連載:「パ・リーグ優勢の時代」はなぜ来た?

パで育った杉内俊哉がセに還元する教え 「真ん中真っすぐ」の使い方が違いを生む

小西亮

現在は巨人の二軍投手コーチを務める杉内。力で強打者をねじ伏せられるような次世代の投手の育成が期待される 【撮影:スリーライト】

 両リーグのマウンドに立ち、142個の白星を積み上げたからこそ違いが分かる。巨人の杉内俊哉二軍投手コーチは現役時代、セ・パの打者では「真ん中真っすぐ」に対する反応が異なると感じていた。それこそが、現在の「パ全盛」の根幹を成していると見る。2000年代のパ・リーグを鮮やかに彩った名左腕はいま、セ・リーグの未来を背負う若手たちと向き合う日々。自らが若手のころに培った経験をもとに、パの強打者たちをねじ伏せられる投手を育てようと奮闘している。

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パは「力対力」、セは「細かい野球」

杉内はソフトバンク、巨人と両リーグで傑出した成績を残した 【写真は共同】

――現役時代、両リーグの違いを生んでいる点はどこに感じましたか?

 育成方法というのが、根本的に違う気がするんですよね。僕がダイエーに入ったときは、「強い真っすぐを(ストライク)ゾーン内に投げろ」と言われてきました。高めでもいいから真っすぐを投げて、フライを打たせろという感じ。バッターの場合は、フルスイングですよね。当時パ・リーグの球場は広かったですから、フルスイングしないとホームランにならない。そういう考え方は今も変わっていないような気がしますし、こうしてパ・リーグが強いことにもつながっているのかなと思います。

――対するセ・リーグは東京ドーム、神宮球場をはじめ、狭い球場も少なくないですね。

 球場が狭い分、フルスイングしなくても入るという意識はありますよね。「バットに当てれば何か起きるよ」という。力対力で、三振もするしホームランも打つのがパ・リーグなら、三振しないけど少し小さくまとまっているのがセ・リーグという印象です。癖を見るバッターが多かったり、とにかく低めの徹底だったり……。細かいのはセ・リーグですね。

――マウンド上で感じる打者の違いはありましたか?

 交流戦でもそうでしたが、セ・リーグのチームと対戦すると、真ん中の真っすぐがファウルになるんですよ。それがすごく楽でした。当てにくるからファウルになる。だから真っすぐ、真っすぐで簡単に追い込めて、「あとはお好きに」という(笑)。変化球で空振り三振を取ったり、インコース真っすぐで見逃し三振を取ったりという感じでしたかね。打順が下位にいけばいくほど真っすぐの割合は高かったかもしれない。一方でパ・リーグの場合は、うまくいけば空振りが取れるけど、一発があるというのは怖かったですね。「真っすぐを狙っているのかなあ」と考えたり、コースだけは重視しようと意識したりは常にしていました。

日本シリーズに見た、ソフトバンクの大胆さ

ホークス時代には最多勝、最優秀防御率、沢村賞などのタイトルを総ナメにした 【写真は共同】

――杉内投手といえば、奪三振のイメージがあります。三振の取りやすさについて、セ・パで変わるものですか?

 パ・リーグは振ってくれる分、三振が取りやすかったですよね。セ・リーグは、長打はなくても粘る。面倒くさいというか、打ち取るのは難しかった。見極めようとするから、見逃し三振が多いのはセ・リーグという印象がありました。ただ、強い真っすぐをしっかり投げることができたら、割と簡単でした。

――ご自身がプロの世界に身を置いて20年近くになります。感じてきたセ・パ傾向は今も続いていると思いますか?

 チームの方針もあるのでしょうが、広島はパ・リーグに似てきているのかなと思いますね。僕がパ・リーグにいた頃の広島は、徹底して右打ちとか、足を絡ませた機動力とかが目立っていたので、無駄な四球でランナーを出さなければ大丈夫という意識は頭の中にありました。でも、今の広島は足も使えるし、バッティングもいいですから。

――それぞれのリーグで、投手たちにはどんな特徴がありますか?

 やっぱり、パ・リーグのピッチャーは真っすぐが強いですよ。絶対に。スピードどうこうというより、ベース上が強い。変化球がいくら良くても、強い真っすぐを投げないとパ・リーグでは通用しませんから。セ・リーグは、かわそうという意識が強い気がしますね。際どいところに投げてボール球が増え、カウントを悪くして打たれる……。そこに投げなきゃいけないという意識が強すぎるからボールが弱い。真ん中に入ると打たれますよね、そりゃ。パ・リーグはたとえ甘いところでもいいから真っすぐを投げてファウルを取っちゃう。その違いじゃないですかね。(昨季の)日本シリーズは典型的ですよね。ソフトバンクのピッチャーはみんな強い球を投げていたし、大胆にベースを使って投げているなと思います。

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