バイエルンを3冠に導いた“奇跡の人” ハンジ・フリック監督、その栄光の物語
タイトルを獲得して選手に胴上げされるフリック監督。その信頼は揺るぎない 【Getty Images】
日本国内のみならず、彼の母国ドイツでも知名度の低かったフリック監督とは、どんな指揮官なのか。そこで今回は、最も近くで彼の仕事を見てきたミュンヘンの地元番記者が、3冠を達成した立役者の人物像を綴(つづ)る――。
レジェンドへの仲間入り
それは「優勝請負人」の異名を持つウド・ラテック、日本サッカー界初の外国人コーチで「日本サッカーの父」とも称されるデットマール・クラマー、2度にわたってクラブを指揮したオットマール・ヒッツフェルト、そしてクラブが危機に陥る度に救世主となったユップ・ハインケス。彼らはバイエルンをチャンピオンスリーグ(CL/前身のチャンピオンズカップも含む)制覇に導いた4人のレジェンドたちだ。フリックはこのたび、こうした偉大な監督たちの仲間入りを果たした。
9月初旬、フリックはビッグイヤー(優勝トロフィー)をアリアンツ・アレーナ内のクラブミュージアムに設営されたガラスのショーケースに並べた。その数週間前には、すでにリーグ優勝のマイスターシャーレとDFBポカール(ドイツカップ)の優勝カップをそこに飾っていた。彼が2019-20シーズンのドイツ年間最優秀監督に選ばれたのは本当に興味深い話だ。わずか10カ月の期間にゼロから3冠をもたらし、自身はアシスタントコーチの身から一転して頂上まで上り詰めたのだから。これはまるで「ハンジの幸福」とでも呼べそうなメルヘンではないか。
8月23日(現地時間)のCL決勝でパリ・サンジェルマンに1-0で勝利した後、真夜中に行われたポルトガル・リスボンでの晩餐会(ばんさんかい)で舞台に立ったバイエルンのカール・ハインツ・ルンメニゲCEOは、「君はいつも本当に謙虚だよね」と言いながらフリックを抱きしめ、「君は驚異的な仕事をした。誇りにしていい。クラブの皆を代表して、私がありがとうと言いたい」と感謝の念を示した。選手たちもそれに続いて称賛の言葉を述べたが、そのときにフリックは言った。
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