連載:解説者と実況アナ、野球&サッカー中継を彩る一流の“伝え手”たち

“ゴールデンコンビ”の呼び声高い 戸田和幸&下田アナが語るあの一戦

飯尾篤史
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「ゴールデンコンビ」と呼ばれる戸田和幸氏(左)と下田恒幸アナ(右)。両者とも万全の準備で臨むため、互いに緊張するという 【スポーツナビ】

 スポーツナビで実施した「好きな実況&解説者」の人気投票のサッカー編で1位に輝いたのが、解説者の戸田和幸氏と実況の下田恒幸アナウンサーだった。それぞれにファンが多いだけでなく、アンケートではふたりを「ゴールデンコンビ」と称する声も多かった。バイエルンとパリ・サンジェルマンが顔を合わせた2019-20シーズンのチャンピオンズリーグ決勝の中継も担当したふたりに、互いの印象やゴールデンコンビを呼ばれるゆえん、ふたりで担当して最も印象に残っているゲームなどについて伺った。

「僕の1位は眉唾もの(笑)」(下田)

――解説者と実況者の人気投票を行いまして、解説者の1位が戸田さん、実況者の1位が下田さんでした。

戸田和幸(以下戸田、敬称略) もともと僕は1位になるようなスタイルではないと思うんです。クセが強くて、こだわりがあって、マニアックな部類に入ると思いますから(笑)。ただ、NHKやTBSとも仕事をさせていただいて、どういう人が見ているのか、ターゲットを意識してしゃべってきましたし、メディアによって使う用語はもちろん、提供する情報の種類と深さも変えることを意識してきました。それが結果につながってくれたのかもしれませんね。

 解説の仕事は、自己満足でやっているわけではないですし、何があってもプレーしている選手とチームを作っている監督に失礼があってはならない。できる限りの準備と想像、これがあれば仮に僕の言うことがズレてしまったとしても、自分なりに最善を尽くした結果だということは、伝わってくれるのではないかと思うんです。

 ヨーロッパのトップレベルになると、集団としてのアクションのレベルが半端じゃないですから、当然中継の中では伝え切れないことがたくさんあります。だからこそ、いつも頭の中をゴチャゴチャさせながら、何を今、話すべきかを考え続けています。アンケートで一番上に置いてもらえたのは、そうやって見る人のことを自分なりにイメージしてやってきたからかな、と感じます。

下田常幸(以下下田、敬称略) まず僕から伝えておきたいのは、アンケートで戸田くんと僕が1位になったと言っても、質がまったく違うと思っています。戸田くんの解説は、サッカーを深く見たいという人の心に訴えかけるものがある。だから、優秀な解説者がたくさんいるなかで、こういう結果になったのも分かるんです。一方、僕の場合は、実況うんぬんというよりも、突出した特徴がひとり歩きして、それを面白がっている人が多いだけじゃないかと思います。レバンドフスキとか、ニャブリとか。

――「ニャブリ、ニャブリ、ニャブリ」ですね(笑)。

下田 他のアナウンサーの皆さんもゴール前では同じように「レバンドフスキ!」って言っているんですよ。でも、僕の音の質感みたいなものを面白がってくれる人が口コミでつながって、広がっていったんじゃないかと。僕に票を入れてくれた方々は、実況の細かい部分より、キャラクターに目が行っている方が大半だと思いますよ。だから、僕の1位は眉唾ものだと思っています(笑)。あと、同じ数だけアンチの方もいるはずなので、そこは真摯(しんし)に、嫌がっている人もいることを受け止めながら。でも、こだわりはこだわりだし、そこは曲げずにやっていきたいな、と思っています。
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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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