連載:J1・J2全40クラブの番記者が教える「イチオシ選手」

井上潮音が「フリーマン」として輝けば 東京Vは相手にとって怖いチームになる

海江田哲朗

昨季までは中盤センターでプレーしていた井上(写真中央)だが、永井監督はその能力をよりゴールに近い位置で生かそうとしている。指揮官の期待に応えられるか 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 開幕戦ではメンバー外となる屈辱を味わった。だが、井上潮音はこの中断期間中に「フリーマン」(下がり目のセンターフォワード)という新たな役割を与えられ、そこでのプレーに手応えを感じはじめている。今季加入した大久保嘉人から学ぶことも多く、飛躍のきっかけをつかんだ昨季以上の活躍も期待できるだろう。井上が新ポジションで輝きを放てば、東京ヴェルディは相手にとって怖いチームになるはずだ。

肌感覚で知る絶好の機会

 たけだけしさをあらわに、ゴールを狙う背番号13。東京ヴェルディにとって今季の補強の目玉、大久保嘉人だ。Jリーグ史上初、3年連続得点王(2013〜15年、川崎フロンターレ所属時)に輝き、日本代表でも一時代を築いたストライカーである。今年6月には38歳を迎える大ベテランだが、そのエネルギッシュなプレーに陰りは見えない。

 大久保に期待されるのは、前線の核として得点源になること。東京Vは、昨年7月に就任した永井秀樹監督の下パスワークに磨きをかけ、徹底的にボールを握って押し込んでいくスタイルが根づきつつあるが、ゴール前での決め手を欠く傾向にある。その弱みを解消するため、うってつけの選手として大久保に白羽の矢が立った。

 同時に、一流のストライカーはパスの出し手にとって最良の教材になり得る。大久保は川崎で大島僚太をはじめ、若手の飛躍的な成長を促したが、東京Vの若い選手にとっても点を取るために何が必要なのか肌感覚で知る絶好の機会だ。

 なかでも東京Vユース出身の井上潮音は、大久保加入の効果で成長が期待される若手の筆頭と言える。野性的で男くさい大久保とは好対照の甘いマスク。昨季はプロ4年目でようやく初ゴールを決め、キャリアハイの33試合・3得点をマークした気鋭のホープである。

大久保を使い、使われる関係を確立すれば

 井上は大久保とプレーした印象についてこう語る。

「まず、嘉人さんは簡単なミスをしない。ゴール前では常にパスよりシュート。味方のパスを引き出す動き出しもはっきりしていて、まだタイミングがずれてオフサイドになる場面が多いですけど、徐々に互いの特徴を理解し合えるようになってきたと思います。選手同士の距離感を大事に、ボールにたくさん触りたいタイプの選手ですから、うちのスタイルには間違いなく合う」

 勝負に懸ける気持ちの強さ、戦う姿勢を前面に出す部分もおおいに刺激になるはずだ。「自分を含め、ああいった選手はいまの若手にはいない。チームが強くなっていくために足りないところだと感じているので、いい部分を見習っていきたいです」

 大久保を使い、使われる関係を確立できれば、井上の眼前には新たな景色が開けてくるだろう。

あそこでプレーするのが一番しっくりくる

 徳島ヴォルティスに0-3で敗れた今季のオープニングゲームで、井上は18人の枠から漏れている。プレシーズンの時期、沖縄キャンプは故障で出遅れたが、途中から合流して着実に調子を上げていた。それだけに、チームに帯同すらできなかった悔しさはいかばかりか。

「単純に自分の力不足のせい。力さえあれば、どんな監督もメンバーに入れます。たしかにキャンプでパフォーマンスを上げていった手応えはあったんですが、東京に戻ってから開幕までの約2週間、プレーで与えるインパクトが足りなかったということ」

 新型コロナウイルスの感染拡大による中断期間、井上は従来の中盤とは違うポジションでプレーする機会が増えている。永井監督が「フリーマン」と名付ける、下がり目のセンターフォワード。中盤のパス回しに参加しつつ、機を見てゴール前に進出し、フィニッシュに絡むのが仕事だ。

「フリーマンがどこでボールを受けられるかによって、チームのパスの回し方が変わってくる。永井さんのサッカーを実現するために非常に重要なポジションです。求められているものを把握できるようになり、いまはあそこでプレーするのが一番しっくりきていますね。ボールを大事にしながら、いかにゴールに向かっていけるか。気持ちの面でもギラギラしたものを見せたい」

 これまで井上のテクニックや戦術眼は、主に中盤の構成やゲームの流れをつくることにおいて発揮されていた。その能力が相手にとって危険なエリアで生かされるようになり、大久保を中心とする攻撃陣の出力を最大限まで高められれば、東京Vは一気に怖いチームへと変貌する。

(企画構成:YOJI-GEN)
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1972年、福岡県生まれ。獨協大学卒業後、フリーライターとして活動。東京ヴェルディを中心に、日本サッカーの現在を追う。主な寄稿先に『フットボール批評』、『Number Web』、『サッカーダイジェスト』など。著書に、東京Vの育成組織にフォーカスしたノンフィクション『異端者たちのセンターサークル』(白夜書房)がある。2016年初春に始動した『スタンド・バイ・グリーン ライター海江田哲朗のWEBマガジン』で、東京Vのマッチレポートやコラムを届けている。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント