連載:J1・J2全40クラブの番記者が教える「イチオシ選手」

鳥栖サポーターを魅了する生え抜き新人 本田風智は見ていてワクワクする選手だ

荒木英喜

鳥栖の若手といえば松岡に注目が集まりがちだが、同じ生え抜きで同級生の本田も才能溢れるタレントだ。今季のJ1で“大きな発見”となるかもしれない 【(C)J.LEAGUE】

 本田風智は中断前の公式戦2試合にいずれもスタメン出場し、ルーキーらしからぬプレーでサポーターの心をつかんだ。今季、トップチームに昇格したばかりの18歳のMFは、とにかく見ていてワクワクする選手。サガン鳥栖のOBも「面白い選手。使い続けたほうがいい」と賛辞を送る。公式戦再開後もこの新鋭のプレーから目が離せない。

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8カ月でこれほど成長するとは……

 川崎フロンターレとのJ1リーグ開幕戦に先発したサガン鳥栖のメンバーの平均年齢は、24.09歳。昨季の開幕戦と比べると4歳以上も若返った。

 そんな若いチームの中で、見ていてワクワクする、今一番面白い選手と言えるのがMF本田風智だ。今季、鳥栖U-18からトップチームに昇格したばかりの高卒ルーキーは、川崎戦の前週に行なわれたYBCルヴァンカップの北海道コンサドーレ札幌戦にも先発。中断前の公式戦2試合に連続先発出場している。

 いずれの試合も鳥栖にゴールはなかったが、本田は札幌戦でクロスバーを叩くシュートを放ち、川崎戦では原川力のシュートにつながるヒールパスでサポーターを魅了した。それ以外にも、新加入の小屋松知哉や内田裕斗とのコンビネーションからチャンスを演出するなど、ルーキーらしからぬプレーぶりだった。

 鳥栖の若手選手といえば、昨季、クラブで初めて高校3年でプロとなった松岡大起を思い浮かべる人も多いだろうが、その松岡と本田は同級生。松岡は2018年から2種登録選手となり、昨季はコンスタントにトップチームの試合に絡み続け、6月にプロ契約を果たした。

 一方、本田は松岡より1年ほど遅れたが昨年4月に2種登録選手となった。しかし、リーグ戦での出番はなく、YBCルヴァンカップのグループステージ第6節・FC東京戦に先発フル出場しただけ。この試合では持ち前の攻撃センスを発揮する場面はあったが、ゴールにはつなげられなかった。

 試合後、本田は「試合の流れや展開が速い分、今どういったプレーをするべきなのか考えながらやらなきゃいけないと思いました」と話していた。それから約8カ月で、サポーターを沸かせるプレーを見せるまでに成長するとは驚きだ。

中学までの評価は「タフでない、走れない」

 トップチームでの試合で課題を自覚した本田は、その経験を糧に自分の主戦場であるプリンスリーグ九州で活躍した。鳥栖U-18のキャプテンは松岡だったが、彼がトップチームに帯同して不在のため本田ら他の3年生の責任感が増し、チームはプリンスリーグ九州で首位を独走。本田は得点王に輝いた。チームは続くプレーオフも苦しみながらも勝ち上がり、今季からのプレミアリーグ参戦を決めた。

 本田はU-18時代をこう振り返る。「タフにプレーできない、走れないと中学まで言われていました。でも鳥栖に来て、走ることや、練習からバチバチやることで球際の強さという面でも成長しました」。

 そしてトップチーム昇格が決まると、「開幕戦からスタメンで出て、シーズンを通して試合に出続け、ゴールやアシストに多く関わりたいと思います。一番はチームの勝利に貢献できる選手ですが、観客がワクワクするプレーを意識して、サポーターから『本田選手のプレーを見たい』と思われる選手になりたいです」と力強く話した。

 その言葉を体現するように、沖縄キャンプ中に行われた今季初の対外試合、水戸ホーリーホックとのトレーニングマッチで1ゴールをマーク。「パンゾー(小林祐三)さんがボールを拾ってから運んだ時点で、自分が前に走っていけば良いボールが来ると分かっていた。思った通りのボールが来て、自分のタッチもうまくいった。(小林が)ボールを奪った瞬間のイメージのまま点を決めることができた」と振り返った。

自分がチームをけん引するという責任感も

 公式戦2試合に連続で先発したが、まだゴールはもちろん、勝利も経験していない。個人としてはいいプレーを見せた札幌戦後にはこう話している。

「プロである以上、勝ちを求めてやっていかないといけないのでそういう部分では悔しい結果だった。自分の特徴を出せたかなと思いますが、やっぱり結果を残せていないことが課題かなと思います」

 これまでも自らの課題に向き合い、それを乗り越えてきた本田。ゴールという結果を早い段階で出せれば、さらなる飛躍を遂げるに違いない。現在は他のチームでプレーする鳥栖OBの一人も、「本田は面白い選手。J1に慣れたらもっとできるようになるから、使い続けたほうがいい」と絶賛する。

 本田は金明輝監督が鳥栖U-18で監督を務めた時の教え子でもある。金監督のサッカーを熟知しており、「自分たちが明輝さんのしたいことを一番分かっていると思うので、求められるのは当たり前だと思います」と、ルーキーながら自分がチームをけん引するという責任感も持っている。1年目から鳥栖躍進のためにその力を発揮するはずだ。

(企画構成:YOJI-GEN)
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著者プロフィール

熊本県出身。専門学校卒業後、福岡の出版社などにアシスタトとして勤務。1997年、翌年のフランス・ワールドカップを現地で観戦するためにフリーランスのライターとなる。2004年よりアビスパ福岡、2007年からサガン鳥栖、たまにギラヴァンツ北九州を取材。サッカー以外にもラグビーなどのスポーツ、音楽関係の取材を、福岡を拠点に行なっている。

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