連載:決戦! 東京マラソン〜五輪代表を懸けたトップランナーの軌跡〜

井上大仁、失意のMGCから再スタート 気持ちを吹っ切り、つかんだ自信と手応え

田中葵
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「4強」の一角と目されて臨んだ、2019年9月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)。東京五輪男子マラソン代表の有力候補である井上大仁(MHPS)は、まさかの最下位に沈んだ。レース直後は戸惑いを隠せなかった井上だが、約半年間に及ぶ充実した準備期間で、自信を取り戻した。自身3度目となる東京マラソンで、日本記録更新に挑む井上に、今の率直な気持ちを聞いた。

「4強」の一角がまさかの失速

昨年9月のMGCでは、完走した中で最下位に沈んだ井上。気持ちを切り替え、東京マラソンで代表の切符を手繰り寄せる 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 東京五輪男子マラソン代表最後の1枠を争う「東京マラソン2020」の開催が目前に迫る。国際陸連によるシューズ規制発表や関連報道、そして新型コロナウイルス感染拡大による一般参加選手の出場が取りやめになるなど、取り巻く環境は何かと騒がしい。だが、大一番に向かう井上はいたって冷静な心境で、そのときを迎えようとしている。

「注目が集まるのは光栄です。世間的には大変なことになっているので、その中で走れることをしっかり受け止めてレースに向かっていければと思います。ただ、今はそこまで張り詰めた感じはないです。調子は悪くないですし、練習もできている。やるべきことを淡々とこなしています」

 19年9月に行われた東京五輪マラソン代表選考レース「MGC」では、完走した選手のうち、最下位となる27位。まさかの結果に終わった。この結末を一体誰が予想していただろうか。戦前の予想では、日本記録保持者の大迫傑(ナイキ)、設楽悠太(Honda)、服部勇馬(トヨタ自動車)と並び、「4強」と評されていた井上。18年8月にインド・ジャカルタで行なわれた、気温30度を超えるアジア大会も制し、暑さにも強さを見せていただけに、代表争いでも有力候補に挙がっていた。しかし、最初に第2集団に動きが出た12キロ過ぎから徐々に遅れをとり、最後まで本来の走りを見せることができなかった。

「あの結果がすべて。色々なことが足りなかったと思います。ただ、レース中にどうしようもないという感じは初めてでした。大会前の練習も、レース当日も思うように体が動かないという感じがあったんです」
 
 同レースを制した中村匠吾(富士通)、服部、大迫の3人によるラスト勝負に熱狂した東京・神宮外苑のフィニッシュ地点。そこから遅れること10分以上、2時間22分10秒もの時間を費やした、井上の長くて苦しい42.195キロが静かに幕を閉じた。
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著者プロフィール

1980年10月5日長野県生まれ。高校・大学は陸上部所属(長距離・競歩)。東海大学在学中よりフリーライターとして陸上競技、ウインタースポーツなど、アマチュアスポーツを中心に取材する傍ら、取材日以外は自らもサブスリーランナーとして、大手スポーツショップでランニング用品の接客を行う顔も持つ。現在は主に「月刊陸上競技」に寄稿。

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