ユース育成の現場から見える「花園」 元日本代表・野澤武史氏の大会展望
有望選手の発掘・育成に携わる野澤氏。「先のワールドカップで日本のラグビーの風向きが変わった今こそ、ユース世代の普及・育成強化に目を向けなければならない」と力説する 【YOJI-GEN】
17歳以下の実力者が競い合う「コベルコカップ U17の部」(編集部注:コベルコカップ=全国高等学校合同チームラグビーフットボール大会)での各ブロックの視察や、冬の全国中学生大会の優秀選手の選定などに携わっている野澤氏。それだけに、今回の花園に出場する選手や高校への造詣は深い。具体的な逸話を盛り込んでの展望は、濃密なドキュメンタリーや冒険小説のような趣がある。
ビッグマン&ファストマンキャンプという受け皿
ある年にでかくて、足の速い選手を九州で見たのですが、時間が経ってから再び「あの子、どこの大学へ行きそうなんですか?」と関係者に伺ったら、「実はあの子、ラグビーを辞めるんです」と。びっくりしました。怪我が続いてU17九州代表や国体メンバーに選ばれず、肩書きがつかなかったために、大学の授業料免除の枠に入らなかったんです。今は、「強豪校でなければ特待生になれず、だったら強くないチームで無理をして競技を続ける必要はないだろう」という風潮もある。その選手は最終的に東京の大学へ行けたみたいですけど、このような出来事は今後も起こりうる。それが、このキャンプの必要性を感じたきっかけです。
僕の中で、日本の高校ラグビーには「175センチ、95キロ最強説」があります。フィジカルレベルが高く、小さい頃からラグビーをしている子がいたら、彼らは花園では止められない。一方で遅くにラグビーを始めた『ビッグマン』って、円の右下みたいな成長曲線を描きがち。環境によってはそれほどハードな練習を積めないこともしばしばです。
――その瞬間の「トップ選手」の網にかかりにくい有望な選手は、「仕組みでサポートしたい」という考えですね。
はい。この3年間、コベルコカップ出場選手を決めるブロックキャンプに全日程参加させていただいたのですが、この大会で「ビッグマン」のような選手が選ばれるのは難しいとも感じます。
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