古豪エルチェが挑む経営再建への道 大幅減収、ファン離れなど課題は山積み
近年低迷が続くエルチェだが、経営再建に取り組み、さまざまな施策を行っている 【Getty Images】
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そんな敏腕ディレクターが昨年5月、新たな挑戦の場としてエルチェを選んだことは驚きだった。
エルチェは23年で創立100周年を迎える古豪ながら、近年は深刻な経営難に苦しんできた。12-13シーズンに2部を制して25年ぶりの1部昇格を果たすも、2年後には税金や社会保険の滞納により2部への強制降格を強いられた。その後は5年間で3人のオーナーと4人の会長が入れ替わるカオス状態が続き、16-17シーズンには18年ぶりの3部降格も経験している。
ロドリゲス氏がフロント入りした今季も不安定な状況は続き、彼女を引き入れたオーナーのホセ・セプルクレ氏はほどなくクラブを手放すことを決断。昨年12月にはアルゼンチンの大物代理人クリスティアン・ブラガルニク氏が新オーナーとなった。
そのような状況下で経営再建に努めているロドリゲス氏の苦労は想像に余りあるが、講演ではどこまでもポジティブな視点でクラブ再建への取り組みについて語ってくれた。
冒頭でクラブの概要や歴史を紹介した後、ロドリゲス氏は自身が取り組んでいるプロジェクトについて次のように説明している。
「我々の使命はクラブのルーツに基づいた価値観を取り戻し、歴史を再構築することだと考えています。クラブ再生の基盤となるのは財政面、スポーツ面、社会面の3つ。我々のビジョンは利益を生み出し続ける持続可能な経営モデルを確立し、スポーツ面はもちろん、財政的にも社会的にも重要なクラブとなることです」
続いてロドリゲス氏は国内で10番目の収容力を誇る本拠地マルティネス・バレーロ、国内に30以上のペーニャ(ファンクラブ)を抱えるファンの存在に言及した後、自身のクラブ経営論を展開していった。
「私にとってプロフットボールクラブは常に2つの側面に分かれています。ひとつはスポーツクラブとしての側面。もうひとつは企業としての側面です。両者はお互いを理解し合い、最善の形で共生していく必要があります」
目標はトップチームの1部昇格と定着
本拠地マルティネス・バレーロの集客力は国内10番目を誇る。スタジアムに歓声が戻る日は来るだろうか 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
「企業としてはまだ十分にオーガナイズされているとは言えず、この1年はまさにその部分にフォーカスしてきました。具体的には収入源の多様化や新たなビジネスの展開に努めていますが、我々はそれらの取り組みのすべてにおいて革新的でありたいと考えています。例えば、市場における需要をいち早く察知し、他国のクラブが行っている取り組みやアイデアを我々に合った形で取り入れる。ファンの写真をプラスチックのパネルにプリントし、スタンドに並べるアイデアもそのひとつでした」
現在、クラブがスポーツ面で掲げる具体的な目標としては、トップチームの1部昇格と定着、女子チームの促進と1部昇格、アカデミーやジェニュイン(障害者)チームの発展などがある。
一方、企業としての課題は山積みだ。ロドリゲス氏がクラブ入りして第一に取り組んだのは、失われたブランドイメージの再構築、リブランディングだという。15年の2部降格、17年の3部降格は直接的に大幅な減収を招いただけでなく、ファンが離れていく原因にもなったからだ。
他にも各スポンサーとの関係性の再構築、財政の安定化、情報の透明化といった課題があるだけでなく、今後はコミュニケーションや広告分野のデジタル化が極めて重要になってくるという。
「デジタル分野の成長はすべてのベースとなっています。そのおかげでパンデミックによるリーグの中断期間もコンテンツを提供し、家にいながらクラブを身近に感じてもらうことで、SNSのフォロワー数を大幅に伸ばすこともできました」
もうひとつの重要な課題、クラブのグローバル化にも関わる日本市場について、ロドリゲス氏は次のように言及して講演を終えた。
「国内での取り組みと同様に、日本市場での活動も続けていくつもりです。すでに日本とはいくつかの関係を築いていますし、我々と日本は多くの価値観を共有していると考えているからです。例えば日本の人々が持つ逆境を乗り越える力は、15年に直面した経営危機を経て再生を図ろうとしている我々との共通点だと思います。我々も自分たちがどこへ向かっているのか忘れぬようクラブの歴史を振り返りながら、決して敗北を受け入れることなく、目標達成に向けて努力し続けたいと思います」
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