変革元年のチームで存在感増す今津佑太 甲府初「山梨出身の絶対的レギュラー」に
今季開幕戦で大卒ルーキーの中塩とCBコンビを組み、町田の攻撃陣をシャットアウトした今津。エアバトルと1対1の強さを武器に、地元出身の逸材が日を追うごとに評価を高めている 【(C)J.LEAGUE】
在籍1〜3年目のグループに大きな期待
昨シーズンまでの3バックから4バックへ移行。さらに多くのベテランとの契約を更新せず、彼らが中心のスタメン構成から、一気に若返りを図って新シーズンのスタートを切ったのだ。
Jリーグにおける甲府の立ち位置を予算規模で見ると、IT企業など新興業界の経営参画によって規模を拡大するクラブが増える中で、近年は相対的にその地位が低下してきている。
そうしたなかでも2013年から5シーズン連続でJ1に留まるなど健闘してきたが、17年シーズンを16位で終えてJ2に降格すると、18年、19年と2シーズン連続で再昇格に失敗。そのため資金面も含めた余力がなくなったとクラブは判断したのだろう。今シーズンを、ある意味で仕切り直しの1年、変革元年と定めている。
甲府は赤字を出さない健全経営クラブとして知られるが、今の身の丈でJリーグを戦うには年俸の高いベテランや外国籍アタッカーを減らし、中堅、若手中心の構成で「経験を積ませながら」、「育てながら」という流れになるのは自明の理。ポイントとなるポジションには30歳前後の選手がそろっているが、一方で今シーズンの大きな成長を期待されているグループがある。それが近年、新卒で加入した在籍1〜3年目の選手たちだ。
名前を挙げると、大卒が今津佑太(3年目、DF)、荒木翔(3年目、MF/DF)、太田修介(3年目、FW)、小林岩魚(2年目、DF/MF)、中塩大貴(1年目、DF)、中村亮太朗(1年目、MF)、そして高卒が入間川景太(3年目、DF)、宮崎純真(2年目、FW)、中山陸(2年目、MF)といった選手だ。
勢いがあふれ出るだけでなく「賢さ」も
山本英臣、藤田優人、金園英学、内田健太、新井涼平、橋爪勇樹、小柳達司、松田力、ドゥドゥ、ラファエル……。甲府には経験値の高いフィールドプレーヤーが少なくない。ただ、彼らがケガやコンディション不良でポジションを空けた場合、単なる代役にとどまらず、一気に定位置を奪い取るような勢いのある若手が複数出てきているのも事実だ。
その代表格と言えるのが、キャンプからセンターバック(CB)のポジションをつかみ続けている今津だ。
地元・山梨県出身だが、流経大柏高、流通経済大と7年間県外でプレーしたのちに甲府に入団。18年の加入時に監督だった吉田達磨(現・シンガポール代表監督)は、「プレーのミスはあっても、判断はほとんど間違っていない」と、その才能を高く評価していた。
身長184センチ、体重78キロと、サイズ的にもCBとしては十分で、元気というか勢いがあふれ出るような選手だ。1年目のキャンプでは、シンプルなボール回しの練習でパススピードにこだわり続け、吉田監督から「(練習の意図を)分かっているのか」と言われることもあったが、試合後の取材の受け答えは理路整然。客観性や冷静さ、賢さも備え持っている。
「現実的な愛」でクラブを盛り立てる
今津にはその最初のケースになることが期待されているが、彼の場合はアカデミー出身ではないので、必要以上に“山梨愛”や“ヴァンフォーレ愛”を背負うこともない。もちろん、甲府のこれまでの歴史は知っているし、クラブに関わってきた人々に対する敬意、山梨県やヴァンフォーレに対する愛情も深いだろう。ただそれは、他に大きな飛躍のチャンスがあっても、出番がなくなっても甲府に留まり続けたいというような原理主義的な愛ではない。今津はいわば「現実的な愛」で、チームとクラブを盛り上げようとしている。
「プレーヤーとして山梨にこだわる必要はないけれど、ヴァンフォーレ甲府は特別なもの。山梨にいる以上、こだわりたいし、山梨の象徴として(ファン・サポーターに)胸を張ってもらえるような存在になるように、(山梨出身の自分が)試合に出て示さないといけない」
静岡キャンプでそう話した今津。出場機会が限られた昨シーズンは、夏に移籍も考えたそうだが、開幕前のトレーニングマッチからCBの軸に据えられている今シーズンは、長引く中断期間中も充実感が薄れることがない。
対人の強さという分かりやすい特徴が魅力ではあるが、今後出場試合が増えるにつれて、責任感や山梨愛といった内面の思いに変化も生まれてくるだろう。そうしたメンタル面の変化が、今津のプレーの進化や成熟にどう表れるのか。それも再開時の見どころのひとつになるはずだ。
(企画構成:YOJI-GEN)
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