パで育った杉内俊哉がセに還元する教え 「真ん中真っすぐ」の使い方が違いを生む
「まとまったピッチャーは面白くない」
巨人時代にはノーヒットノーランも達成した、歴代屈指の左腕が両リーグの違いを語る 【写真は共同】
強い真っすぐは大前提。「初球に真ん中に投げて打たれてもいいから、投げてみろ」とは言っています。ただ、「手は抜くなよ」と。「低め! 低め!」とも言わないです。その分、「高めにいったら次は低めに投げる努力をしてみよう」と。「マウンド上で意図を見せろ」と言っています。若いうちはスピードを求めていい。若いうちにしかできないことでもあるので。まずは120%の力で投げてスピードを上げ、あるときを境に100%でコントロールするという技術を覚えなければいけない。100%で9回まで投げられる力です。僕の場合は(18勝を挙げリーグMVPを獲得した)2005年ごろ、100%でリリースしながらコントロールするという感覚が分かったんです。転機を迎えたというか。そんな時期が誰しもくると思うので、「成長のチャンスを見逃すな」ということですよね。
――「強い真っすぐ」が成長の第一段階なのですね。
ただ難しいのが、バッターに打たれ出すと投げるのが怖くなるんですよ。野球の怖さを知ると、強い真っすぐが投げられなくなる。「コース、コース、低め、低め」と丁寧に投げようとしてしまう。セ・リーグらしいところなんですかね、それは。でも、それで怒りはしない。「ああ、投げるのが怖いんだろうな」と思いますから。「打たれて覚えろ」と言っているんですけどね。ピッチャーはマウンドに立つと、どうしても打たれたくないと思ってしまう。僕なんか、パ・リーグで打たれて、打たれて、怒られて……。「何くそ」と思ってやってきましたけどね。
――その怖さを払拭(ふっしょく)して、もう一段階成長するには?
ゾーン内で勝負できる変化球ですよ。見逃してもストライク、振りにいってもストライクという変化球を一個覚えられたら、ガラッと変わります。僕の場合は、それがスライダーだったりチェンジアップだったりした。真っすぐは強いままだったので、真ん中に投げたらファウルになって、変化球を投げたらみんな空振りしてくれてという時期がありました。最近のセ・リーグを見ていると、横浜DeNAの左三人衆(今永昇太、濱口遥大、東克樹)はそういうイメージに近いですよね。真っすぐが強くて、ゾーン内で勝負できる変化球がある。
――成長が楽しみな巨人の若手投手たちと日々汗を流しています。
結構強い真っすぐを投げますよ。ただ、変化球が足りていないという面はありますね。あとは、育成や入団3年目までの選手は、まずしっかり体をつくること。そこは絶対にやってほしい。練習はしっかりやっているんですが、ウエート(トレーニング)に関してはまだ意識が低いなと思いますね。ホークスでは、ランニング量を落としてもいいからウエートに専念しようという日があった。それくらい重視しているし、徹底しないといけないのかなと思います。
――ご自身の指導の根本には、ホークス時代の”パ・リーグ流”の考えがあるように感じます。
まとまったピッチャーって面白くないじゃないですか。打線が良ければ勝てますけど、やっぱり接戦をモノにできないとダメです。抑えたら誰も文句言わないんだから。セ・リーグはセ・リーグで根付いた教えがあるんでしょうし、否定するつもりもありません。ただ、僕なりに変えていきたいなとも思っています。
(企画構成:株式会社スリーライト)