- 中島大輔
- 2020年3月24日(火) 11:00
一流メジャーリーガーのような投球内容

平均球速150.9キロのストレート、149.4キロのシュート、145.9キロのカットボール、141.8キロのフォークでピッチトンネルを構成し、そこから外れる120.7キロのカーブで打者の狙いを幻惑する。2019年シーズン、21歳の山本由伸(オリックス)が見せたのは、一流メジャーリーガーのように圧倒的な投球内容だった。
強い球や動く球を操りながら、鋭く落ちるフォークを振らせ、カーブでタイミングを狂わせる投球スタイルは「柔と剛」を兼ね備えている。高卒3年目にして球界トップの球を身につけた右腕は一体、どんな投手になりたいと見据えているのだろうか。
「完成は見えてないです。完成があるかもわからないです、ちょっと」
昨季、防御率1.95で自身初の個人タイトルを確定させる少し前、屈託のない笑みを浮かべながらそう話した。
独特なフォームは努力の賜物
底知れない山本に周囲が衝撃を受けるのは、これまでの投手とは明らかにタイプが異なるからだろう。例えば有名になったのが、槍投げの練習だ。
「槍投げなんですけど、槍投げじゃないというか……。槍投げをうまくできるようになるまでの練習が実はあるんです。準備の過程ですね」
全身を柔らかく使い、弓矢を発射するようにして強い球を投げていく。独特な投球フォームは、努力の賜物だ。もともと体が柔らかかったわけではないというが、入団1年目のオフ、一緒に自主トレを行った筒香嘉智(レイズ)に刺激を受けてトレーニングに精を出した。
「よく『体が柔らかいね』と言われるけど、本当に鍛えているのは強さなんです」
体に柔軟性を出し、運動連鎖で力を最大限に生み出していく。柔と剛。山本が両者を備えるのは、必然的なのだ。
侍ジャパンの主軸候補でもある山川穂高(埼玉西武)は「こんなカットボールを見たことがない」と評したが、山本は実際、「あまり曲げていない」という。一般的な投手のように指で切るように投げるのではなく、独特な軌道の裏には「自分がここまでやってきた動作の練習がある」。全身を使って投げることで鋭く曲げて落とし、打者にとって「見たことがない」変化になるのだ。
五輪の舞台にも高い意欲
先発もリリーフもできる山本は、東京五輪での選出は確実だ。晴れ舞台に向け、自身も高い意欲を持っている。
「やっぱり普段の試合とは、注目度がまったく違いますよね。野球に興味がない人も見ますし、若いとか年齢層も関係なく、小さい子から見るじゃないですか。注目度が違うということは、野球の魅力を知ってもらうチャンス。そこで『野球選手ってすごいな』って思っていただけるチャンスなので、ぜひその場で自分が活躍したいです」
勝敗以上のものを背負って上がるマウンドで、規格外の右腕はどんなピッチングを見せるのか。「より上の舞台、高いレベルで野球をしたい」と野望を語る男のピッチングに、東京五輪本番、日本中の視線が注がれる。
【動画予告】山本由伸投手に10の質問
「侍ジャパンには昔から憧れがあった?」「侍ジャパンでは先発をやりたい?」など、山本由伸投手に10の質問を直撃!
フル尺動画は下記リンクよりご覧ください!(スポーツナビアプリ限定)