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ユース育成の現場から見える「花園」
元日本代表・野澤武史氏の大会展望

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 今の強豪校の選手に見られる「グッドサイクル」とは? 今年の花園は「3年生の大会」だからレベルが高い? 数年来続く「三極化問題」にはどう対処する? 育成年代にまつわるいくつかのテーマを掘り下げながら、『J SPORTS』の解説者として練られた観察眼と言語感覚を披露する野澤武史氏が、今年も12月27日から大阪・東大阪市花園ラグビー場で行われる全国高校ラグビー大会について語ってくれた。

有望選手の発掘・育成に携わる野澤氏。「先のワールドカップで日本のラグビーの風向きが変わった今こそ、ユース世代の普及・育成強化に目を向けなければならない」と力説する
有望選手の発掘・育成に携わる野澤氏。「先のワールドカップで日本のラグビーの風向きが変わった今こそ、ユース世代の普及・育成強化に目を向けなければならない」と力説する【YOJI-GEN】

 現役時代に日本代表のフランカーとしても活躍した通称「ゴリさん」こと野澤武史氏は、歴史の教科書で知られる山川出版社で取締役を務める傍ら、2013年からは日本ラグビーフットボール協会の「技術委員会ユース戦略室 リソースコーチ」という役職に就いている。


 17歳以下の実力者が競い合う「コベルコカップ U17の部」(編集部注:コベルコカップ=全国高等学校合同チームラグビーフットボール大会)での各ブロックの視察や、冬の全国中学生大会の優秀選手の選定などに携わっている野澤氏。それだけに、今回の花園に出場する選手や高校への造詣は深い。具体的な逸話を盛り込んでの展望は、濃密なドキュメンタリーや冒険小説のような趣がある。

ビッグマン&ファストマンキャンプという受け皿

――まずは、昨冬から行っている「ビッグマン&ファストマンキャンプ」(編集部注:体格が図抜けているビッグマン、スピード系の能力に恵まれたファストマンなど、一芸に秀でた高校生を集めて行われる、人材発掘キャンプ)について聞かせてください。野澤さんが音頭を取り、サイズやバネがある将来性豊かな無名戦士を日本協会の「TID(タレントID)キャンプ」の枠組みで招集しています。


 ある年にでかくて、足の速い選手を九州で見たのですが、時間が経ってから再び「あの子、どこの大学へ行きそうなんですか?」と関係者に伺ったら、「実はあの子、ラグビーを辞めるんです」と。びっくりしました。怪我が続いてU17九州代表や国体メンバーに選ばれず、肩書きがつかなかったために、大学の授業料免除の枠に入らなかったんです。今は、「強豪校でなければ特待生になれず、だったら強くないチームで無理をして競技を続ける必要はないだろう」という風潮もある。その選手は最終的に東京の大学へ行けたみたいですけど、このような出来事は今後も起こりうる。それが、このキャンプの必要性を感じたきっかけです。


 僕の中で、日本の高校ラグビーには「175センチ、95キロ最強説」があります。フィジカルレベルが高く、小さい頃からラグビーをしている子がいたら、彼らは花園では止められない。一方で遅くにラグビーを始めた『ビッグマン』って、円の右下みたいな成長曲線を描きがち。環境によってはそれほどハードな練習を積めないこともしばしばです。


――その瞬間の「トップ選手」の網にかかりにくい有望な選手は、「仕組みでサポートしたい」という考えですね。


 はい。この3年間、コベルコカップ出場選手を決めるブロックキャンプに全日程参加させていただいたのですが、この大会で「ビッグマン」のような選手が選ばれるのは難しいとも感じます。

向風見也
向風見也

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。

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