井上潮音が「フリーマン」として輝けば 東京Vは相手にとって怖いチームになる
昨季までは中盤センターでプレーしていた井上(写真中央)だが、永井監督はその能力をよりゴールに近い位置で生かそうとしている。指揮官の期待に応えられるか 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
肌感覚で知る絶好の機会
大久保に期待されるのは、前線の核として得点源になること。東京Vは、昨年7月に就任した永井秀樹監督の下パスワークに磨きをかけ、徹底的にボールを握って押し込んでいくスタイルが根づきつつあるが、ゴール前での決め手を欠く傾向にある。その弱みを解消するため、うってつけの選手として大久保に白羽の矢が立った。
同時に、一流のストライカーはパスの出し手にとって最良の教材になり得る。大久保は川崎で大島僚太をはじめ、若手の飛躍的な成長を促したが、東京Vの若い選手にとっても点を取るために何が必要なのか肌感覚で知る絶好の機会だ。
なかでも東京Vユース出身の井上潮音は、大久保加入の効果で成長が期待される若手の筆頭と言える。野性的で男くさい大久保とは好対照の甘いマスク。昨季はプロ4年目でようやく初ゴールを決め、キャリアハイの33試合・3得点をマークした気鋭のホープである。
大久保を使い、使われる関係を確立すれば
「まず、嘉人さんは簡単なミスをしない。ゴール前では常にパスよりシュート。味方のパスを引き出す動き出しもはっきりしていて、まだタイミングがずれてオフサイドになる場面が多いですけど、徐々に互いの特徴を理解し合えるようになってきたと思います。選手同士の距離感を大事に、ボールにたくさん触りたいタイプの選手ですから、うちのスタイルには間違いなく合う」
勝負に懸ける気持ちの強さ、戦う姿勢を前面に出す部分もおおいに刺激になるはずだ。「自分を含め、ああいった選手はいまの若手にはいない。チームが強くなっていくために足りないところだと感じているので、いい部分を見習っていきたいです」
大久保を使い、使われる関係を確立できれば、井上の眼前には新たな景色が開けてくるだろう。
あそこでプレーするのが一番しっくりくる
「単純に自分の力不足のせい。力さえあれば、どんな監督もメンバーに入れます。たしかにキャンプでパフォーマンスを上げていった手応えはあったんですが、東京に戻ってから開幕までの約2週間、プレーで与えるインパクトが足りなかったということ」
新型コロナウイルスの感染拡大による中断期間、井上は従来の中盤とは違うポジションでプレーする機会が増えている。永井監督が「フリーマン」と名付ける、下がり目のセンターフォワード。中盤のパス回しに参加しつつ、機を見てゴール前に進出し、フィニッシュに絡むのが仕事だ。
「フリーマンがどこでボールを受けられるかによって、チームのパスの回し方が変わってくる。永井さんのサッカーを実現するために非常に重要なポジションです。求められているものを把握できるようになり、いまはあそこでプレーするのが一番しっくりきていますね。ボールを大事にしながら、いかにゴールに向かっていけるか。気持ちの面でもギラギラしたものを見せたい」
これまで井上のテクニックや戦術眼は、主に中盤の構成やゲームの流れをつくることにおいて発揮されていた。その能力が相手にとって危険なエリアで生かされるようになり、大久保を中心とする攻撃陣の出力を最大限まで高められれば、東京Vは一気に怖いチームへと変貌する。
(企画構成:YOJI-GEN)
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