連載:ラ・リーガセミナー「#TodayWePlay」

C大阪ロティーナ監督がラ・リーガを展望「誰もがクボに期待している」

工藤拓

久保建英は新天地ビジャレアルでどんな活躍を見せてくれるのか。ロティーナ監督も期待している 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 ラ・リーガがスペイン政府の文化機関インスティトゥト・セルバンテス東京と共同で開催するオンラインセミナー「#TodayWePlay」。9月10日に行われた最終回では、司会を務めるサッカージャーナリストの小澤一郎氏がラ・リーガ・シンガポールオフィスのイバン・コディーナ氏、そして特別ゲストとして迎えたセレッソ大阪のミゲル・アンヘル・ロティーナ監督に2020-21シーズンの展望などを聞いた。

 ここでは、その中からロティーナ監督のコメントを抜粋して紹介したい。

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バルサが驚かせてくれるかもしれない

――リオネル・メッシがバルセロナ残留を明言しましたが、彼の退団騒動をどう見ていましたか?

 スペインフットボールにとっては良いことだったと言うべきでしょう。メッシがプレミアリーグに移籍していたら、ラ・リーガは大打撃を受けていたと思います。クリスティアーノ・ロナウドのレアル・マドリー退団時もそうでした。私はトップレベルの選手たちにはラ・リーガでプレーしてもらいたい。もちろん、メッシもそのひとりです。すべては昨季終盤にリーグ優勝を逃し、チャンピオンズリーグ(CL)をショッキングな敗退で終えた影響だったと思います。あのような形で残ることになり、果たして今季のメッシがどれだけチームに貢献するのか。新シーズンのバルサにおいて、そこは誰もが気になっているところでしょう。

――今週末に開幕が迫ったラ・リーガについて、どのように展望していますか?

 難しいシーズンになるでしょう。通常ならいくつものプレシーズンマッチを経て、スーペルコパ・デ・エスパーニャが行われた後に開幕を迎えますが、今季はプレシーズンが短く、練習試合も少なかった。注目すべき点のひとつは長く続いてきた時代を終え、バルサがどう変わるのか。他にもセビージャは良い形で昨季を終え、レアル・ソシエダは素晴らしいフットボールを実践していました。ビジャレアルも再びCL出場権を獲得すべく、クボ(久保建英)をはじめ良い選手を補強しました。不透明な要素が多く、どうなるのか気になるだけに、早く始まってほしいですね。

――バルサの現状を考えると、レアル・マドリー有利と言えるのでしょうか?

 どうでしょうね。バルサが我々を驚かせてくれるかもしれませんし、アトレティコ(・マドリー)の存在も忘れてはいけません。ラ・リーガは何年も前からバルセロナ、レアル・マドリー、アトレティコの3強がタイトルを争ってきましたが、今季はそこにセビージャが加わる可能性もあると思っています。

 レアル・マドリーはほとんど補強しておらず、レアル・ソシエダで活躍した(マルティン・)ウーデゴーが戻ったくらいです。何より(エデン・)アザール。昨季はケガに苦しみましたが、彼が素晴らしい選手であることは誰もが知っています。彼ほどの選手が40試合プレーするのと15試合しかプレーできないシーズンでは、スペクタクルの観点でも大きな違いがあります。バルサの(ウスマン・)デンベレにも同じことが言えます。その点は始まってみなければ分からないことです。

クボが再び急成長を遂げたら素晴らしい

ロティーナ監督はかつてビジャレアルを率いた経験を持つ。「現在の成功すべてがふさわしい」と評価する 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

――今季は3人の日本人選手が1部でプレーします。

 イヌイ(乾貴士)はもうスペインに定着している選手です。彼はベティスやアラベスでの経験を経てエイバルに戻ってきた。オカザキ(岡崎慎司)も良い選手ですね。ベテランで先は短いが、レスターでプレミア王者となった経験を保ち、度胸があり得点力が高い。

 誰もが期待しているのはクボでしょう。彼は昨季を通して急成長しました。マジョルカでは加入当初こそ出番は少なかったが、良い形でシーズンを終えた。出場時間だけでなく、プレーの質においてもね。他とは異なる特徴を持った選手で、まだとても若い。30歳を過ぎた選手は徐々に衰えていくが、18〜20歳の若手選手は毎年のように急成長していきます。残留を目指すだけでなく、ヨーロッパ行きを目指すようなチームでプレーする今季、再びクボが急成長を遂げるようであれば素晴らしいことです。彼のプレーはスペクタクルで、違いを作れる選手。彼のような選手はあらゆるファンを楽しませてくれます。

――ロティーナ監督はビジャレアルを率いた経験があります。どんなクラブでしょうか?

 スペインでは他と少し異なる、一家族によって経営されているクラブです。会長の父も役員の息子もフットボールが大好きで、その性格がクラブに出ています。彼らが小さな街クラブを買い取り、成長させるために大金を投じたことは大きな注目を集めました。それもすべてフットボールが大好きだからできたことです。

 ある土曜日には朝9時からカデテ(15〜16歳)やインファンティル(13〜14歳)、7人制カテゴリーなどの試合を見て、午後4時には80キロも離れた場所までフベニール(17〜19歳)の試合を見に行く。それを日曜も繰り返す。彼らはトップチームやBチームだけでなく、全カテゴリーのチームの試合に足を運んでいました。父も息子も、特に父の方が大のフットボール好きでした。彼らがチームに愛情を注ぐのを目の当たりにしてきたので、現在の成功すべてがふさわしいものだと思っています。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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