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やべっちが見抜く解説・中山雅史の本質
相方・岡村さんとゴンさんの共通点は…
『やべっちスタジアム』番組MC矢部浩之さん(左)と豪華解説陣のクロストーク。第2回は中山雅史さんが登場
『やべっちスタジアム』番組MC矢部浩之さん(左)と豪華解説陣のクロストーク。第2回は中山雅史さんが登場【浦正弘】

 連載企画『やべっちF.C.の功績 新番組やべっちスタジアムの全貌』の延長戦としてお送りしている豪華解説陣と、番組MC矢部浩之さんのクロストーク。第1回の名波浩さんに続いて登場するのは、中山雅史さんだ。ルーティンワークに徹する中山さんと、その個性を引き立てる矢部さんの関係性は、まるでストライカーと司令塔のようだ。

解説のスタイルも「ゴンさんはFW」

中山さんの解説者としてのスタイルや本質を的確に指摘していく矢部さん。その観察眼の鋭さは、さすがのひと言
中山さんの解説者としてのスタイルや本質を的確に指摘していく矢部さん。その観察眼の鋭さは、さすがのひと言【浦正弘】

『やべっちスタジアム』配信開始約2時間前、解説者と、スタッフが集まり、その日のハイライト映像の読み合わせが行われる。この日の解説を担当する中山雅史さんは、パソコンの前に座り、右手に持った赤ペンを走らせる。一言一句、台本にメモに残し、それを映像に合わせて読み込んでいく。


「もう一回だけいいかな」


 自分が納得するまで、それを何度も繰り返す。最後は、ゴンさんの「困ったら最後はアーッて言うから」と軽口が出たところで、この日の読み合わせは終了した。スタッフたちは、「解説者の皆さんは三者三様で、この打ち合わせひとつとっても個性が出る。中山さんはああやってメモに残すんですけど、本番は全く違うことを言ったりするから面白いんですよ」と言う。その話を聞くと、番組MCの矢部浩之さんは、普段見せない点取り屋の意外な一面をこう語り始めた。


矢部「一緒に仕事をやるようになってから分かった感じもありました。ゴンさんのスタイルですよね。実は緊張感を常に持ってはります。これって生放送では見せないんですけど」


中山「すごく緊張していますからね」


矢部「スタジオで座っている仕事やからあまり気づかれないですけど、ゴンさんっていつも座りながら前のめりですよね」


中山「そうですね(笑)」


矢部「名波(浩)、中田浩二とはまた違います。ゴンさんはFWやなって思うんですよ、その前のめりな感じが」


中山「あらためて聞くと、確かにそうだなって思います。確かに、こう(背もたれに背中をくっつける)じゃなくてこうなってる(前で手を組んでいる)なって思います」


矢部「でも、それは“準備”ですよね。ゴンさんも気づいていると思うんですよ。ポジションによって解説の仕方が違うのは。最後、ワーッて言って終わるときがある。あれって、タッチライン際すれすれまでボールを追いかけるゴンさんそのものなんですよね」


中山「中盤や、DF出身の選手ってゆったりとした自分のペースがあるんですよ。僕が早口なのも僕のペースかもしれない。ただ、何でもかんでも詰め込もうとする(苦笑)。それで失敗する。それを矢部さんがフォローしてくれる。怖いんですよね、早く言わないと、尺に間に合わないんじゃないかって」

ストライカーはお笑いのボケに似てる!?

事前にメモを取っておかないと不安だという中山さん。だが、本番になれば、メモとはまったく異なることを言う大胆さも備える
事前にメモを取っておかないと不安だという中山さん。だが、本番になれば、メモとはまったく異なることを言う大胆さも備える【浦正弘】

 矢部さんが語った、準備――。そこに、ストライカーの矜持(きょうじ)がにじむ。数々の印象的なゴールが、なぜ生まれてきたのかも、だ。日本を代表する点取り屋には、日々、積み重ねてきたプロセスがあった。ピッチに立つまでに、やり残したことをなくしていく。「自分はここまでに最善を尽くしたのか?」。その自問自答の毎日を過ごしてきた。ゴンさんは「それは当たり前のこと」と言い、こう続けた。


「ピッチに立つときに、『ああしておけば良かった、こうしておけば良かった』という気持ちを持って入ったら戦えない。当然、足りない部分、やりきれなかった部分はありますよ。でも、やれるところまでやって、そこに立たないと、結果は得られない。いろいろなことを経験した中で、試合のピッチに立つためには、こうしないといけないと、いつも考えながらやってきた。例えば、名波と一緒にVTRを見ながら打ち合わせしていても、名波は何も書かないんです。それはコメントが全部構築できているんですよね。でも、僕は一応書いておかないと不安なんです。ストライカーらしくないですよね、そんなチマチマしているヤツ(苦笑)」


 ただし、スタッフの言う通り、本番ではそのメモをコメント前に確認するだけで、解説中はハイライト映像から視線を外さない。準備は本番前ですべて終える。それは、不安をぬぐい去るゴンさん流の作業のひとつなのかもしれない。


 思い返せば、そのプレースタイルも、まさにそうだった。相手選手の足が伸びてくるゴール前で、顔面を蹴られたことや、激突したことは何度もあったはずだ。それでも体を投げ出し、ボールに食らいつくことをやめない。ゴンさんは、「クレイジーと言えば、クレイジーかもしれない」と言って笑うが、間髪入れずに「だって」と、言葉を重ねる。


「怖いよりも、ボールに先に行き着くためには何が一番いいかを考えたときに、そういう(体を投げだす)結論に達する。怖いと思ったら行けないですよ。恐怖があったら体が引けるから、その分、ケガにつながってしまう。人がやらないことをやる。人が行かないところに行くからピッチに立たせてもらっている。それをやらない自分がいても何ら戦力にならないという考えがあるから」


 その言葉を聞き、隣でうなずく矢部さんに「ストライカーってどこかお笑いのボケに似てますね」と投げかけてみた。すると、矢部さんは「僕みたいなタイプからしたら、そうですね。嫌なときも、滑ると分かっていてもボケは果敢に前に出るんですよね」と言う。そこにゴンさんが食い気味でかぶせる。


「やらずに後悔するよりも、やって後悔した方がいい。躊躇(ちゅうちょ)して『ああしておけば良かった。こうしておけば良かった』は想像でしかないし、負け惜しみでしかない。行ってできなかったことを改善していく。削る作業の方が楽なんですよ。足していく作業の方が大変なんです」

馬場康平

1981年10月18日、香川県出身。地域新聞の編集部勤務を経て、2006年からフリーに。現在、『東京中日スポーツ』等でFC東京担当記者として取材活動を行う。2019年に『素直 石川直宏』を上梓した。

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