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エルチェ女性幹部が狙うエイバルの再現 昨年は断念、今年こそ日本人選手の獲得を

工藤拓
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エルチェは日本人選手への興味を隠そうとしない。近い将来、白と緑のユニホームに袖を通す日本人選手は誕生するだろうか 【Getty Images】

 クラブ創立97年の歴史を誇る古豪エルチェだが、近年は深刻な財政難に陥り、経営陣の交代が頻発するなど、混迷が続いていた。そんなクラブの経営再建を託されたのが、エイバルでラ・リーガ史上初の女性CEOを務めたパトリシア・ロドリゲス氏だ。昨年5月からエルチェのゼネラルディレクターに就任し、財政の安定化、リブランディング、国際戦略など多方面で奔走する。そして、かつてエイバルで成功したように、ロドリゲス氏はエルチェでもピッチ内外での起爆剤として日本人選手の獲得を切望している。(取材日:7月31日)

マラドーナ監督の招へいも噂されたが…

――ラ・リーガ史上初の女性CEOとして活躍したエイバルを退団した後、数あるオファーの中からエルチェを選んだ理由を教えてください。

 他にも選択肢はありましたが、エルチェを選んだのは360度すべての方向からラ・リーガで得られる経験を積みたかったからです。エイバルはとても小さな町にあるクラブで、スタジアムも小さいですが、1部に所属し、財政は良好です。一方でエルチェはより大きな町にあり、より大きなスタジアムを持っていますが、財政難が続いており、2部に属しています。多数の株主で構成されるエイバルに対し、エルチェは単独のオーナーが経営している点も異なります。全く異なる2つのクラブで働くことにより、より多くの知識と経験を得られると考えたわけです。

――問題山積みのクラブの方が、建て直しがいがありますしね。

 その通り。私は挑戦することが好きなのです。言葉にできないほど愛着があったエイバルを辞めたのもそのためで、新たな挑戦、それも極めて困難な挑戦を求めての決断でした。実際、エルチェには多くの困難が待ち受けており、この1年は本当に大変でした(苦笑)。元々クラブが抱えていた問題に加え、誰もが直面したパンデミックの影響も受けましたからね。それでも今季を通して良い仕事ができ、大きく前進できたと思っています。

――昨年12月に生じたクラブのオーナー変更も大きな出来事でした。

 そうですね。あれは全くの想定外でした。昨年6月にクラブにやってきた際、前オーナーと共に4年スパンでのプロジェクトに着手したわけですから。にもかかわらず、前オーナーは数カ月のうちに考えを変え、12月にクラブを売却しました。私が手掛けている新たなプロジェクトもすべて新オーナーの判断に委ねられたわけです。

――オーナー変更によりプロジェクトが頓挫する懸念もあったと思います。
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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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