山田哲人の3連発は史上唯一の大記録 2015年・日本シリーズを振り返る
日本シリーズ史上唯一の1試合3連発をマークした山田哲人 【写真は共同】
※リンク先は外部サイトの場合があります
連敗で迎えた本拠地で生まれる
舞台はヤクルトの本拠地・神宮球場。敵地・ヤフオクドーム(現PayPayドーム)でパ・リーグ王者の福岡ソフトバンクに連敗し、移動日を挟んで迎えた第3戦でのことだった。
山田は当時、プロ5年目の23歳で、背番号も入団時から着けていた「23」。この年はシーズン終盤まで三冠王の期待を抱かせ、最終的には本塁打王(38本)と盗塁王(34個)のタイトルを獲得。同僚の川端慎吾に次いでセ・リーグ2位の打率.329と併せ、NPB史上でもそれまで8人しかいなかった“トリプルスリー”を達成していた。
福岡では武田翔太、リック・バンデンハークの両先発に手も足も出ずに抑え込まれながらも、神宮に戻ったヤクルトナインに悲壮感は感じられなかった。なにしろ、このシーズンの神宮での勝率は.667。「ホームに戻れば流れも変わる」、そんな雰囲気だったように思う。そこまで計7打数1安打の山田も、この日はビジターではできなかった全体練習前のティー打撃を杉村繁チーフ打撃コーチとともに行い、「見慣れた打席からの景色がいい」という本拠地での試合に臨んだ。
※リンク先は外部サイトの場合があります
1本目の後、ニコリともしなかった理由は?
1打席目は甘く入ったスライダーを逃さず捉えた 【写真は共同】
それまでは考えられなかったようなセリフが山田の口から飛び出したのは、シーズン終盤の優勝争い真っただ中でのことだ。主軸としてチームの勝敗を背負っていく覚悟を決めた“決意表明”のように感じられた。このシリーズ、ヤクルトはこれまでの2試合で一度もリードを奪っていない。何としても先制点がほしい──。そんな思いで1回裏の第1打席に入っていた。
ソフトバンクの先発は、FAで中日から移籍2年目の中田賢一(現阪神)。FA宣言の際にはヤクルトも交渉のテーブルに就きながら、袖にされた因縁の相手でもある。四球で出ていた一塁走者の上田剛史を警戒しながら、その中田がカウント2-2から投じたスライダーが真ん中高めに浮くと、山田は「当てにいくことなく、力強く振り抜けた」と、豪快にバックスクリーン左へ運ぶ。
待望の先制弾にもニコリともせずにベースを一周したのは、「このまま勝てるっていう自信もなかったし、最後までもつれるだろうなっていうのがあった」から。果たして、2回の攻撃を前にベンチ前で円陣を組んだソフトバンクはすかさず2点を返し、試合はあっという間に振り出しに戻る。