連載:J1・J2全40クラブの番記者が教える「イチオシ選手」

掲げる目標は15得点と10アシスト 宇佐美貴史こそがG大阪の“旗頭”だ

下薗昌記

「誰よりも僕が一番自分に期待している」。宇佐美は結果を出すことでサポーターからの信頼を得る 【(C)J.LEAGUE】

 西野朗体制においても、長谷川健太体制においても、「強いガンバ」には常に頼れるエースがいた。では、宮本恒靖体制におけるエースは誰なのか。それは、宇佐美貴史にほかならない。2度目の欧州挑戦も本人いわく「ダメだった」。しかし、安易にガンバ大阪への復帰を決めたわけではない。この和製エースこそ、常勝軍団復活を目指すチームのキーマンだ。

魅惑の攻撃サッカーこそ「GAMBAISM」

 2年連続の残留争いに身を投じながらも、終わってみれば7位でフィニッシュした昨シーズン。終盤の5試合だけを切り取れば、3連勝を含む4勝1敗という好成績に加えて、5試合で奪った得点数もJ1優勝の横浜F・マリノスにわずか1点及ばない13得点。下位チームとの対戦が続いていたことも追い風となっていたが、ガンバ大阪は本来あるべき姿を徐々に取り戻しつつあった。

「僕の役割はチームに勝点3を付けること」

 ドイツで悩める日々を過ごしていた宇佐美貴史が、本来の輝きを見せ始めると、やはりG大阪の攻撃はひと味もふた味も違ってくる。

 シーズン終盤の5試合中、4試合で相手ゴールネットを揺らし、計5得点。数字上の貢献度はいうまでもないが、和製エースの得点に歓喜するサポーターのチャントはチームに独特の「イケイケ感」をもたらすのだ。

 クラブ史上初めて2年連続で同じスローガン「GAMBAISM」を掲げる今シーズン、タイトル奪回を明確な目標に掲げるG大阪だが、その旗頭となるべき男が宇佐美である。

 ややもすると曖昧な概念となりがちな今季のスローガンではあるが、アカデミー育ちのタレントが魅惑の攻撃サッカーを披露することは紛れもなく「GAMBAISM」であるはずだ。

宇佐美が中心となることを遠藤も期待

 2月23日のJ1開幕戦で前年王者を撃破し、9年ぶりの開幕白星を手にしながらも、和製エースは反省を口にした。

「ああいう戦い方ができるということを見せられたのは良かったけど、僕らは常にマリノス戦のような戦い方をするチームじゃない。どちらかといえば、マリノスが僕たちに対してやったサッカーをしないといけない」

 3バックを基本布陣としながらも、対戦相手に応じては4バックも採用する今シーズン、各ポジションに控える多士済々の人材をいかに組み合わせるかは指揮官の腕の見せ所ではあるが、ひとつだけ揺るがない事実は、宇佐美がエースであるということだ。

 スタイルこそ異なるものの、西野朗監督や長谷川健太監督が率いた「強いガンバ」には、常に頼れるエースがいた。古くはアラウージョやマグノ・アウベス、そして2014年の三冠達成を支えたのは紛れもない宇佐美だった――。

 FWが安定稼働する重要性と安心感を知り尽くす遠藤保仁も言う。

「チームとしてはできるだけFWに点を取って欲しい。タイトルを取るためには爆発的な攻撃力も必要になるし、貴史が中心になっていくことを期待している」

安易な思いで出戻ったわけではない

 チームメートやサポーターから頼りされる和製エースだが、宇佐美の活躍を誰よりも待ち望んでいるのは、他ならぬ本人だ。

 開幕を控えた2月のある日、こんな本音を明かしたことがある。

「プロに入ってからずっとそうですけど、サポーターの誰よりも僕が一番自分に期待しているし、自分自身が一番結果を求めている」

 昨年6月、2度目の欧州挑戦を終え、愛する古巣への復帰を決めた記者会見で「2度目も個人的にはダメだった」と率直な思いを口にした宇佐美だが、決して安易な思いで出戻りを決意したわけではない。

「結果を出さないと僕が帰ってきた意味がないし、サポーターも認めてくれないと思う」

 今シーズン、宇佐美が掲げる目標は15得点と10アシスト。昨季終盤の充実ぶりを考えれば、決して高いハードルとは言えない数字である。

「一発のサイドチェンジとかスルーパスでスタジアムの空気を変えることができると思っている。でも、まずは点を取れる場所に常にいたい」

 宮本恒靖体制3年目で常勝軍団復活を目指すG大阪。万能エースのフル稼働が不可欠となる。

(企画構成:YOJI-GEN)
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著者プロフィール

1971年大阪市生まれ。師と仰ぐ名将テレ・サンターナ率いるブラジルの「芸術サッカー」に魅せられ、将来はブラジルサッカーに関わりたいと、大阪外国語大学外国語学部ポルトガル・ブラジル語学科に進学。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国で600試合以上を取材し、日テレG+では南米サッカー解説も担当する。ガンバ大阪の復活劇に密着した『ラストピース』(角川書店)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞に選ばれた。近著は『反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――』(三栄書房)

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