IDでもっと便利に新規取得

ログイン

ビジャレアルと日本の交流は18年前から
女性指導者、佐伯夕利子氏が架け橋に
育成に定評のあるビジャレアル。ラ・リーガで上位を争う強豪でありながら、育成クラブとしての地位も確立している
育成に定評のあるビジャレアル。ラ・リーガで上位を争う強豪でありながら、育成クラブとしての地位も確立している【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 ラ・リーガがスペイン政府の文化機関インスティトゥト・セルバンテス東京と共同で開催するオンラインセミナー「#TodayWePlay」。7月12日の第5回はビジャレアルの国際部門ディレクター、フアン・アントン・デ・サラス氏による講演が行われた。

スペイン屈指の育成クラブと評される

ビジャレアルの国際部門ディレクター、フアン・アントン・デ・サラス氏が講演
ビジャレアルの国際部門ディレクター、フアン・アントン・デ・サラス氏が講演【スポーツナビ】

「第一に、我々は育成のクラブです。ラ・リーガでは常にトップ10に入りながら上位進出を目指していますが、我々はそれ以上にコミュニティーを重視し、強いアカデミーを持つことで持続可能な経営モデルを実現しています」


 そんな言葉とともに始まったサラス氏の講演は、その大半が育成事業に関する話に終始していた。導入で彼はこう語っている。


「ビジャレアルのカンテラ(育成組織)はヨーロッパ及びスペインで最も堅実な育成機関と評されています。実際、昨年11月招集のスペイン代表には最多4選手が選ばれました。また全カテゴリーの世代別代表チームに選手を送り込んでいるのは我々とバルセロナだけです」


 1997年にビジャレアルのオーナーとなったフェルナンド・ロッチ会長は、健全経営を貫きながら育成クラブとしての基盤を固め、人口わずか5万人の町にある地域クラブをトップリーグで上位を争う強豪へと変貌させた。13年前からクラブで働いているというサラス氏は、クラブが掲げる育成理念を次のように説明している。


「これは日本の文化においても重要なことだと思うのですが、我々は努力する習慣を教え込むことを極めて重要視しています。我々は若者を育成するクラブです。若者は努力し、犠牲を払い、規律を守ることによってプロへの道が切り開かれることを理解する必要があります。同様に対戦相手へのリスペクト、謙虚さ、平等性、責任感といった価値観も教え込みます。


 それは若い選手が抱きかねない幻想を壊し、自身の成長ぶりを自覚させ、外の世界の現実を認識させたいからです。エリートクラブに所属する若い選手は、温室育ちの世間知らずばかりです。だから、彼らが選手としてのキャリアを終えたとき、初めて社会の現実を知ってショックを受けないように、若いうちからしっかり見識を広げておく必要があります。我々の育成モデルはそういったギャップを壊したいのです」

佐伯氏の仲介で鹿島学園と提携

スペインで指導者として活躍する佐伯夕利子さん。現在はビジャレアルの育成スタッフを務める
スペインで指導者として活躍する佐伯夕利子さん。現在はビジャレアルの育成スタッフを務める【写真:アフロ】

 続いて講義は、クラブが国外で取り組んでいる育成プロジェクトについての説明に移っていく。


 現在ビジャレアルは国外に22の拠点を持ち、クリニックやイベント、アカデミーを展開している。アメリカでは7つのアカデミーを運営。アルゼンチンのロサリオには、プロ選手の養成に特化したチームを持っているそうだ。他にもカリブ地域や中央アメリカ、スイス、オーストラリア、アジアでは日本、中国、韓国に拠点があり、それらを通して関わっている選手の総数は7000人にも及ぶという。


 国外におけるプロジェクトの一例としてプエルトリコのスクールやマイアミでのトーナメント開催などを紹介した後、サラス氏は日本との関わりに話を移す上でひとりの名前を挙げた。スペインで初めてレベル3の指導者ライセンスを取得した女性監督であり、08年からビジャレアルの育成スタッフを務める佐伯夕利子氏である。


「我々と日本の関係を語る上で、ユリコ・サエキの存在に触れないわけにはいきません。ユリコのおかげで、我々は18年も前から日本の学校と交流し続けてきました。他にも彼女を介し、日本から多くのチームがビジャレアルを訪れるようになりました」


 佐伯氏の仲介で交流が始まった鹿島学園高校サッカー部とは、18年に公式に提携契約を結ぶに至った。同時に鹿島学園の協力の下、日本における育成事業の拠点となるカシマアカデミーフットボールクラブの創設も実現している。


「日本のフットボールマーケットはとても成熟しており、我々はどのような形で関わることができるか分からずにいました。鹿島学園との提携はそのきっかけになったのです。鹿島学園は我々がアカデミー事業を始めて間もなく、協力を申し出てくれました」


 最後にサラス氏は鹿島学園サッカー部のビジャレアル遠征の模様をまとめたビデオを紹介した後、次の言葉で講演を締めくくった。


「日本のアミーゴたちとの交流を通して日本文化を学ぶことは、我々の成長においてもとても重要なことです。我々の交流はお互いにとって有意義なものです。ビジャレアルはカシマのアカデミーを通し、今後も長年にわたって日本のあらゆるチームと交流していきたいと考えています」

工藤拓
工藤拓

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

おすすめ記事(スポーツナビDo)

記事一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント