俳優・和田正人が選ぶ箱根ベストオーダー 「エース区間は渡辺康幸さんに託したい」
最も思い出に残る名勝負は「法政大・大村一さんの…」
和田さんが「今でも涙が出そうになる」と語る、第77回での山上り決戦。法政大・大村(右)は持ちタイムこそ2人に遅れをとるが、最後まで気力で競り合った 【写真は共同】
大会記録が今年の青山学院大の10時間45分23秒ですよね。それなら10時間29分で。単純に1区間1分30秒くらい縮まる計算です。それくらい夢があるチームです。
――和田さんの選んだメンバーで「金栗四三杯」を受賞するのは誰だと思いますか?
渡辺康幸さんです。こういう話をすると、渡辺さんから「和田君、ありがとう」ってメールがくるんです(笑)。
――最後に、和田さんの最も印象に残っている、箱根駅伝の名勝負を教えてください。
第77回(2001年)の5区です。3年生だった僕は故障で箱根駅伝に出場できず、悔しい思いでレースを寮で見ていました。この年は出雲、全日本を制した順天堂大が箱根の優勝候補でしたが、4区まで法政大がトップで、29秒差で順天堂大、さらに40秒差で中央大が追う展開でした。
順天堂大は“順大クインテット”の1人・奥田真一郎さん、中央大は2000年に5区で区間賞を獲った藤原正和さん(現・駅伝監督)。一方、法政大は1万メートルの持ちタイムが30分台と、5区の中で最も遅かった大村一さん。大方の予想は順天堂大と中央大の往路優勝争いでしたが、フタを開けて見ると大村さんの走りが快調で、中盤まで全く差が縮まることがなかった。「まさか、このまま逃げ切るのか……」。次第に期待感が高まってきました。
国道1号線の最高地点がある長い直線で3人が縦並びの状態になり、少しずつ差が詰まってきた。まるで突風のような強烈な風が吹き荒れる中、下りで奥田さんがついに大村さんを捉えたと思った瞬間、大村さんがスパートをかけて引き離すんです。度肝を抜かれたし、奥田さん、藤原さんがいつまでも抜けない展開に震えました。
残り2キロくらいのところで3選手が並び、さすがの大村さんも力尽き、最後は藤原さんが競り勝って中央大が往路優勝。順天堂大が8秒差で続きました。結局、大村さんはトップと55秒も差をつけられてしまった。本当に力尽きるまで走ったんだと思います。それなのに、まるで短距離選手のように胸を突き出しながらゴールするんです。今思い出しても涙が出そうになります。心を揺さぶられたし、僕も来年は絶対に走ってやろうと、大村さんの走りに勇気をもらいました。
(企画構成:株式会社スリーライト)