連載:『やべっちF.C.』の功績 新番組『やべっちスタジアム』の全貌

惜しまれつつ終了した「やべっちF.C.」 根底にあった“他にない”と“ピュアな愛”

馬場康平
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18年間、MCを務めたナインティナインの矢部浩之さん。最後まで自身もプレーヤーであることと選手へのリスペクトを貫いた 【(C)テレビ朝日】

 2002年4月からテレビ朝日で放送が始まった『日本サッカー応援宣言 やべっちF.C.』。今年9月の番組終了は、サッカー界を揺るがす衝撃のニュースだったと言っていい。ファン、サポーターのみならず、選手たちからも惜しむ声が発せられ、最終回ではJリーグの村井満チェアマン自ら花束を渡しにスタジオを訪れた。『やべっちF.C.』はなぜ、人々を魅了したのか。その理由を探るとともに、その功績をあらためて振り返る。

あかん、辞めたくない…

 週末に、何かが足りない――。そう思うようになって、2カ月が過ぎようとしている。

 今年9月27日を最後に、『やべっちF.C.』が約18年半の長きに渡った歴史の幕を閉じた。やべっち不足を感じるサッカーファンは、僕ひとりではないはずだ。

 番組MCを務めた矢部浩之さんは、最終回のエンディングで「あかん、辞めたくない」と言い、こう続けた。

「こういういいVTRを見せられたらいろいろ思い出しますし。これから先も進化した日本サッカーをやっぱり応援したいと思いました」

 その後、番組出演者が思い思いの最後の言葉を語り、村井満チェアマンから花束が手渡される。そして、矢部さんは、ラストメッセージを口にした。

「本当に、スタッフの力と、解説者の力と、アナウンサーの人たちにも助けていただきました。サポーターの皆さん、本当に18年半ありがとうございました。『やべっちF.C.』としての誇り、魂みたいなものは皆さんの記憶の中に置いてきました。あと、僕はサッカーを小学校からやってきて教えられたことは、攻守の切り替えが大事だと。なので、次に進んでいきたい。そして、サポーター、選手、クラブチームのスタッフ、サッカー協会のみなさま、本当にありがとうございます。みなさん、本当に感謝しています」

 僕は幸運なことに、この長寿番組の収録に何度かお邪魔する機会があった。密着取材できたことは、今でもいい思い出だ。その取材で感じたのは出演者、現場スタッフが底抜けにサッカーが好きだということだった。シンプルで明快な答えがあって、それをどう表現するか。それに関わる全員がいつも頭を悩ませていた。

挫折したからこそプロをリスペクト

15年10月にはFC東京時代の太田宏介と中島翔哉が登場。「サッカーバレー」をしながら「古今東西ゲーム」を行うオリジナル企画で矢部さんと対戦した 【(C)テレビ朝日】

 ただし、小難しい話は抜きだ。企画会議ひとつとっても、笑いが絶えず、硬派すぎず、ゆるすぎず、それまでのスポーツ番組の慣習にとらわれず、分かりやすく、面白く伝えることに彼らはこだわっていた。

 そうして生まれた企画を、矢部さんをはじめ全員が楽しんでいた。それは、サッカー部のノリそのものだったと思う。個人的には、試合のハイライトが流れているときの矢部さんが挟む何気ない一言が好きだった。(ちょっと、マニアック過ぎるけど)。
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著者プロフィール

1981年10月18日、香川県出身。地域新聞の編集部勤務を経て、2006年からフリーに。現在、『東京中日スポーツ』等でFC東京担当記者として取材活動を行う。2019年に『素直 石川直宏』を上梓した。

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