山田哲人の3連発は史上唯一の大記録 2015年・日本シリーズを振り返る
3本目は同期、同学年の千賀から
3打席目は同期、同学年の剛腕・千賀から放つ見事なアーチだった 【写真は共同】
ソフトバンクが2本のソロ本塁打で逆転し、1点を追うヤクルトの5回裏の攻撃。中田が2死から2番・川端に四球を与えたところで、ソフトバンクのベンチが動く。2番手は山田とは同学年で、プロ入りも同期の千賀滉大。この年は右肩痛から復活して先発で2勝を挙げたが、ポストシーズンではリリーフとして起用されていた。
「予測してましたね。多分、(千賀が)来るなっていう感じはしました」(山田)
その初球、千賀が捕手のサインに2度首を振って投じたのは、インハイのストレート。これには山田も「めちゃくちゃ速く感じましたね。差し込まれてました」と、ファウルするのが精いっぱい。2球目のストレートが高めに外れると、3球目も「フォークだったんでやめただけで、ストライクでもたぶん見逃してました」と手を出さず、4球目のストレートも大きく外れて3-1。打者有利のカウントになった。
「ワンスリー(※)だったんで、空振りでもいいので思い切っていこうと思いました」と、続く内角高めの148キロのストレートに腕をうまくたたんで振り抜くと、「思ったより速くてちょっと詰まった」と言いながらも、打球は大歓声とともにレフトスタンドに吸い込まれていった。
駆け出しの頃に口にしていた「歴史に名を刻みたい」を体現するかのような3打席連発。この年一気にスターダムに躍り出た山田は、いまや球界を代表する内野手に君臨している 【写真は共同】
8回の先頭で迎えた第4打席、マウンド上は現在はチームメートの五十嵐亮太。カウント2-2からクイックモーションで真ん中高めに147キロのストレートを投げ込まれ、バットは空を切る。4打席連発とはならなかったものの、4番・畠山和洋(現二軍打撃コーチ)のソロ本塁打などで追加点を挙げたヤクルトは、山田の言っていた「自分が打たないとチームも勝てない」を地で行くような展開で、ソフトバンクに一矢報いた。
だが、それもシリーズの流れを変えるには至らず、ヤクルトは1勝4敗とソフトバンクに完敗。日本シリーズの舞台では、山田がこの世に生を受けた92年以来の敗退となった。それでも、その舞台で大記録を打ち立てた山田は、まだ駆け出しの頃に口にしていた「(プロ野球選手として)何でもいいから歴史に名を刻みたい」の言葉を体現するかのように、「ミスター・トリプルスリー」として球史に名を刻んでいく──。
(※注)プロ野球では2010年からボールカウントが「ボール-ストライク」の順に変わったが、それまでの「ストライク-ボール」順で呼ぶ選手は今も多い。
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今回取り上げた「2015年日本シリーズ第3戦 東京ヤクルトvs.福岡ソフトバンク」は、4月30日(木)18時より速報開始!
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