井納翔一、DeNAベイスターズの歴史と共に 34歳はベテランの役割を「求めていない」
今回はベイスターズ投手陣の生え抜き最年長・井納翔一に話を聞いた 【(C)YDB】
2016年に三浦大輔が引退。翌年に久保康友が退団して以来、確かにこのチームでは“ベテラン”という言葉がしっくり当てはまる選手がいないように思える。現在のチーム最年長は36歳の陽気な助っ人ホセ・ロペス。続いて35歳、流浪のサムライリリーバー藤岡好明。そしてその下に、投打の生え抜き最年長・石川雄洋と井納翔一がいる構成だ。
「自分が生え抜き最年長だといわれても、何をしていいかわかんないですよ。三浦さんみたいにひとりで黙々と練習する姿を、後輩たちに背中で見せるなんてことは僕にはできませんしね。ホラ、僕は自分でも変わっているっていうことを自覚していますから(笑)。悩んでいる子がいたら『そんなに考え込む必要はないよ』といってあげるぐらいですかね」
これは2018年に先発陣でチーム最年長となった井納に聞いた言葉である。
あれから2年。キャリアを重ね、急な中継ぎ転向も、右ひじの手術も経験し、語るべき背中が大きくなったであろう34歳にはどんな変化があったのだろうか。
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若い子がやりやすい環境を作る
井納はキッパリと、旧来の“ベテラン”が持つイメージや責任感、存在感に対して「自分は違う」と言い切った。それはまだベテランと呼ぶには若いこともあるのだろうが、それ以上に、年齢どうこうで役割を決められることへの違和感のような意識が強く感じられる。
「もちろん求められれば、これまでやってきたことを伝えはしますよ。でも、34歳になったからベテラン的な役割を果たさなければいけない……ってわけじゃない。僕がどんなに良いからと伝えても、人によって合う、合わないはあります。それよりも意識するのは、若い子がやりやすい環境を作ることですね。うちのチームは“ファミリー”と言いますけど、一線を越えなければ敬語もムリに使わなくていいし、年上の人間として、若い子がやりづらいと感じるような雰囲気だけは絶対に作らないようにしています」
井納は後輩たちからの人気が高い。年配の方や子供のファンからの人気もすごく高い。世間的には、時折見せる風変わりな発言や行動から、宇宙人的なニュアンスで語られることが多いのだが、過去の彼の言動を見直してみると、端々からやさしさがにじむ。
時に20代の後輩たちと同年代のようにふざけあい、年下の石田健大や平田真吾からたまに「翔ちゃん」と気安く呼ばれても、まったく気にする素振りもない。年上でも臆することなく話しかけやすい環境を作るなかで、後輩たちが伸び伸び自分の力を発揮してくれればと思う。
「一線を越えなければ、ですよ。何度も言いますけど(笑)」