『しあわせの隠れ場所』がLiLiCoに教えた人間の真の「優しさ」と「勇気」とは?
「良いコーチとは?」について考えさせられる
サンドラ・ブロック演じるリー・アンは、母としてだけでなくコーチとしても完璧だったとLiLiCoは語る 【© 2010 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved.】
そのように、一人一人の個性を完璧に見るのがまさにコーチだと私は思うんですね。
私が育ったスウェーデンには部活がなかったんですよ。
プロレスとボディービルに手を染め、初めてパーソナルトレーナーをつけたんですけれども、そのときにコーチのなんたるかを実感しました。本当にいいコーチはその人を見るべきで、あらゆる人を汎用的に教えるマニュアル化されたコーチだと成功しないんですよ。
自分のことで言うと、ボディービルをやるならば、本来はお酒をやめないといけないんですね。アルコールは筋肉を壊すから、だったら飲まなければいい。ところがコーチはお酒をやめたところでストレスが食欲に向かってしまう私に対して、アルコールを飲みつつもそれ以上に強度の高いトレーニングをすれば問題ない、と言ったんですね。
発想の転換と言えばそうなんですけど、もちろんキツかったです。日本の大会で5位に入ったらコーチが褒めてくれて、私はマジで泣きながら「ありがとう」と言いました(笑)。
もとはテレビの企画だったとはいえ、まるで人生のパートナーのようになり、今でも連絡を取り合います。本当は夜の8時までなのに、私の仕事が終わる夜の11時からトレーニングに付き合ってくれた。LiLiCoという一人の人間を見て、LiLiCoに合わせたトレーニングをする。そのように、その人の個性を活かして伸ばしていくのがコーチというものなのだなと理解しましたね。
こういうところは親にも必要だと思うんですよ。
だから、あのお母さん――リー・アン・テューイは完璧なコーチだと思います。
この『しあわせの隠れ場所』に『アイ,トーニャ』のお母さん(ラヴォナ・ゴールデン)が入ってきてくれれば、リー・アンにけちょんけちょんに言われて(笑)、トーニャ親子の関係も良くなったはず。
最後のほうで監査が入り、マイケルを母校のアメフト部に送り込もうと画策していたのではないかとリー・アンに疑いがかけられますけれども、本当にやりたいのかというマイケル本人の気持ちが大事なので、その点では彼女は間違っていなかったと思います。
前半にバスケットボールで遊ぶシーンがありますけど、ほとんど手がリングについているからあれでも活躍できたとは思います。でもアメリカンフットボールをやるなかで彼の心が伸びていったわけだから、リー・アンは完璧にマイケルを読み取っていたんじゃないかと。
【© 2010 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved.】
いい成長物語として描かれています。私もあのお母さんのようになりたい!
サンドラ・ブロックがいい役者だというのはみなさんご存じだと思いますが、フィル・コリンズの実の娘であるリリー・コリンズをはじめ、いい役者がそろっていて、ぜひ観てもらいたいです。
(企画構成:株式会社スリーライト)
LiLiCo(映画コメンテーター/タレント)
【写真提供:プランチャイム】