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『しあわせの隠れ場所』がLiLiCoに教えた
人間の真の「優しさ」と「勇気」とは?

「ステイホーム」が続き、スポーツ観戦の興奮を忘れかけてしまったあなたへ。『王様のブランチ』の映画コーナーなどでおなじみの映画コメンテーターLiLiCoさんに、自宅でじっくりと観たいスポーツ映画を5本選んでいただきました。ストーリー、演出はもちろん、俳優の名演技など、プロレスラーとしてリングに立った経験を持つLiLiCoさんならではの視点でスポーツ映画を評論します。スポーツイベント再開に向けて、徐々にテンションを高めていきましょう!


 第4弾はアメフト映画『しあわせの隠れ場所』(販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント、価格:ブルーレイ2,381円+税、DVD1,429円+税)を紹介します。

スポーツの枠を超えた2009年のベストとも言える作品

周囲を取り巻く環境がどれだけひとりの人間の成長に影響を与えるか。先日紹介した『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』と見比べるとおもしろい
周囲を取り巻く環境がどれだけひとりの人間の成長に影響を与えるか。先日紹介した『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』と見比べるとおもしろい【© 2010 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved.】

 サンドラ・ブロック主演の『しあわせの隠れ場所』、これは貧困層の出自を背負ったがゆえに健全な成長を阻まれていた黒人少年が、多くの親切に助けられ、学力とともにアメリカンフットボールの選手としてスポーツの才能をも伸ばしていく、とても優しい物語です。


 もうスポーツ映画という範疇を超え、あの年(2009年)の一番じゃないかと思う映画です。こんなにも優しさにあふれている作品はあまりないですよ。笑って観ているけど泣いているみたいな状態になります。


 これほど素晴らしい人間がこの世の中にいるかというくらいお母様(サンドラ・ブロック演じるリー・アン・テューイ)が素晴らしく、しかもあのお母さんだから、あのお父さん(ティム・マッグロウ演じるショーン・テューイ)なんですよね。お父さんにはいつも権限がほぼないじゃないですか。でも彼はそんな妻が好きなんですよ。あの奥さんのそういうところを愛していることがすごく分かるんですよね。


 プラス、あの親を見ているあの姉のコリンズ(リリー・コリンズ)と弟のS・J(ジェイ・ヘッド)が、なんとも言えずかわいい。私がこの映画のなかで一番好きなのはS・Jですよ。あの役者、最高ですね。


 これもまた史実をもとにした作品であるわけで、そのなかでどれだけ脚色されているか、現実のS・Jが果たして劇中のような性格の少年であったのかは定かではないんですけど、特に「彼はすべての特典を楽しんだ」というオチがよくて……これは後半を実際に観ていただいてのお楽しみですね。

少年のマイケルは「優しい人」たちに囲まれながら成長していく

少年のマイケルは「優しい人」たちに囲まれながら成長していく
少年のマイケルは「優しい人」たちに囲まれながら成長していく【© 2010 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved.】

 複雑な環境で生まれ育った大柄な少年のマイケル・オアー(クィントン・アーロン)は、でも決して愚かではなく、己の出自も理解して、実のお母さんに言われたとおり、嫌なことがあったら目をつむるという対処で生き延びてきました。


 薬や暴力に染まらずに優しい人間になったことが彼を救った、これは神様からの贈り物ですよね。


 リー・アンの友だち連中であるセレブの奥さま方は、彼女が貧しい黒人の少年を家族として迎え入れたことに対してとやかく言う。けれども、リー・アンはそれを毅然(きぜん)として跳ね除けますね。これが本当の勇気です。彼女は周囲に意見を合わせないで己の主張をすることができるんですね。だから商売でも成功している。


 彼女の高潔な精神は子どもたちにも受け継がれているようです。


 下のほうの子ども、S・Jが幼いがゆえの怖いもの知らずでマイケルに気安く接するのに対し、長女のリリーは聡明(そうめい)で友人もちゃんといる普通の女の子だけれども、マイケルがどんな存在であるのか理解したうえで怖がらない。


 図書室で友人と勉強している時に、マイケルがやってくるとそのテーブルに移動して接したり、道理をわきまえて、困窮してきた少年に優しくできる。お母さんの血を引いて、そういう心の大きさが目立ちますよね。こういう人を増やさないといけない。


 日本も養子制度は決していいとは言えず、余裕のある大人がガーディアンとして面倒を見ることが難しいだけに、余計にそう思います。あの家族の在り方がとっても好きです。


 子どもは偉くなりたいですよね。


 一番小さいと誰にも命令できないから、弟や妹ができると、とたんに大人になることがある。S・Jはそれに似ていて、マイケルがやってくるとお兄さん風を吹かせるように、あれこれと世話を焼く。マイケルが持ち上げる重石代わりになってみたり、トレーニングを手伝いますよね、そういう場面での感動とユーモアのバランスが最高によかったんですよ。


 あと、あのコーチ(レイ・マッキノン演じるバート・コットン)。試合中には不在になり指揮ができなくなった隙に、マイケルがS・Jと机上練習していた作戦でいいところを演じられてしまったりするなど、ちょっとお間抜けに描かれていて緊張をいい感じに緩和しています。

後藤勝

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWeb/メールマガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」(http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

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