近、「昔の名選手が最新のシューズを履いたら、どんな記録をマークするのか?」と考えることがあるんですが、そのイメージを最も膨らませたくなるのが渡辺さんです。ポテンシャルの高さは群を抜いていたと思います。

3区・竹澤健介(早稲田大)

早稲田大・竹澤健介は「3区の価値を変えた選手」と熱く話す 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

同区間での実績
第84回(2008年)1時間3分32秒(区間賞)
第85回(2009年)1時間1分40秒(区間新記録、当時)


 実業団に行ってからは故障などもあって苦しんだ印象でしたが、学生時代の“ワセダの竹澤”は別格でした。3区といえば昔は1年生で力のある選手が起用される傾向にあり、最終的に故障で走ることはできませんでしたが、僕も1年時はこの区間にエントリーされました。

 最近、3区は勝負のポイントとなって、1〜2区の遅れを取り戻す区間になっていますね。アドバンテージを作る区間として注目されるようになったのは、彼が走った影響が大きい。彼は3区の持つ意味や価値を変えてしまったんじゃないかと思います。

4区・藤田敦史(駒澤大)

長距離では学生界のエースとして君臨していた駒澤大・藤田敦史(右) 【写真は共同】

同区間での実績
第75回(1999年)1時間0分56秒(区間新記録、当時)


 当時の藤田さんは学生長距離界の絶対的なエースで、特にロードでは誰もかなわない印象でした。この大会で同じ区間を走っていた僕の母校・日大の塩見雄介さんもかなり良い走り(1時間4分06秒)をしたんですが、最終的には3分以上差をつけられてしまった。だからこそ、余計にすごさが際立つんです。

 藤田さんのタイムは、第82回(2006年)から区間距離が18.5キロになったことで、参考記録になってしまいましたが、第93回(2017年)からまた20.9キロに戻ったことで、またスポットを浴びるようになりましたね。ここ2大会で相澤選手、吉田祐也選手(青山学院大)が藤田さんの記録を破りましたが、20年以上前の記録がようやく塗り替えられたことを考えても、藤田さんの強さは圧倒的だったと思います。

5区・柏原竜二(東洋大)

「山の神」と呼ばれる選手を生み出してきた5区。中でも東洋大・柏原竜二が残したインパクトは絶大だ 【写真:アフロスポーツ】

同区間での実績
第85回(2009年)1時間17分18秒(区間新記録、当時)
第86回(2010年)1時間17分08秒(区間新記録、当時)
第87回(2011年)1時間17分53秒(区間賞)
第88回(2012年)1時間16分39秒(区間新記録、当時)


 10区間の中で唯一、何の迷いもなく選びました。山のスペシャリストはこれまでもたくさんいて、“山の神”ブームを作った最大の貢献者は今井正人選手(順天堂大)で間違いないと思います。このフレーズができたことで、箱根駅伝の注目度は一気に高まりました。

 ただ、3人いる山の神から1人だけ選べと言われたら、柏原さんしかいないと思います。神野大地選手(青山学院大)もすごかったけど、やはり4年連続区間賞、うち3回が区間新記録なんていう選手は他にいません。別格です。

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著者プロフィール

1980年10月5日長野県生まれ。高校・大学は陸上部所属(長距離・競歩)。東海大学在学中よりフリーライターとして陸上競技、ウインタースポーツなど、アマチュアスポーツを中心に取材する傍ら、取材日以外は自らもサブスリーランナーとして、大手スポーツショップでランニング用品の接客を行う顔も持つ。現在は主に「月刊陸上競技」に寄稿。

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